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仕事の引き継ぎで悲しい気持ちになった

突然だが、仕事を辞めることになった。この仕事が好きだったが、色々事情があり仕事を辞めなければいけなくなった。

私が辞めるということは後任が入ってくるということ。嫌で辞めるわけではないし、長く続けようと思っていた仕事を辞めるということで申し訳ない気持ちもあり、引き継ぎ用に業務マニュアルを作った。

この会社に業務マニュアルというものは存在していなかったので、私が一から作ったのであった。

私はその業務マニュアルにありとあらゆる知識を詰め込んだ。基礎知識から業務の流れ、注意しなくてはいけない点、すべてを詰め込んだ。


そうして始まった後任への引き継ぎ。

自分の作ったマニュアルを使いながら仕事を教えた。説明はマニュアルに沿って、書ききれなかったことはメモをとってもらって。

そうすると膨大にあると思われた仕事も難なく進んだ。後任への引き継ぎは自分から見てとてもスムーズにできていると思う。

彼女はすごく仕事ができるバリバリキャリアウーマンみたいなタイプではないけれど、教えられたことをその通りできる人だ。慎重でミスも少ないのが素晴らしい。

引き継ぎがとてもうまくいっている。だけど私の気持ちはなぜか悲しかった。


私は、自分が作った業務マニュアル、自分が作った役立つツールたちをすべて後任に渡した。

だから後任は誰かに質問しなくても、マニュアルに沿って仕事をすればできるし、ツールがあるから試行錯誤せずに物事を楽に進めることができる。


私が入社したとき、前任者はすでにおらず、私は同僚にサポートしてもらいながらも自分で体当たりで学んできた。

同僚の真似をしてメールを書いたり、失敗を繰り返してお客さまに怒られたり、計算に時間がかかって残業したりした。

だから何とか時短にしようと便利なツールを作ったし、自分が仕事を覚えるのに苦労したからマニュアルを作った。

それを使って引き継ぎがうまくいっている。それでいいはずなのに。

私の作ったマニュアルやツールを使って仕事を覚えている後任は、何も難しいことはないようだ。

私が毎月頭を悩ませていた仕事も、マニュアルさえあればそのとおりにすれば問題なく、特に難しくはなかったと言われてしまい、なんだか悲しかった。

後任が問題なく仕事ができている、それが私の成果なんだけど、自分が苦労してきたのは何だったのかなって。

引き継ぎ期間はまだあと1ヶ月あるが、自分はもう用無しのような気がしてきた。

だってぜんぶ教えたし、ぜんぶマニュアルに書いてある。もうほとんど全てのことを教えた。

そして後任は仕事がうまくできている。

あとは繰り返して慣れるだけだ。ただ、それだけ。


私はきっと、自分が作ったマニュアルやツールを一緒に働いてきた同僚に褒めてほしいんだと思う。

でもそういうのって、直接褒められることなんてないし、辞めたあとにもしかしたら「あ、これ便利だな」と思われるくらいなんだろうな。

色んな気持ちがある。私は苦労したのに後任は楽でいいなという気持ちもあるし、これさえあればもしこの後任が辞めてもいつかまた誰かの役に立つだろうと自負する気持ちもある。

別に自分がすごいとか偉いとか言っているわけじゃない。

ただ私のがんばったことが一瞬にして他人の手に渡り、自分には何も残らないことが悲しいのだ。

なんて心が狭いんだ、私は。



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