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“これまで”が急に遠い過去になった今、「危機」を捉え“これから”を掴む企業とは 【後編】

【特別対談】Business Insider Japan編集長 伊藤有氏 × 株式会社マクアケ 木内文昭(後編)​​

【スピーカー】
Business Insider Japan
 編集長 伊藤有氏
【ファシリテーター】
株式会社マクアケ 
 取締役 木内文昭

オンライン化で変わる。コミュニケーション方法や時間の最適解

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木内 オンライン化された事によって、サボっている人が浮き彫りになってきた。という話もありますよね(笑)

伊藤氏 テレワークでサボっている人は、オフラインでも実はサボっていたから何も問題ない、っていう話は僕結構好きで(笑)。日本の人事の評価システムがアウトプット主導になっていなくて数値目標がはっきりしていなかったり、雇用としてもすごく守られているので「駄目だからってすぐにいなくなる」ということはほぼないですから。それを見える化せざるを得ないという事になってきて、その人の価値ってなんなのか?これは平社員だけじゃなくてマネージャーも問われますよね。

木内 責任を明確化するっていう必然性が生まれますからね。あとは社内で言うとオフラインミーティングでの存在感の発揮のさせ方と、オンラインミーティングでの”モニターのマス1個”でのバリューの発揮の仕方が明らかに変わってきますよね。

伊藤氏 オンラインを円滑にするようなコーチングとか、そういう仕事が生まれる気がしますね。メールをメインで使っている方はまだ多くいると思いますが、ビジネスチャットもかなり増えてきてるし、そこにきてzoomとかTeamsとかweb会議システムも増えてきて、「この決裁をとるにはこうやった方がいい」「即座にslackに返事をしてもらう書き方」とか実践できている人はいたけど、明文化されていないようなテクニックっていっぱいあると思うんですよね。そういうモノのコーチングって仕事になりますよね。

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木内 一方でコミュニケーションを増やそうということで電話を増やせば良いというものでもなくて、ちゃんとエビデンスとして残す事が大事なものもあるので、いい塩梅でのコミュニケーションの行い方は万人が困っている気がしますね。コミュニケーションのとり方のプロコトルが変わる感があります。

伊藤氏 オンライン時代のビジネス書みたいなものが売れるんじゃないですか(笑)”あなたの常識は変わった”みたいな。

木内 オンライン時代のコミュニケーションで明文化されていないTIPSをうまく教えられる人が注目される可能性あるかもしれないですね。

伊藤氏 オンライン時代の産業の変え方という視点では、「どれだけゼロベースで考えられるか力」が問われるのではと思っています。僕はメディアの側なのでイベント取材が多いから感じるんですけど、昔は「夜のイベントとなると終業後の18時とか19時開始して21時ぐらいに終わるのがいいかな」と思ってたんですよ。仕事が終わって家に帰る間にイベントに寄って意見交換したり、ネットワーキングして帰ってくる時間帯として。でも今オンラインイベント時代になると、この開始時間設定は間違ってるんじゃないかなと思ってきたんです。今この時間って家にいるから、家族がいる人は家族と過ごしている時間の可能性がすごく高いじゃないですか。そこの時間を奪ってイベントに参加させるってすごいハードル高いなと思ったんですよ。飲み会とかも同じように18時とか19時開始って多かったと思うんですけど、zoom飲み会やるぞってなった時にこの開始時間はすごく早いって感じるようになった。最近は21時開始にしようよって言ってます。

木内 なんならお風呂とかも入っちゃって、2秒で寝れるような状態で参加したいな。みたいな方もいらっしゃいますよね。

伊藤氏 コロナの状況になる前にこの感覚を想像するのは相当難しくて、こうなると普通のビジネスアワーはもうビジネスじゃないみたいな(笑)これに似たような現象が商品企画にも起こると思うんですよ。これまでは良しとされていたものが、もはやNGになる。「変わったじゃん」と。


顧客のインサイトが変わり売れるものが変わる。既存の価値を棄て、フラットに向き合う

木内 そういう意味ではアンラーニング力を発揮して、この環境で喜ばれるコトやモノってなんだろう?を考える機会になりますよね。自らの意志と責任である程度試行錯誤すると学習がストックされていくので、結果うまくできるようになる。アンラーニングして新しい環境下で数多くトライするっていうのがポイントかもしれないですね。

伊藤氏 なるほど確かに。この対談でこれまで話してきたことって、一言でいえば”アンラーニング”がテーマだったんだ。すっきり腹落ちしますね。

木内 自分にもバイアスがかかっていると思うんですけど、自分バイアスを置いてみて、フラットに物事を見る事がユーザーの体感にあっていると当たるだろうし、アンラーニングできずに引きづっていると、うまくいかないってハッキリするかもしれないですね。

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いろんな方々とディスカッションさせていただいている中で、年末商戦まで目を向けた時に顧客のインサイトが変わっていて、例年通りいかないんじゃないかという声が聞こえてきてます。オンラインでのコミュニケーションをどうやっていくか?に向き合わざるを得ないと。これまでの年末商戦ってオフラインの百貨店さんとか量販店さんが盛り上がって、賑やかになるという前提があったと思うんですけど、そういう事が起こらないとした時に、どうなっていくと思われますか。

伊藤氏 年末商戦があったら人は消費すると思うんですけど、売れるものが変わってると思いますね。そもそも需要が変わっているし、価値観が変わっているので、そこにフィットさせなければいけないんじゃないかなと思います。昨年売れたものと同じような商品でやったら、全く違う結果になる可能性があるなって思いますね。新しい物を選ぶ価値観に向き合わなければならない。

木内 購入する環境の変化もあり、そもそも顧客にとって何が大事かが変わっているって事ですね。


例えば「リモートワーク」ウェア。価値転換によってニーズが変わり、新しいカテゴリが生まれる

伊藤氏 テレワークが主体になってから、僕は服の選び方が変わりました。これはすごい価値転換だと思うんですよ。これまでは「綺麗にパリッと見える」とか「シルエットが綺麗」とかで選んでいたんですけど、その価値基準よりも「着ていて着心地がいいか」の価値がめちゃくちゃ上がったんです。それはスウェットがベストアイテムという話ではなくて、在宅ワークでジャケットは着ないけど、少しちゃんとした服で過ごすって時に「着心地が良くて締め付けないけど、シルエットが綺麗なパンツ」とか、前だったら手に取らない物だったんですけど、たまたま家に1本あって着てみたら凄く良くて。ヘビーローテションで着るようになりました。
今となっては着心地のいいTシャツとか興味があって、めっちゃ着てみたいなと思ってます。これって価値の転換そのもので、オンライン化時代にはこれまで売れなかったものが売れるようになるはずだし、企業であれば自分が持っている商品が「果たして今の時代に買いたい商品なのか」を考えないと売れるものも売れないんじゃないかと思います。

木内 Makuakeでも着心地のいいニットTシャツで結構売れた商品があったりします。

伊藤氏 新しいカテゴリできそうですね、「リモートワークウェア」みたいな。

木内 個人的にはスポーツアパレルは機会でもあると思っていて、スポーツアパレルから細分化されたカテゴリができるんじゃないかなと思ってます。

伊藤氏 「クールビズ」っていうカテゴリが出来たように「リモートワークウェア」ができればいいと思うんです。社会通念上、ちょっとユルく見えるけど、これは仕事着だからOKみたいな。


変わっていく価値、企業。ポジティブなメッセージを届けたい

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木内 MIS、Makuakeに期待するモノやコト、アドバイスなどいただけると嬉しいのですが。

伊藤氏 一つ目は物という部分でいうと、新しい価値観へ向かう商品が見たいですかね。二つ目はこの企業がどう変わろうとしているのか?という企業のインサイトが見える事ですね。三つ目は、このコロナの時代には、「変化を受け入れる企業姿勢」それ自体がポジティブなメッセージになる。物づくり目線で「こういう事ができるようになった」という事が価値になっているので、そういう所をすくい上げて表に出せるというのは各企業の内部を見ているMISだからできる事なんじゃないかなと思います。

木内 確かにおっしゃって頂いた企業のインサイトもそうですし、私たちはプラットフォーマーなので、ここ2,3カ月の消費行動が明確に変わっているのも目にしています。Makuakeの性質上、先行してユーザーの消費行動の変化がわかったりするので、そういったユーザーの変化も届けられたらいいなと思います。

伊藤氏 商品開発とはイコールではないですが、MISに参画している企業を集めてオンライントークイベントなんかも全然ありなんじゃないかなと思います。今の課題が何かというのがそれぞれの企業によって全然違うと思うので。

木内 まさにそれを社内で検討していて、伊藤さんにもしれっとお声がけしようと思っていました(笑)

伊藤氏 是非。声かけてください(笑)今話すべきだと思いますし、今企業が本当に感じている課題って、危機にあるからこそ、危機を共有する事が「良し」になる。って事だと思うんですよね。今だからこそキャッチボールが成立すると思うんです。

木内 さっきもありましたが、意志と自分の責任感を持って動く。空気を悪い意味で読むのではなく、いい意味で読んでアクションにつなげ、成果に結びつけていく。そういう背中を押し方ができたら嬉しいなと思っています。この環境下でオフラインのネットワーキングの機会も極端に減っているので、今のマーケット視点をお届けするなど役に立てる事がいろいろあるんじゃないかなと考えています。

伊藤氏 すごいクローズドな話ができるのであれば、各企業の「業界の最悪のシナリオ」を聞いてみたいですね。30人ぐらいでマジで話すっていう(笑)「その視点はなかった」みたいなことの共有になったり。

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木内 なるほど。それいいですね。クローズドだからシェアできないんだけど視聴率めっちゃ高い、みたいな。

伊藤氏 めっちゃ聞きたいでしょ。例えばアパレル業界で安さを売りにした企業やハイブランドやっている企業でどうなんだ。とか食品は冷凍食品企業とかサプライチェーン上、輸入が止まっていて入ってこないとか。誰も悪影響の算定ができないのでほとんどの企業が決算の2021年の着地予想を延期してますよね。わからなすぎるので。ホントはそこが一番知りたくて、それぞれの事業領域の最悪シナリオって凄く示唆があると思うんですよ。最低ラインから物を考えるという事もできるかなと。

木内 新しい事業環境の変化を受けいれることに関して前向きで、上にも下にも及ぼせるリーダーの方々の行動が一つのベンチマークになっていく。みたいなそういう場が作れればいいなと思いますよね。日本酒を傾けながら、クローズドかセミクローズドでトークイベントを行って経済を回していきたいと思っていますので。引き続きよろしくお願いします。

伊藤氏 今後ともよろしくお願いします。楽しみにしてます。ありがとうございました。

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伊藤有氏:経歴
2000年代初頭から大手IT出版社の雑誌、およびPC/IT週刊誌で、ハードウェアからWebサービスまで、BtoCテクノロジー全般を主戦場に活動。媒体連動のWebメディアの立ち上げや、日本唯一のアップル発表会の現地生放送の企画・出演、3万人規模のコンシューマー向けITイベントの立ち上げ・企画・運営など形式を問わないメディア展開を手がける。編集長代理を務めた後、Business Insider Japan副編集長/テクノロジー統括、2020年1月から編集長。近年はAI/ディープラーニングの産業利用の現状と発展に興味持ち取材を続けている。

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