Mitsutama

読書の感想をゆるゆると載せます。 脱・三日坊主

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最近の記事

イ・ヒヨン『ペイント』(小山内園子訳)

 近年「親ガチャ」という言葉が話題になっている。2021年にはユーキャン新語・流行語のトップテンに入り、同年、大辞泉の新語大賞では大賞になったほどで、インターネットを中心に広く浸透した。  本書はそんな親ガチャが自ら引けるならば、といった内容である。南北問題が解決した未来の韓国、少子化問題を皮切りに政府が生まれた子どもをNCという施設で20歳まで面倒を見、施設で行われる3度の面接(子どもたちの間で「ペイント」と呼ばれる)と合宿を経て引き取った「親」には政府より支援金が入ると

    • チョン・イヒョン『優しい暴力の世界』(斎藤真理子訳)

      事故物件だと知らずに入居を決められてしまった、ジン。 世の中は「優しい暴力」で溢れかえっている。 「作家のことば」で作者は「今は、親切な優しい表情で傷つけあう人々の時代であるらしい」と述べた。 そんな「優しい暴力」とともに時代は進んでいくのである。 訳者である斎藤真理子氏のあとがきでは、全編を通して「振り返り」がテーマとなっていると述べられた。受けた傷を振り返りながらも進んでいく時間の記録なのである。 私が一番好きな作品、「ミス・チョと僕と亀」ではそんな人間の一生を映す目

      • 村田沙耶香『生命式』

         この本は、世の中にある多くの当たり前に疑問を突き付ける。  人間は何故食べてはいけないのか。  外で性行為を行っていけないのは何故か。  人間を飼ってはいけないのは何故か。  私が見ている貴方は「本当の」貴方なのか。  持論だが、当たり前なんてものは個人の価値観であり、簡単に変化する。その証拠に『生命式』を読んでいると私の当たり前は途端に歪んでくる。「人間を食べることこそが故人の為になる。」倫理的にちょっと…と引かれそうなこの言葉が至極真っ当な言葉に思えるのだ。   

      イ・ヒヨン『ペイント』(小山内園子訳)