If I could be who you wanted

好きなものから好きなものの名前が出てくることがある。
椎名林檎からラーメンズという言葉を聞いた時、鈴木真海子からトンツカタンという言葉を聞いた時、そして村上春樹の海辺のカフカで田村カフカがRadioheadのKid Aを聴いてるシーンが出てきた時。

高校二年生の夏、Radioheadを聴きながら村上春樹を読んでいた。海辺のカフカでRadioheadという単語が出てくるとは知らずに。当時僕にはさくらという彼女がいた。部活の先輩で結局彼女とは2年ほど付き合ったし、初体験は彼女だった。

僕が彼女を好きになったのも、彼女からRadioheadという名前が出てきたからだった。andymoriの小山田壮平がUstreamでcreepを弾き語りしているのを見たから、という理由で知っていただけだけど僕はとにかくそれが嬉しかった。

さくらはことある毎に心配した。忘れ物はないか、体調は平気か、待ち合わせ時間が早くて大変じゃないか、繰り返し繰り返し何度も心配した。

ある日何かのきっかけで喧嘩した。思い出せないくらい些細なことだった。高校生の世界は家族と学校と友人と恋人くらいだったので多くの喧嘩のきっかけは他愛も無いことなのだろうけど、ひどく揉めた後に彼女は本当に私のことを好きかどうか聞いてきた。僕はRadioheadのFake plastic treesの歌詞に準えて答えた。

Her Green Plastic Watering Can
For A Fake Chinese Rubber Plant
In A Fake Plastic Earth
That She Bought From A Rubber Man
In A Town Full Of Rubber Plans
To Get Rid Of Itself

It Wears Her Out
It Wears Her Out
It Wears Her Out
It Wears Her Out

She Lives With A Broken Man
A Cracked Polystyrene Man
Who Just Crumbles And Burns
He Used To Do Surgery
For Girls In The 80s
But Gravity Always Wins

And It Wears Him Out
It Wears Him Out
It Wears Him Out
It Wears Him Out

She Looks Like The Real Thing
She Tastes Like The Real Thing
My Fake Plastic Love
But I Can’t Help The Feeling
I Could Blow Through The Ceiling
If I Just Turn And Run

And It Wears Me Out
It Wears Me Out
It Wears Me Out
It Wears Me Out

And If I Could Be Who You Wanted
If I Could Be Who You Wanted
All The Time
All The Time
-Fake Plastic Trees/Radiohead

「修学旅行前に彼女が欲しいとか何となく周りに彼女ができ始めたからとかそういうニセモノっぽい理由ではなくて、僕は本当に一緒にいたいと思って今付き合ってる。さくらが望むような人になれたらいいなと本気で思うし、同じように思っていられるのなら何度こういう喧嘩をしても一緒にいたい」

冬を越えて、僕が受験生になりさくらは大学一年生になった。さくらアカペラサークルに入り、そこの環境に馴染んだ。また些細なきっかけで喧嘩をしたりもしたが、今度は環境の違いからさくらは「本当に私の事好き?私の顔が好きなだけじゃない?」と聞いてくることが増えた。確かにさくらの顔立ちはやや出っ歯なことを差し引いても整っていたと思うが、何度繰り返し本当に好きだと言っても伝わらないことと受験生活での余裕のなさから別れることになった。

今でもあの時の恋愛が本当に素直な気持ちでぶつかれていたものだった思う。それは若さゆえかもしれないし、トム・ヨークの率直な相手を想う気持ちに感化されていただけかもしれない。


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