有栖川檸檬

音楽、詩、文学、舞台、映画などに触れて認識した感情の記録。プライドとロマンスのあいだ。

有栖川檸檬

音楽、詩、文学、舞台、映画などに触れて認識した感情の記録。プライドとロマンスのあいだ。

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最近の記事

エコール (innocence, 2004)

「少女」と呼ばれる時代を過ぎて、寄宿学校の外の世界に初めて出る時。 最後の別れ際に「ねえ、私たちはどうなるの?」と聞かれた先生の答えに、胸が苦しく詰まる。「ここでのことを、すぐに忘れるわ。」 一生のうちのほんの一瞬。無垢だった時間との、永遠の別れ。 無垢であることを美しいと感じる気持ちは、一体どこから来るのだろうか?と、暗闇みたいな観客席を前に舞台上でバレエを踊る少女たちを見ながら思う。そのステージに薔薇の花を投げた男性の感情を。何も恐れず、疑わず、素直にその花を受け取

    • 途中で帰りたくなったはずのミッドサマーが忘れられない

      酷い悪夢をみた。この映画については記録を書き残すことはないだろう、早く忘れたい、とすべての思考を放棄し食欲も忘れて夜道をよろよろと歩いて帰った。はずなのだけど。 ホラー映画が苦手な人にはむやみに薦められない。不安に脳が冷やされるような感覚、体を伝う冷や汗、鳴り止まない動悸からパニックを起こすのではないかという恐怖で、もう外に出ようと何度も考えながらただ目と耳を塞いで気持ちを落ち着かせなければならない瞬間が何度もあった。 その夜お風呂につかってやっと気持ちが落ち着いた頃、こ

      • ロマンスドールを観て

        セックスレスの果てにお互いの不倫を知ってしまった夫婦が、再び生活の中にセックスを取り戻していく姿を見たことがなかった。 病で死に近づく相手の体とどんな風に向き合うのか、考えたことがなかった。 相手が亡くなったら、その温もりをどうやって思い出そうとして思い出せなくて悲しくなるのか想像したことがなかった。 女性らしさ・男性らしさの存在意義は、まだある。人の性的関係の中にあるロマンス、それは「女性が」「男性が」社会の中でより人間として平等に尊重されていくこととも、ちゃんと共存しえ

        • 憧れとの健康的距離感(アイドルと仏像は同じ)

          アイドルというジャンル、というかフォーマットに対して、興味が少しずつ薄れていること自体にもあまり関心を持たないでいた程度には疎いのだけど、訳あって、先日あるアイドルユニットのライブに行った。好きな活動をしている人がたまたまユニットとしてアイドル活動をしていて、歌って踊る姿を一目みたいと思ったという訳です。 美しいステージだった。組み合わさっただけで奇跡であるようなその二人が、二人にしかできないようなやり方で、歌やダンスの練習をして、仕草や指や目線の運びまで研究をして、勉強し

        エコール (innocence, 2004)

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        • 映画
          3本

        記事

          松田聖子のコンサートで感動した理由

          今年の夏、初めて松田聖子ちゃんのライブを観に行った。いつもは一人でライブに出かけることが多いけれど、この時は誘ってくれた母と妹と一緒に3人で。 初めて観た聖子ちゃんのコンサート(ライブよりもコンサートという言葉が似合う)は、とても楽しかった。おとぎ話のようなメルヘンチックで豪華な舞台セットに、80年代と変わらない印象のガーリーで可愛らしい衣装(とはいえ私や妹はリアルタイムで観ていないので、昔の映像をテレビやインターネットで観たのみだけど)。友達と話しているかのような軽さのト

          松田聖子のコンサートで感動した理由