本について
何年前かは忘れてしまったけれど、たしか桜木町の商業施設の本屋さんで、映画の上映開始を待っている間にふらっと立ち寄った本屋さんで、目線より少し低い高さの棚の中に背中を向けて1冊だけ佇んでいて、「阿久悠」という文字を見つけて手に取った記憶がある。手に取って、カバーの背表紙の内側におそらく本人手書きの言葉が印刷してあって、それを見てまっすぐにレジに向かった記憶がある。
あとがきを読んで、この本は阿久悠さんの息子である深田太郎さんが編んだ本だということを知った。
感想
詩集のようなものは、読む人や、読む時々によって響く言葉が違うものだと思っていて、それが詩集のようなものの、言葉の魅力の一つであると思う。今の私が読んで印象に残った言葉は、178のうち10。
順位を決めるつもりはないけれど、きっとこの先もこの言葉は私にとってお守りのようなものになるんだろうな、という言葉がひとつ。
自分の思うことが伝えられず苦しかった10代。言葉を知って、言葉に救われて、自分の気持ちを言葉にすることを知って、目の前の人とまっすぐ向き合えるようになった20代。そして30代、今までもらった多くのことを、言葉で返したい。まだ何も始まっていないけれど、この言葉はそんな私の道標になってくれるような気がする。
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『君の唇に色あせぬ言葉を』
著者:阿久悠
初版発行:2018年8月30日
発行所:株式会社河出書房新社