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茨城のメルヘン建築を巡る(建築家:駒杵勤治の世界)

【メルヘン建築家:駒杵勤治】

建築家「駒杵勤治(こまきね・きんじ)」を知っていますか?

駒杵は、東京帝国大学で辰野金吾から建築を学び、1902(明治35)年に卒業すると、すぐに茨城県庁に迎えられました。

駒杵が茨城県にいたのは"わずか2年"。
その間、駒杵は学校や警察署などの公共施設を次々と手掛けていきます。今回紹介する3つの建物、完成したのは同じ年です。

それだけではありません。駒杵の設計した建物は、おとぎ話に登場するような"メルヘンチックな建物"だったのです。

まるで魔法使いのようです。

茨城県内に現存する駒杵建築は全部で3棟。
どの建物も、おとぎ話の中に迷い込んだような、タイムスリップしたような不思議な世界に引き込んでくれます。
では、どんな建物か見てみましょう!

旧県立商業学校本館(現県立水戸商業高等学校)

住宅街に突然現れる"ピンクの洋館"
ベルサイユ宮殿を模したようです。
石柱のように見えるけど木造です。
木彫りの紋章
ドーム屋根の"グリーン"がアクセントに!

1904(明治37)年4月完成。
【場所:水戸市新荘3−7−2】

旧県立土浦中学校本館(現県立土浦第一高等学校)

中央のクローバーのような模様が印象的
両脇の"とんがり帽子"の屋根がカワイイ!
柱頭のデザインは花?飛び散った水滴?

1904(明治37)年12月完成
国指定重要文化財
NHK連続テレビ小説「エール」では、音楽学校の校舎として登場するなど、ドラマ・映画のロケに使われています。
【場所:土浦市真鍋4−4−2】

旧県立太田中学校講堂(現県立太田第一高等学校)

三角破風の中央は円窓
太陽のような建物を印象付けるデザイン!
玄関ポーチ(車寄せ)
今の車の幅ではちょっとムリかな?
コリント式の柱頭
柱・柱頭飾りも木造

1904(明治37)年12月完成
国指定重要文化財
【場所:常陸太田市新宿町637】

【最後に】

駒杵は、1905(明治38)年3月に茨城県庁を退き、内務省に入庁。技師として伊勢神宮式年造営などに関わりました。その後、福岡で設計事務所を開設し、1919(大正8)年、42歳の若さで肺結核によりこの世を去りました。

駒杵が茨城県を去った後は、文部省による「設備準則制定」などの影響もあって校舎は兵舎のように画一化されてしまって個性が失われていったようです。

駒杵も独創的な建築ができなくなることを知っていたのでしょうか?

駒杵のかけた魔法は120年経っても解けることはありません。
今でも、私たちをメルヘンの世界に連れて行ってくれます。

是非、茨城の"メルヘン建築"を巡ってみてください!

【参考文献】
「茨城県の近代建築 東日本大震災後の状況と歴史」
土田芳孝 KAI教育出版 2013
「茨城県の建築探訪」中村哲史 崙書房出版 2006

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