マガジンのカバー画像

砂つぶ Ⅱ

54
運営しているクリエイター

記事一覧

パイピングテープ

パイピングテープ

知らないふりをやめて
またひとつずつ探そう
まばたきするたび
世界が変わるなら
僕らあくびをする暇だってない

諍いが起きない答えで
問いに応じるつもり
むずかしくない
きっとやさしい
あかるく照らす
やわい風を
ぬるいね、って言った
それだけでもう
ずっときみのことが好きで

お気に入りのぬいぐるみをポケットから少し出して、見せびらかすみたいに歩いた。ここにいるんだよって叫びながら、小さく隠れて

もっとみる
何も失わない

何も失わない

飛びたくない鳥の羽は
広げると繊細な模様で
スイートピーの香りがして
とても美しかった

山を降りる時、踏ん張る脚に
いくつもの枝が刺さっては折れ
どうして近道をしようとしたのか
悔やみながら、でもそんなもの
一生抱える後悔じゃない

膿んだ傷も治る
まず薬草を塗って
誰かからもらった手紙を
しつこく巻きつける
遠回りしたらもっと時間がかかったよ
でも安全だったじゃない
コダマの声聞いたよ
そのた

もっとみる
サリー、白線、しぶき

サリー、白線、しぶき

大丈夫そう?と聞かれて、ちょっとしんどいです、と答えた。何がしんどい?と聞かれて、わたしには荷が重いです、と答えた。
そうだ、わたしには荷が重い。荷が重いって言いたかったんだ、ずっと。

別になんだって、やろうとおもえば出来るけど、やろうと思って努力すれば大抵は出来るけど、なにもかもに対して思ってる、出来るけど、わたしには荷が重いよ。

本当はずうっとふにゃふにゃしてたい
ひとりでいると寂しいけど

もっとみる

描きたいものの輪郭が強く浮かび上がってくる
暇なときはぼんやりとしていたものが一斉に声を上げる
ここにいる、ここにいた、そんなものたちが。
くるしいときほど、詩が書けるのとおんなじなのかな

ふらふら

ふらふら

自分の昔のnoteを読み漁っていた。
ついでに当時の紙の日記も少し。
紙の日記は生々しくてあまり読めたものではないのだけど、何年も経ってからだと、案外冷静に読めるものだね。
2017年は本当に辛そうで、ギリギリで、よく生き延びたなと思う。
何も出来ないでいて、何かをしなければと思っていて。

当時付き合っていた人とやりたかったこと、やろうと言っていたことを全部自分ひとりで叶えていた。それを経験する

もっとみる
淡淡しい

淡淡しい

助かった、と思う
鬱々としてダルかったけどいい具合に狂えてきた
最近同じものばかり作って食べていたけれど、
健康のこと考えてちゃんとご飯も作れる
助かった
助かりたかったから
よかった

お仕事で一緒になったモデルさんが関西出身の方で
盛り上がってずっとしゃべっていた
やっぱり関西人は騒がしいんだな、わたし含め
東京の電車の中すごく静かだもの
わたしは静かなの好きやから嬉しいけど
でも関西のノリで

もっとみる
マリーゴールド

マリーゴールド

年が明けて16日も経ってるね
またイチから生活を積み重ねていく
昨日から料理を再開して、明日は簡単な棚を作る(作れるかはわからん)
あと洗濯をサボりまくっているので、何回か、回さねばなりません
こうやってちょっとずつ日常を確かめて
ちょっとずつ心の筋肉をきたえる…ムキ



さあ、仕事がない!
仕事がないねえ
緊急事態宣言するの
こっちにも影響があるんですよねえ
収入源を分ける、みたいなのを目標

もっとみる
汗だくのシーツ

汗だくのシーツ

まぶしい朝のために、いつもより早起きをした。
洗濯物をして、にんにくたっぷりのパスタを作って食べ、身だしなみを整えて、仕事へゆく。

好きな場所、ひとつ思い出した。お昼間の電車の中。光が差し込んで本当に気持ちがいい。ガタンゴトンと、景色が移り変わっていくの、好き。

帰ったら、買ってきたお花の茎を少し切り、みんな綺麗に映るように、不器用にでも、みんな寄り添えるように、花と花の角度を変えて何度も組み

もっとみる
サイレント

サイレント

なまぬるい水を飲み下しながら、胸に詰まるのは思い出や後悔だとうっすら理解する。ひとごとみたいに思う。思い出すと何十年も前のような気がする。



未読分の江國香織作品を貪るように読んでいる。ぴったり馴染む。いまの、いまと。江國香織は夏の終わりの匂いがする。それも関係あるのかもしれない。そして、シンプルに、文章が好きだ。



この頃、ラーメンが好きになってきた。友人と一緒に腹ごしらえするとき以

もっとみる
ピンク色のバター

ピンク色のバター

読んでない新しい本が何冊かあるのに、何度も読んだ本に手を伸ばす。
そういう本を読むと、落ち着いてきて、そうそう、そうだ、と勇気が出てくる。
活字は不思議だなあ、絵や音楽とまた違う。
現実では押し黙ってしまうことも多いけれど、やはりことばの大きさを実感することもあって。
声に出して伝えたいとあまり思わないのも、沈黙を信用していると言いつつ、ただの怠惰でもあるのかもしれない。

自分にはヤンキーみたい

もっとみる

青い草に包まれた
小さな黒い石ころは
スイセンの匂いがして
それは私がずっと
欲しがっていた何かだった

鋭角な葉は
わたしの体をなでるだけで
横顔を飾る睫毛のかげに
あなたの瞳は守られて

本当は
傷つけられて
そのせいで死にたかった
いつか死ぬのなら
あなたに傷つけられて死にたかった
でもいまはポケットのなかに
スイセンの石ころがある
指でなぞる
わたしの体には血が流れている

隕石が落ちてき

もっとみる
脈拍の届く範囲で

脈拍の届く範囲で

夕暮れ、両隣にひとがいないほど空いている電車で
窓から差し込んだ光を体で受け止める
そういう時間が人生には必要だ
猛スピードで進む車両
わたしは動けず
呼吸だけは確かで

ただ愚直に
生きてくことを知るんだ
目をあけて生きることを
胸にたまった水を
いますぐは取り除かなくていいことを

あまりにひとりぼっちで
ひとと話すとときどき
やはり申し訳なくなって
心のほぐれたやさしいひとになりたい
そのた

もっとみる

遠くに見えているのは光
耳をさわるのは風
長い髪で顔を隠しても
見つけられてしまう 

溺れている
満ちている
ひかりのうみの中にいる

いつか
教えられた呪文
知らなかったけど
言葉にしなくても
目を合わせられなくても

遠い空の一番近いところにいる
それからずっと大事にしている
ずっと救われていると何度も知る

さ

頭のなかで行進する言葉は列を成さずに進み、涙ばかりが流れて筆は一向に進まず、みじめにちぢれた文字がいくつか並ぶだけの余白の残る便箋を何度も読み返し、光と同じく音より先に届けようと思う、もしも届いたなら、なにもかもが書かれた白い余白を読み取ってくれるだろう、うつむいた顔は目のなかに何も映さず、電話が鳴って初めて声のことを思い出す、届いた声は光より先にわたしに知らしめる、耳からすべての原子へ伝わる、た

もっとみる