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ロマンスドールを観て

セックスレスの果てにお互いの不倫を知ってしまった夫婦が、再び生活の中にセックスを取り戻していく姿を見たことがなかった。
病で死に近づく相手の体とどんな風に向き合うのか、考えたことがなかった。
相手が亡くなったら、その温もりをどうやって思い出そうとして思い出せなくて悲しくなるのか想像したことがなかった。

女性らしさ・男性らしさの存在意義は、まだある。人の性的関係の中にあるロマンス、それは「女性が」「男性が」社会の中でより人間として平等に尊重されていくこととも、ちゃんと共存しえるものだとわたしは思う。

恋愛から始まった関係が夫婦になって長い時間を一緒に過ごす中で、綺麗事じゃない毎日を一つ一つ重ねていくうちに、恋の気持ちを忘れて伴走者のように思えたりする。だけどそれはそれで尊い関係で、「情」というものにはしっとりとしたパウンドケーキみたいな重さの残る、決して絵空事ではないような美しさがあって、その道をしっかり踏んできた者たちにしか見えないロマンスというものもまた存在しているような気がした。

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