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村田沙耶香『生命式』


ー私たちはコミュニティの中で「呼応」を繰り返し、自身をキャラクター化させ、そのキャラクターに従うようになる。
 「本当の自分」なんてものは、誰にも存在しないのではないか。ー

村田沙耶香『生命式』 259頁-260頁

 この本は、世の中にある多くの当たり前に疑問を突き付ける。

 人間は何故食べてはいけないのか。
 外で性行為を行っていけないのは何故か。
 人間を飼ってはいけないのは何故か。
 私が見ている貴方は「本当の」貴方なのか。

 持論だが、当たり前なんてものは個人の価値観であり、簡単に変化する。その証拠に『生命式』を読んでいると私の当たり前は途端に歪んでくる。「人間を食べることこそが故人の為になる。」倫理的にちょっと…と引かれそうなこの言葉が至極真っ当な言葉に思えるのだ。 
 

 この世界は段々と、でも急速に変化している。
 常識は明日になれば非常識だ。自分の信じる当たり前の押し付けは暴力でしかない。


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