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わたしの放浪記(3) 〜次の旅へ〜

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翌朝、縁側から差し込むやわからい光を浴びて目を覚ました。
念願の”縁側のある部屋で目覚めたい”という目的を達成できた。
だけど、特にだからってなんのことはなかった。
むしろ朝だからか妙に冷めていた。

目的を果たした私は淡々と今日の過ごし方を頭の中で組み立てる。

この日は前職が一緒だった後輩が東京から帰って来るタイミングで、そのついでに旅の最中の私に会いにきてくれるという。
結局2日間ともひとり旅らしい過ごし方をしていないという…笑

部屋を出て、ゲストハウスのリビングでコーヒーを淹れているとオーナーが話しかけてきた。
ここの土地の話や、ゲストハウスをする理由なんかを聞いて、わたしもまた何故ひとりで旅をしているのかをざっくりと説明した。
ほんの立ち話だけど、昨夜決意したことを言語化したことで更に意思が明確になるようだった。

田舎に移住するような若者であれば、もしかしたら価値観が合う人が多いのではないか?という仮説があったので、とりあえず地方を旅して気に入った場所を見つけたら移住も検討しようと思っていたところで、そんな話をオーナーにしてみた。

「もしかしたら、ここなんか合うんじゃないかなー?」
オーナーはそう言って一枚のフライヤーをくれた。

「そこ、おもしろい人が多いよ〜田舎町なんだけどね、同じように移住してる若い人も多くてさ、ここのゲストハウスのオーナーとも知り合いなんだけどね」
それはゲストハウスのフライヤーだった。

(へーぇ)それくらいしか感想はなかった。
ゲストハウス同士でも繋がりがあるんだなぁ、なんて思いながら、とりあえず受け取ったフライヤーはリュックの中にしまっておいた。

そんなこんなしていると、後輩との約束の時間が迫っていた。
ゲストハウスの前まで来てくれることになっていて、玄関を出るとすぐそこに立っていた。

彼は端正な顔立ちの青年なのに素朴でお年寄りのような穏やかな雰囲気があって不思議な魅力のある人で、コロナ渦では家が近所だったので毎朝一緒に3時間くらい散歩をした仲だ。
あの日々も印象的なのはずなのに、毎日3時間も散歩をしながら何を喋っていたかは全く覚えていない。

遥々来てくれる彼とはお寺の参拝をして、少しカフェなんかに入ったような気がする。
(実は猛暑の中、ひたすら歩いた記憶はあるけどそれ以外ほぼ覚えてない)

夕方に彼は帰り、私はひとりでまたお寺を参拝した。
帰り道、高台の街が少し見下ろせるところを見つけたのでそこで日が暮れるまで空を眺めていた。

こんなとこまで来てひとりでなにしてるんだろう…などと考えてたら、20時をまわっていて気づいたら周囲は真っ暗になっていた。

宿に戻り、その後も特に何をするでもなくごろごろとしながらも眠りについた。

そして、翌朝…。

まだ明け方だと思う、青白い朝の光につつまれて自然にスッと目が覚めた。

(………あ、昨日教えてもらったゲストハウス、予約しないと)

わけもなく急にそう思った。

2泊はしたいから一番早くいける日で空いている日は…
8月7日、8日、9日、この3日間だった。
(これは随分あとで知ることだけど、8月8日は宇宙のエネルギーが最大限に降り注がれる日だそうで、しかもこの年の8月8日は新月で一粒万倍日で、とにかくパワーのある日だったみたい)


起きてものの3秒でおもむろにスマホを出して予約をした。

前日オーナーに教えてもらった時にはなんの興味も持ってなくて調べてさえいなかったのに、朝目覚めた瞬間に半ば無意識に予約していた。

今でもこの時の感覚が不思議で、頭で考えたというよりも誰かに動かされていたような感覚に近い気がする。

“縁側のある部屋で目覚めたい”という直感は
この日、目覚めた瞬間にこの決断をする為に起きていたんじゃないかと後になって思う。

意図があるのかないのか分からないが、大きな流れに気持ちよく流されながら、次の旅先が決まったのだった。