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兼好法師はコミュ障だった!? ドラゴン桜noteマガジン編集長が教える『徒然草』の奥深い魅力


はじめに

みなさん、こんにちは!
ドラゴン桜noteマガジン編集長の青戸一之です。

11月に入り、秋が深まって…と言いたいものの、暖かい日が続いて不思議な天気ですね。

今回は「読書の秋」にちなんだ特別企画です。

当初は「東大生がおススメする名著特集」みたいなものをやる予定でしたが、ありきたり(もちろん需要があればやります)かなと思い、ちょっと趣向を変えました。

せっかく「逆転合格」をテーマにしたマガジンだから、何か受験に関係するものをということで、今回は「受験生だけでなく、大人が読んでも面白い古典」をご紹介したいと思います!

みなさんは古典、とくに古文というと、「わけのわからない文法と単語を覚えさせられるだけのつまらない科目」というイメージがあるのではないでしょうか?

今の日本語と比べると難しい言葉で書いてあるので、意味が分かりにくいのは確かです。

ただ、意味さえ分かれば現代人が読んでも面白い作品が多く、クスッと笑える話から人生の真理を突いた深い話まで、バラエティーに富んでいます。

また、「源氏物語」や「枕草子」といった有名な作品はマンガや現代語訳がついた解説本もあり、単語や文法が分からなくても親しめるようになっています。詳しい解説があるフリーのウェブサイトもたくさんあるので、意外と手軽に楽しめる環境は整っているのです。

ドラゴン桜でも「古典の勉強はまずアレルギーを消してからだ」と言っているシーンがありましたね。

頭に具体的なイメージが湧きさえすれば、「古文は難しくてつまらないもの」という先入観も薄れるでしょう。

そこで今回ご紹介するのは、吉田兼好(兼好法師)の『徒然草』です。


『徒然草』の魅力

吉田兼好 (1283?~1352?) は神道の名家出身で、朝廷の官僚として順調に出世していました。

ところが30歳前後のタイミングで突如として出家し、世捨て人になります。

その後は京で隠遁生活を送りながら、50代にさしかかる頃に『徒然草』を完成させます。

『枕草子』、『方丈記』と並んで「日本三大随筆」と呼ばれるこの作品には、処世訓から世俗的な話まで幅広い内容が含まれています。

例えば「度を越して何かに執着するのは破滅の元だ」、「もうこれで安心と油断した瞬間に、本当の危険が潜んでいる」といった固い話から、「人前で酔っぱらって騒ぐのはみっともないよね」、「会話する時に、自分の話ばかりするのはよくないよね」といった庶民的な話題まで、現代の私たちにも共感できるものが非常に多いです。

その中でも選りすぐりのものを、いくつかご紹介していきましょう。


人生に役立つ教え

(第九十二段)
師のいはく、「初心の人、二つの矢を持つことなかれ。後の矢を頼みて、初めの矢になほざりの心あり。毎度ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へ」と言ふ。(中略)道を学する人、夕べには朝あらむことを思ひ、朝には夕べあらむことを思ひて、重ねて懇(ねんご)ろに修せむことを期す。いはむや、一刹那(せつな)のうちにおいて、懈怠(けだい)の心あることを知らむや。なんぞただ今の一念において、直ちにすることの甚(はなは)だ難き。

これは古典の教科書にもよく採用される箇所ですね。人間の怠け心を戒める文で、最初の部分は例え話になっています。

弓道において矢を射る時は、二本の矢を手に持つのが作法なのですが、師匠は「矢が二本あるから、一本は外してもいいと気を緩めてはならぬ」と説きます。もちろん弟子はそんな油断はしていないつもりですが、気の緩みは大抵自覚がないものです。

ここから話は勉強に広がり、「人は夜になったら『明日の朝やろう』、朝になったら『夜に勉強しよう』と先延ばしにするものだ。これは怠け心に他ならない。一日の間でさえ気の緩みの自覚がないのに、どうして矢を射る一瞬の間の油断に気がつくことができようか。」と言っているのです。

これは受験生のみならず、大人でも大切にしたい教えですね。他にも似たような人生訓が書いてある部分があります。

(第百八段)
寸陰惜しむ人なし。これよく知れるか、愚かなるか。愚かにして怠る人のために言はば、一銭軽しといへども、これを重ぬれば、貧しき人を富める人となす。されば商人の一銭を惜しむ心切なり。刹那おぼえずといへども、これを運びてやまざれば、命を終ふる期たちまちに至る。

これは時間の大切さをお金に例えて説明している文です。

わずかなお金でも積み重なれば大金になるのと似ていて、ほんのちょっとの時間でも無駄するのを繰り返していれば、人生はすぐに終わってしまうことを分かっているのか、と戒める文です。

過ぎた時間は返ってこない、だから今日という一日を大切に過ごしていこう、と気が引き締まる内容ですね。


人間味があふれている語り

『徒然草』は真面目で堅苦しい内容ばかりではなく、吉田兼好の人間くささが出ている面白い部分もあります。

(第七十五段)
つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ。紛るる方なく、ただ独りあるのみこそよけれ。世に従へば、心、ほかの塵に奪はれて惑ひやすく、人に交はれば、言葉よその聞きに従ひて、さながら心にあらず。

これは「人付き合いって面倒くさいよね。一人でいるのが一番だよね。」と言っている文です。「世の中に合わせようとすると自分が振り回されて心が乱れるから、一人で静かに暮らすのが一番なんだ。」と続いていきます。

『徒然草』には「魅力的な男になるための条件」や「親子愛の素晴らしさ」などに触れた部分もありますが、兼好自身は生涯独身でした。

女性も含め、どうも人付き合いがあまり得意ではなかったようで、ところどころに俗人を非難するボヤキのような内容が見られます。

他にもこんな一節があります。

(百七十段)
さしたることなくて人のがり行くは、よからぬことなり。用ありて行きたりとも、そのこと果てなば、とく帰るべし。久しくゐたる、いとむつかし。

これは「大した用もないのに人に会いに行くのはよくない。用があって行ったとしても、用が済んだらすぐに帰るのがよい。長居するのは相手にとって迷惑だ。」という内容です。

「私を暇つぶしの相手なんかに利用するな!」という心の声が聞こえてくるようで、何だか笑ってしまいそうになりませんか?

もちろん吉田兼好にも気の合う仲間はいて、そういう人と過ごす時間はかけがえのないものだと綴っている部分もあります。

それでも、つまらない人と一緒にいて疲れるくらいなら断然一人の方がいいと言っているのですね。

俗に言う「コミュ障」とか、「寂しがりやの一人好き」のような感じでしょうか。「昔の人も同じような悩みがあったんだなあ」と共感する人が多いかもしれませんね。


終わりに

さて、ここまで読書の秋にちなんで、『徒然草』の内容と魅力についてご紹介してきました。

今回ご紹介した文の中には重要古文単語や文法事項がたくさん詰まっているので、受験生の人はお気に入りの一節を暗唱したり分析したりして、古文の理解を深めてもらえると嬉しいです。

また受験生以外の方でも、この記事が古典への親しみを持つきっかけになれば幸いです。

他にも面白い作品はたくさんあるので、興味のある方はネットや書籍などで色々調べてみてください。自分のお気に入りが見つかるかもしれません。

もし需要があれば、他の作品も別の機会にご紹介したいと思います。

それでは皆さん、実りのある読書の秋を!

※今回の引用部分や現代語訳は、角川書店編の「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 『徒然草』」を参考にしています。

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