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面白い本・好きな本|美しき古代文明 コトバの旅[ヒエログリフ、オノマトペ、ホモ・サピエンス]

はじめにコトバありき。

どんなメッセージも情報も、伝えるべき中身が空疎であればヒトの心を動かすことはきでない。ヒトの呼吸に一定のリズムがあるように、「読む」という行為にも、その生理にふさわしいリズムがある。

ということで、「言葉」や「文字」について思考を巡らせ、美しき古代文明に思いを馳せるのもいいのでは?と言う話。

5千年前のヒエログリフが現代に蘇る
5万年前のオノマトペが言語をつくる
10万年前の共感への想いが言葉になる

エジプトのヒエログリフ

タッタッ→叩く フーフー→吹く

もともとオノマトペが語源の動詞はとても多いという。「働く」という動詞も、もともとはハタハタだったという。オノマトペに「」をつけると動詞になる。

ヒヨヒヨはヒヨコ、ネーネーはネコ

オノマトペが一般語に変化したもうひとつの事例。かわいいものには「」をつける。今でも「にゃんこ」や「わんこ」という呼び方をするので違和感は全然ない。

反対に一般語からオノマトペが生まれる事例もある。シマシマ浮くウキウキ混むゴミゴミラブラブラブ

さらに、濁音になると言葉は強くなる。コロコロよりゴロゴロさらさらよりざらざら。濁点によってより大きく、より悪い印象に変化する。

ということは、ヤツを「コキプリ」と呼べば少しは可愛くなる?

美しき古代文明のコトバの旅
ヒエログリフ、オノマトペ、ホモ・サピエンス

古代の洞窟壁画


ヒエログリフを解け|5千年前

太古の文字が千数百年を経て蘇る

5000年前から2000年前まで使われていたエジプトの文字、ヒエログリフ。3000年もの長い間使われていたのに、つい最近まで誰も読むことができなかった謎の文字。

多神教のエジプト文明が、一神教のローマ帝国に組み込まれ、過去の伝統や文化を駆逐されたことが読解を困難にした原因だとか。ちなみに最後のファラオは、かの有名なクレオパトラ

時は西暦1800年。ロゼッタストーンの発見とともに読解レースが始まる。と言っても、ヒエログリフはどこから読めばいいかわからない。上から下か、右から左か、左から右か?文章の終わりや区切りもピリオドもない。どこまでが一語なのかすらわからない。。

絵画的で装飾的なヒエログリフは、「」や「」と同じように文字の形に意味があると考えられていたのに、実は「A」や「B」のように音を表していると言う驚きの発見。

太古の文字が千数百年を経て蘇る


言語の本質|5万年前

言語の本質はオノマトペだった

もともと言語学の脇役だったオノマトペが、実は言語の本質だった、と言う話。ポイントは身体性。“咀嚼”ではなく“もぐもぐ”、“動悸”ではなく“ドキドキ”、など五感から得られる感覚を抽象化することなく、身体性をそのまま言語化したオノマトペがキーとなる。

そこで重要なのが人工知能の分野にある「記号接地」という未解決問題。メロンと聞いて、色や模様、匂いや手触り、甘酸っぱいといった味覚まで、メロンを食べたことがあるヒトは知っている。では、AIはその特徴を答えることはできても、身体に根ざした経験がない(=接地してない)とき、それは「知っている」と言えるのか?というもの。

言語の習得は、丸暗記ではなく推論洞察であると著者はいう。小さなきっかけがあれば、そこから推論によって知識を増やし、洗練させていく。自己生成的な成長のサイクル。ポイントは、サイクルが起動するためのきっかけである「身体に接地した言葉=オノマトペ」である、と。

物事が理解できず、体得できず、地に足つかず、フワフワした状態は、「接地してない」と言えばいいのか、という気づき。


ヒトの原点を考える|10万年

想いを共有したいという欲求がコトバになる

ヒトは、他者の心について深い理解ができる。信号機が赤から青になっても、誰も信号機に「」があるとは思わない。信号機に意図はない。

でも、ヒトがこっちへ来いと合図をしたら、その人に「」があり、何らかの意図があることを理解している。ヒトは互いに相手の心の状態を理解し合う。

「あなたが何を考えているか、私はわかっている、ということをあなたはわかっている、ということを私はわかっている」

これを「心の入れ子構造」という。チンパンジーも記号の意味は学習できる。「ジュース」と「ください」というラベルを理解して、ジュースを手にいれることは訓練してできるようになる。

でも「お花」と「きれいね」というラベルを理解して、相手に伝えることはない。自分の心と相手の心を重ね合わせて「そうだね」とわかり合うことはない。

想いを共有したいという欲求がコトバになる


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