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MIURA流 登山塾「ippo」

ミウラ・ドルフィンズでは鹿屋体育大学の山本正嘉教授をはじめ三浦雄一郎・豪太親子とともに、より快適に、より安全な登山を行うためのデータを測定し、登山者のための実践的なトレーニング方… もっと読む
毎週月・水・金曜日の12時に更新!このippoマガジンでは、科学的な根拠のあるMIURA流のトレー… もっと詳しく
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#miuradolphins

登山中に消費するエネルギー

1.登山中は上手なエネルギー補給が大事登山中にエネルギー不足になると、行動が続けられなくなったり、低体温症などの危険性も高まります。そのような状況にならないためにも、エネルギー補給を上手に行うことが必要です。「上手に行う」ということは、①計画している登山ルートで消費するエネルギーを予め知っておくこと(以下2)、そして②それに見合うだけの食事計画を立てること(次回公開予定)、です。 2.登山で使われるエネルギー量を知る登山を計画する際に、そのコースを歩いた際に消費するエネルギ

Dreamers Summit NO3.杉田秀之さん

約12年前、大学のラグビー部に所属していた杉田さんは合宿中に頚椎と頸髄を損傷し、元のようにスポーツをすることや歩くことができなくなりました。本来ならその合宿の最終日に、部員全員で富士登山を行う予定だったのですが、もちろんそれも中止。 しかし、昨年の夏、12年越しの夢が叶って当時の部員100名での富士登山を成し遂げました。三浦豪太はじめ、弊社のスタッフも微力ながら富士登山のお手伝いをさせていただきました。 怪我との葛藤から富士登山の様子はテレビ番組でも放映されました。1時間

100年を健康に生きる

70歳、75歳、80歳でエベレストの山頂に立った三浦雄一郎、そして2度のオリンピックにスキーモーグルの選手として出場した三浦豪太。その二人にもっとも影響を与えたのは、三浦敬三(雄一郎の父、豪太の祖父)でもあります。102歳を目前にして亡くなった三浦敬三ですが、亡くなる直前までスキーをしていました。その健康法と前向きな精神には、私たちも学ぶところが大きいと思っています。三浦敬三の著書「100歳、元気の秘密」から、秘密を紹介いたします。 1. 体力維持を真剣に考え始めたのは「5

登山と水分摂取方法

1. 登山中の脱水量を計算してみる前回、水分の摂取が足りない=脱水が身体に与える影響をお伝えしました。では、登山を行う際はどのくらいの水分を摂取すればいいのでしょうか。登山中の水分消費量=脱水量は、エネルギー消費量の式と同じく以下の式で算出されます(図の①)。また、縦走などの場合は、登山を行っていない状態(小屋やテントでの生活)での脱水量も知っておく必要があります(図の②)。 ①、②の式より一日の脱水量を求め、それを補うだけの水分補給をしっかり行うことが必要です。登山中には

水分補給が足りなくなると?

人間の身体は性別や年齢で差はありますが、胎児で約90%、新生児で約75%、子供で約70%、成人で約60%、高齢者で約50%の水分量があると言われています。水を飲まずに運動を行うと運動能力や体温調節能力が低下し、脱水や熱中症を引き起こすリスクが高まります。 人間は体重の2%の水分が失われると、血液中の水分量が減って血圧が下がり、筋への燃料や酸素の供給が円滑にできなくなるために、心拍数は上昇し、持久力は10%も低下します。3%失われると、ぼんやり、食欲不振などの症状が現れ、4〜

Dreamers Summit NO1.小木曽光利さん

Dreamers Summitについてミウラ・ドルフィンズの低酸素室では、たくさんの「夢」を持った方々とお会いすることができます。低酸素トレーニングを行なって、高所登山・トレッキングへ出発、そして無事に帰国された後に、今までの取り組みや山旅の報告を聞く「Dreamers Summit」を昨年から開催していました。今までの「Dreamers Summit」の様子については、ホームページをご覧ください。 またイベントの開催も行なっていきたいと思っていますが、今はここのページで、

エネルギー消費量を計算して登山をしてみた

1. 登山計画を立てる際に、エネルギー消費量を計算する前回、「登山を計画する際に、そのコースを歩いた際に消費するエネルギーも予め知っておくと、どのくらいの行動食を準備したら良いかがわかります。」とお伝えしました。そこで、今回は私が実践した内容を書いてみたいと思います。 登山コースは、神奈川県箱根の金時神社登山口〜金時山〜火打石山〜金時山・明神ヶ岳・宮城野分岐〜金時神社登山口としました。このコースのコース定数を調べると、「29」でした。そこで、登山中のエネルギー消費量を算出す

クライミング中の気づき

今日はクライミングの話を少し。 クライミングをはじめて2年半ほど。クライミング仲間の中には、週末になるたびに外岩に出かけ、平日も仕事が終わるとクライミングジムに通う友人もいます。なので「クライミングもやっています」というほど熱心に取り組んでいるか、と言われると自信を持って「やっています」と言えるかは微妙なところです。 でも山を登ることも好きだけど、岩を登ることも好きなので、クライミングのためのトレーニングも行なっています。手指や腕の力や、足の力だけではなく、全身のバランス

運動とエネルギーの関係

1.エネルギーが足りなくなるとどうなる? 身体に蓄えられたエネルギーが枯渇し、食べ物からのエネルギー補給も足りなくなると様々な身体活動が制限されます。初期の症状としては疲労感、眠気、集中力の欠如、めまい、ふらつきなどです。エネルギー不足、低血糖、ガス欠、シャリバテ・・・などと呼ばれます。登山中にこのような症状が表れると、重大な事故につながる可能性もあります。実際に、エネルギー不足が急速な低体温症を引き起こした遭難事故もあります。(トムラウシ山遭難事故報告書) エネルギーは身

いつもこの時期はソワソワする

毎年、5月後半のこの時期は期待と不安と心配と・・・色々な気持ちが混同して、なんだかソワソワしています。 なぜならエベレスト登頂に向けて、たくさんの登山隊が登頂に向けてアタックする時期だからです。私の職場の代表である三浦雄一郎が70歳で登頂する際に、現地から送られてくるデータの解析をしていた頃から、わずかながら「エベレストへの挑戦」というものが身近にありました。 そして、今の職場で働き出してからは毎年のように、エベレスト登頂を目指す方を日本から見送る仕事をさせていただいてい

靴とザックの重さに慣れておこう

1. 靴の重さと筋活動量 私たちが普段履いている靴がどのくらいの重さか知っていますか。男性用のスニーカーで約300〜400g、革のビジネスシューズで約400〜500g、女性用のスニーカーで約200〜300g、パンプスで約200gです。それでは、登山靴の重さはどれくらいでしょうか。ローカットシューズで約400g、夏山使用のハイカットシューズで約500〜600g、3シーズン用で約700g、雪山用で約900g、ちなみにエベレストなどの高所登山用になると約1,300gです。 時々し

室内でも強度の高いトレーニング

なんだか天気が不安定な最近。天気がいい日は外で体を動かす時間を作ろうと心がけていますが、悪天候の日はそうもいきません。(少しの雨の場合は外でランニングすることもありますが)悪天候だった先日は、自宅でもうまく体力維持をしようと、メニューを書き出して家族で実践しました。 まず、準備運動と持久力トレーニングを兼ねて、スロージョギングを15分間行いました。1秒間に3歩のリズムで小走りに、廊下や部屋を走りました。音楽を聞きながらの15分間。はじめは涼しくて部屋の窓も閉めたままでしたが

バランスは着地面の状態で変化する

1. バランス力と年齢、着地面との関係若い頃と比べ、加齢とともに筋力が低下しますが、それ以上に加齢により低下してしまうのが、バランス力です。バランスを司るのは「視覚器」「体性感覚器」「筋紡錘感覚器」の3つの感覚器です。その感覚器が人間の重心のズレを感知し、補正しようと運動神経を介して筋肉に伝え、多くの筋肉でバランスを保っています。この能力は40歳を過ぎると急速に低下し、60歳になると20歳のときの30%くらいにまで低下してしまうと言われています。また、加齢とともに視覚でしかバ

呼吸筋のケアとトレーニング方法

1. 呼吸筋のケア 呼吸筋のストレッチを行う前に、筋をほぐすところから開始します。安静時も運動時も働いている肋間筋ですが、肋間筋はその名の通り、左右の肋骨の間にある筋です。肋骨は片側に12本ありますが、その全てに筋があるのです(呼吸筋のイラストはこちら)。肋間筋に沿って、指でほぐすことで筋肉の緊張が和らぎます(図1)。 ほぐした後は、呼吸筋を伸ばすストレッチを行いましょう。ボールなどを使うと、簡単に気持ちよく呼吸筋を伸ばすことができます(図2)。 2. 呼吸筋のトレーニン