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寝かしつけはパパのお仕事


職場で私のデスクの隣の席は、うちの長女と同い年の男性の席である。昨年の4月に転勤してきたばかり。隣の席になって色々話す機会が増えて、話していたらものすごいことがわかった。彼は、うちの長女の旦那さんと同じ大学の同級生、いっとき同じサークルに所属していたこともあるって聞いて、世の中はホントに狭いもんだなぁとあらためて感じた。そんな彼は、結婚もパパになったのも長女夫婦よりひと足早かった。彼には今生後11ヶ月の息子くんがいる。しかも、とても可愛い。写メを見せてもらったのだが、とにかく顔が可愛いのだ。男の子なのにお目々パッチリでまつ毛バッサバサ、色白でちょっぴりカールした髪。天使だ。おしめの外袋に載っててもおかしくないくらいにめちゃくちゃ可愛い。私が可愛いを連発していると、彼は、「あ、ですよね。俺、親の贔屓目かなって思ってたんですけど、やっぱ可愛いですよね?俺が言うとなんか自慢みたいであれなんですけど」
「いや、これは自慢して良いレベルだよ。」「ホントっすか」


そんな彼が先日、とても真面目な顔で言った。
「実は、俺‥」「え、何?どした?」「実は俺、明日から子どもを寝かしつける担当なんすよ」
「え、何、奥さんはどうしたん?」
「いや、なんか卒乳をさせようって話で‥」
「え?もう?早くない?いや、どうだったっけ?」
「早いかどうかはよくわかんないんすけど、どっちにしても4月から奥さんが職場復帰するんで、保育園に預けるのに母乳を卒業しとかないとまずいんっすよ。だから俺が寝かしつける係なんすよ。」
「あぁ、なるほど、そういうことね」
そして私はふと思った。
「それって最近はパパの仕事なの?」
「いや、よく分かんないんすけど」
と彼が話してくれた奥さんとの会話。


ある日仕事に行こうとしたら奥さんから「今日夜帰ってきたら大事な話がある」と言われた。なんだろうと思いながら悶々と一日を送りさてその夜、その話というのが、今回の寝かしつけの件だった。子どもは、お母さんの姿が見えるとお母さんのほうがいいってなるから、パパが一人で寝かしつけをやってほしい。


「なんだ、そんなことか」彼は安堵した。どんなお願いをされるかヒヤヒヤしていたらしい。「いいよ」彼がOKすると、奥さんはことのほか喜んだ。ホントにいいの?と何度も聞かれた。奥さんはどうやって説得しようかとずっと考えていたらしい。なのにいとも簡単にOKしてくれて驚いた。


そう、彼はまだ寝かしつけの大変さをわかっていなかったのだ。これは奥さんの策略勝ちだ。彼は奥さんの大事な話が、彼の中でもっと大変なこと例えば毎日保育園の送り迎えをしてほしいと、そういう絶対無理そうだと思われるようなことを頼まれると思っていた。そしてそうじゃなかったとわかってホッとし、たかだか3日くらい寝不足になるほうがラクだと考えた。


彼も1時間くらい泣かれることは想定内だ。そしてそれが3日くらいでなんとかなると思っている。それで済めば良いのだが‥まずは報告を待つとしよう。

と思っていたら、ホントに4日で達成した。4日めには母乳無しで朝まで起きることなく寝た、と。
「パパ、すごいじゃん。奥さん喜んだでしょ。」
「もう、大喜びっす」
彼の方法はこうだ。初日は泣く度に抱っこしていた。しかし2日めからは泣いても抱っこはせず、よしよし、ポンポンとするだけ、あとは放置。3日めともなると子どものほうが、いくら泣いても抱っこもしてもらえないし、母乳ももらえないと諦めたようだ。泣き疲れて寝る。そして4日めで、ここは大人しくパパと寝るのが最善と悟った。
私は思った。これ、案外父親に向いてる業務なんじゃないかと。母親だったら、夜中に泣かれたらかわいそうでほっとけないもん。
彼は言う。「俺、めちゃめちゃポイント稼ぎましたよね。」
うん、そだね。よくやった。おめでとう。



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