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何をお探し?


私は自分の読書記録を、noteだけでなくリアルな“読書ノート”につけている。本を読むと心に残る文章と出会い、それを書き写しておくだけでも私の読書ノートは用を成す。心に残る文章が沢山ある時には、何ページも使ってしまう事もある。多分これもそうなる。


『お探し物は図書室まで』/青山美智子

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか? 人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた町の小さな図書室。悩む人々の背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。


この本を読んだ感想をどうまとめるか、実は何日も悩んでた。短編連作集なのでそれぞれのエピソードとそこに出てくる珠玉の言葉と、そしてなにより、この図書室の司書さんが登場人物のためにどんな本を選び、その本がその人物にどんな影響を与え、それのどこに私が感銘を受けたか。全部書きたい。でもそんなことをするのはナンセンスなのだ。この本を読んで心に残った文章をここに羅列するだけの記事なんて、それなら実際にこの本を読んだほうが良いに決まっている。


先日観たドラマを絡めてみよう。『生きるとか死ぬとか父親とか』第7話。親友から悩み事を打ち明けてもらえなかった主人公に、もう一人の友人いわく、「あの子は答が欲しいのではなく、ただ話を聞いてもらいたかっただけ」だと言う。主人公はラジオでお悩み相談を受けている、お悩み相談の猛者だ。“人生、酸いも甘いもつまみ食い”の、お悩み解決のプロだ。そんな人に悩み事を打ち明けようものなら、どうにかしてその悩みを解決したいとあれこれアドバイスしてしまうに違いない。悩んでる本人はそれを望んでいなかったのだ。


職場でも友人関係でも、誰かに打ち明け話をする時は、例えば背中を押して欲しい、例えば共感して話に付き合って欲しい、例えばビシッと叱って欲しいなどなど。自分が欲しいリアクションをくれそうな人を選んだりしていないだろうか。自分が弱ってる時に「そんなことではダメ」と喝を入れられるとしんどいし、ただ聞いてもらいたいだけだったのにあれこれとアドバイスされるのもやっぱりしんどい。相手を選んでいるかというとそこまでの自覚は無いにしてもなんとなく、なんとなくこの話はあの人にはしたくないなと思う時ってあると思う。
私の理想は、物事を違う側面から見ることの出来る人だ。意外且つ嬉しい反応は「アナタはそのままで良い」と肯定してもらえる事だ。


夢があっても、それを叶える道のりを思うと難しいかもしれない、いつか叶えたいけど、夢は夢のまま終わるのかもしれない。そんな人にかける言葉を私は知った。

いつかって言ってる間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思う。無計画な夢を抱くのも、悪いことじゃない。日々を楽しくしてくれるからね。

でも、夢の先を知りたいと思ったのなら、知るべきだ。


この本は、そういう本だった。いろんな本や人からいろんな言葉を受け取る。登場人物が探していた答が見つかる瞬間の高揚感がそのまま、この本を読んでいる私の高揚感になる。本の登場人物が素敵な本に出会ったのと同じく、私はこの本に出会えたのだ。読書の楽しさをあらためて実感できた。ちょっとでもこの本を読んでみたいと思った方に私はこう言いたい。

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