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焼き鮭とお父さんの手作り晩ご飯

以前、子供の頃の毎週土曜日の父とのお昼ご飯の思い出を書いた。

今回は料理をしなかった父が料理を一時期にするようになった話について書こうと思う。

私が小学校2年生くらいの頃、父が転職するために3ヶ月程家にいた時期があった。その時期、仕事で帰りが遅い母に代わって、父が家族の夕ご飯を作ってくれていた。

父が料理をするということ自体が珍しくて、父がキッチンでどのように何をしているのか子供ながらに興味があった。
本当はキッチンを覗いていたいけど、じっと見ているのはなんだか気まずいと思った私は父が料理をしている間、テレビを観ていながらも耳だけキッチンの方へ傾けて、父の様子をうかがっていた。
父は時折「ああ!」とか「おお!」とか言いながら料理をしていた。
声が聞こえる度に、何があったんだろうと気になっていると「ちょっと焦げた」とか父は言ったりしていた。
父はお味噌汁と焼き魚とご飯をメインにいつも夕食を作ってくれていた。

そんな父が作ってくれた料理の中でも印象に残ったものがある。
それは、焼き鮭だ。

その焼き鮭が食卓にのぼった時、私は鮭が好きだったので喜びながら焼き鮭を口に入れた。
すると、鮭からした味は期待していたいつもの味ではなく、ものすごくしょっぱい味だった。
そのしょっぱさにびっくりして「しょっぱいよ」と私が言うと、そんなはずはないと父も鮭を食べてみた。
父が鮭を口に含みしょっぱそうにした後、二人して、どうして鮭がこんなにしょっぱいのかわからなかった。
特別に塩をふって焼いたわけではないのにこんなにしょっぱいことがあるのだろうかと二人の頭に疑問符が浮かんでいた。
その様子を見てから「どれどれ」と続いて母が鮭を口にした。
すると母は「しょっぱいね。きっと鮭の塩抜きをしていなかったんだね。」と言った。
あまり料理をしなかった父は、おそらく辛口の塩鮭を買ってきてそのまま焼いたのだろう。
母に言われて、私と父はそこで初めて、鮭の塩抜きということを知った。

とてもしょっぱかったけど、今こういう風に思い出として残っているのだから、これはこれで私の中で思い出の味になっている。

話が少し逸れるが、一方で母方のおじいちゃんが作ってくれる煮物などの料理は甘口だった。
煮物にはいつも砂糖が使われていたからだ。
独特の甘味で、私はその甘い煮物が大好きだった。

そしてこれも思い出の味だ。

父が失敗しながらも一生懸命、作ってくれたご飯。懐かしい思い出だ。



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