実家と楽園と卵(短編小説)

帰省して、ふと気がつく。

あれ?

僕の実家ってこんなに広かったっけ?

……ああ、そうか。

ここはもう、僕の心が落ち着けるような楽園じゃなくなったんだな……。

ふと、思う。

楽園なんてどこにあるのだろう。

世界中を探せばあるのだろうか。

それともどこにもないのだろうか。

答えはわからないけど、ひとつだけわかることがある。

それは僕がここにいるということ。

それだけが確かなことなのだ。

卵からかえったひよこは、自分の親鳥を見て思うだろう。

(…………あれ? 僕、卵だったよね? なんでひよこなんだろ?)

首を傾げるひよこを見ながら、僕はつぶやく。

「……まあ、いいじゃないか。お前が幸せならばそれで」

そうして輪廻は繰り返し、今日も僕は見守るのだ。

愛しい我が子の幸せを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?