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【第9話】私と猛犬ケルベロスの冒険の記録【創作長編小説】

第1話はこちらのマガジンから読めます。

ミサイル格納庫へ連れて行って

「君はアリサといったな…。我々への頼みとは何だ?」
トゥクラ艦長は緊張しながらナタリス副艦長と時折アイコンタクトをとり、いつでもクルーが銃を構えアリスを銃撃できる姿勢を取れるように警戒してネゴシエーションしている。

時刻は深夜の2時。人型の巨大な黒い影にエリーの弓が放たれ、ミキラ帝国とゲイン帝国の空対空ミサイルの追撃により対象はバラバラになった。現在は黒い影は細かく夜の砂漠に散ったが、持ち前の自己再生能力を発揮して、もぞもぞと小さな個体が集まっていき、元の形状に戻れるように回復中である。ゲイン帝国のトゥクラ部隊以外の飛空艇19機は変わらず黒い影に自己再生などさせてたまるかと、強い意志でミサイルを対象に激しく打ち込んで、砂漠の砂が吹き飛び爆音がドォーンドォーンと鳴り響いている。そんな激しい戦いの前線の20機の飛空艇の中の1つ。トゥルク部隊の船にアリサという訪問者が艦長室に来ていた。

「私の頼みはとても簡単でございます。こちらの船に搭載されている空対空ミサイルの先端に、今から私がお渡しする魔法の杭をつけていただきたいのです。そしてそれを、あの疫病の発生源となっている黒い影の心臓部に狙い撃ちしていただきたい。」
そう言い、アリサは再びトゥルク艦長とナタリス副艦長の前で深々と頭を下げた。
訪問者は火傷で皮膚が爛れ、片目が塞がっている状態なのに、痛がりもせず、礼儀正しくトゥルク艦長やナタリス副艦長の前で頭を下げていて、とても痛々しかった。
「君の言う杭とやら。どんなものか、見てみないことにはわからない。見てから決めさせてほしい。」と、トゥルクは答えた。
「あの巨大な影の制圧に有効なの?」
ナタリスもいきなり現れて怪しいアリスに怪訝そうに質問を投げかける。
「不審がるのもわかります。仕方ないです。ただあの黒い影を制圧するには私のいまからお見せする杭がどうしても必要なのです。ミサイル格納庫へ連れて行ってくれませんか?そこで杭の実物を見せてさらに深い説明をさせていただきたいです。」
アリサはそう言って艦長室まで案内してきたクルーの1人の顔を見た。
クルーはアリサの怪我の様子に怯えながら、それでも凛とした態度のアリサを直視することができず、目を逸らした。
その一連の流れをトゥルク艦長は見て、軽くハァとため息をついて言った。
「いいだろう。連れて行け。私もついていく。タナリス副館長。この持ち場の指揮は君に全て任せた。私はこのアリサという少女についてミサイルの格納庫まで行ってくる。」

こうしてトゥルク艦長はアリスを連れてゲイン帝国軍のミサイル格納庫に行くことになったのだった。

ゲイン帝国トゥルク部隊のミサイル格納庫には、
大きな空対空ミサイルが格納されていた。
「トゥルク艦長。この中で飛びきり威力が強くてよく飛ぶのはどれ?」
アリサは聞いた。トゥルク艦長は、
「飛びきり威力が強くてよく飛ぶのは、これだね。」と、言いながら一機の空対空ミサイルを指さした。
アリサは満面の笑みで、
「おじさん。じゃあこれにする。これに冥界から持ってくる杭を先端につけて発射して欲しいの。」
アリサはそう言い、冥界から臍の緒を呼び出し、太陽みたいな形をした巨大な金色の杭のモチーフを引っ張り出してきた。
「これを空対空ミサイルにつけて撃ち込んだらいいのか?」トゥルクは目を丸くした。
「そうだよ。目標発射時刻は深夜の3時だね。今が2時。あと1時間は時間があるから整備にとりかかってくれる?」 
このようにして、ゲイン帝国軍のトゥルクが率いるトゥルク飛空艇は冥界の杭を空対空ミサイルの先端につけて確実に黒い影の心臓を狙って打つように頼まれた。アリサ曰く黒い人型の巨人の影の自己再生能力を使えないようにするのにこの冥界の杭が必須らしい。

トゥルク艦長はミサイル格納庫の整備士に、しっかり杭を設置するように指示を出して、作業の様子が進むのを確認していた。あのアリサとやらが深夜3時に計画を実行に移すと言っていた。それまであと1時間。時間がない。急がねば。

アリサはトゥルク部隊以外にも交渉ごとがあるからといって臍の緒を使ってテレポーテーションをして違う船に渡っていった。

雲の上にてアリサと再会

「爆炎が凄まじくて目標が全く見えないわ。」
私はケルベロスに乗って標高4000mの雲の上で砂漠の黒い巨大な黒い影にミキラ帝国とゲイン帝国の飛空艇が空対空ミサイルを撃ち込み大爆発を起こしている様子を空から観察していた。氷の魔法として一度弓は使用したけれど、黒い影がバラバラになるだけで再びもぞもぞと動き出して制圧には至らなかった。弓の魔法の力が足りないのか?黒い影を制圧するにはどうしたらいいんだろうか…。1人で悩んでいた。

すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて、私の体を後ろからギュッと抱きしめてきた子がいた。
「ねぇ、知ってる?冥界ハーデスは過去に人間界の王妃を誘拐した罪があるんだよ。」
この声は私の親友のアリサだ。ケルベロスにまたがる私の後ろから両手を伸ばして後ろからハグをしてきた。
「アリサ?アリサなのね?私、あなたに会えて嬉しい!」
上空に飛ぶケルベロスの上で私はエリーとの再会を喜んで抱き合った。エリーは体に火傷の跡がたくさんあって痛そうだった。「今も痛い?」と聞いたら「痛くないよ」ってアリスは言うんだけど、綺麗な顔が火傷で痛々しく変わりとても辛かった。
「エリー。私はね、あなたに真実を告げに来たの。あなたは真実を知った上で、あの忌々しい黒い巨大な人型の影を制圧しなければならない。私の今から話をする、黒い巨大な人型の影の正体について、いい子だから最後まで聞いてくれる?」

アリサの説明はこうだった。
あの疫病を発生する黒い人型の巨人の正体は、冥界ハーデスの意識が切り取られたものらしい。冥界のハーデスもそのことを認めており、ハーデス曰く、あの黒い人型の集合体は、ハーデスの恋心が形になったものだそう。

人間界を苦しめた疫病の正体が、冥界ハーデスのミキラ帝国の王妃に対する恋煩いで、その恋煩いが30年以上病気として侵食していき人間界の死者が増えていたなんて…。信じられる?

一一我は当時逆らえぬ運命のままミキラ王妃を拐ってしまった。我は愛について未熟で強引さ故に大切な人の心を壊してしまった。無垢な恋の想いを叶えたかっただけなのに起きた悲劇。逆らえぬ衝動だった。王妃は自害して砂漠に落ちてしまった。我はその亡骸を胸に未だに我の恋心は消えることなく抽象的な意識の存在として砂漠で彷徨っている。我も苦しいのだ。恋心の終わらせ方がわからぬ。どうか其方らの力であの影を終わらせてくれないか。

ハーデスは30年前にミキラ帝国の王妃に一目惚れをして誘拐をして冥界に連れて行ったことがあり、そのときに王妃に激しく暴れられ哀しいことに王妃は自害してしまった。それ以来、ミキラ帝国には作物の恵みの光が注がれることがなくなり、国がどんどん貧しくなっていった。その時に自害した王妃の遺体は冥界から落ちて砂漠地帯に埋もれた。その日以来、その砂漠に黒い巨大な人影の巨人が現れるようになり、砂嵐を発生させて誰も接近できないようになった。さらに黒い巨大な人型の黒い影は、王妃が自分のせいで亡くなってしまったことを病み、さらに呪いとなり、人間界に疫病を撒き散らす悪の根源となった。

「エリーはゲイン帝国領だから知らなかったと思うけど、この話はミキラ帝国領では教科書に載っているくらい有名な話で、『ミキラ帝国の王妃はハーデスに奪われ、それ以来作物がとれなくなって国が辛くなった。さらには疫病まで流行らせ、ハーデスこそ悪の根源。』とミキラ帝国のみんなの常識だわ。私たちはゲイン帝国軍に住んでいたから知らなかっただけみたいね。」

アリサは火傷で焼けてしまった片目を気にして触りながら、私に言った。
「ハーデスの恋心を今晩中に消滅させよう。私はハーデスに武器として黒い影の心臓に打ちこむ黄金の杭を渡された。その杭はゲイン帝国の飛空艇の空対空ミサイルの先端に装備させた。杭つきの空対空ミサイルで黒い影の心臓を狙い撃ちしたら、エリーは砕けてバラバラになろうとするあの黒い影を全て凍らせてほしいの。そして、あとは冥界ハーデスの所有する「安息の無」の飛空艇に迎えにきてもらって黒い巨大な影の王妃に対する恋心は「無」に還ってもらおう。」

「あんなに巨大な影の集合体が大人しく「安息の無」の飛空艇に乗るだなんて思えないよ。」
私はアリサに弱気に答えた。するとアリサは、
「大丈夫。まだ必殺技を隠し持っているの!見て。これ!これはミキラ王妃の集めていた押し花ダイアリー。世界に一つだけのものよ。もし「安息の無」の飛空艇に黒い巨大な影が乗るのを拒んだらこの押し花セットを見せて船に誘おう。愛する人の大切にしていたダイアリーならきっと欲しがって動くはず。」

アリサの戦術通りに上手く行けば、人間界から疫病はなくなり平和にもどるはずである。ハーデスの恋心が疫病の原因だったっていうのがまだ幼い私には理解しにくくて複雑な感情を生んだのだけど、恋の未練が30年も続き、病気を撒き散らすなんて…信じられない…次回はアリサをケルベロスに乗せたままハーデスの恋煩いの巨大な概念と戦う話をするね。

一続く一【不定期配信予定】
続きの第10話はこちらから読めます

見出し画像は稲垣純也様にお借りしています。ミサイルの先端に装備させる杭のイメージを探したらこんなかっこいいものを見つけてしまいました!目標を捕獲したら先端が鋭利に動きそうです!

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最後まで読んでくださってありがとうございました。ついに人型巨人の黒い影の正体がわかりましたね。冥界ハーデスの恋煩いが疫病の原因だったなんて…はやく未練をたって疫病制圧したいですね。

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