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日帰り圏内の街で、あえて一泊する、怠惰な旅へ

15時にチェックインをして、翌11時にチェックアウトをする。そんな怠惰な旅をしたいと思うときが、たまにある。

1日めいいっぱい観光して夜の19時にチェックイン、朝の観光から始めるために翌8時にチェックアウトをする旅ももちろん好きだけれど、今回の旅の気分は、圧倒的に「15時チェックイン/翌11時チェックアウト」の方だった。

日帰り圏内の街で、あえて一泊する旅

いつもは日帰りで行く街に、あえて一泊する旅。2日間ですべての行きたい場所を巡る必要はない、だってまたいつだって行けるから。その余裕さが、怠惰な旅をするためには必要だと思う。京都で暮らす私にとって、そんな場所は、奈良。電車で1時間で行けるので、いつもなら日帰りで訪れてしまう街だ。

奈良へは何度も行っているから、有名な観光地はほとんど訪問済みだし、街歩きも十分に楽しんでいる。だからこそ、今回は「あえて一泊」して、ゆるやかにダラダラと奈良での滞在を楽しんでみた。

出発はもちろん遅めの時間。13時すぎに奈良駅に着いて、遅めの昼ごはんへ。何を食べようかもとくに決めておらず、歩きながらいい感じのお店を探す。この日の最高気温は9℃ととても寒かったため、「釜めし」のメニューに目が留まるのも仕方がない。

ゆっくりのんびりとご飯を食べていたら、14時30分頃。チェックインの15時までの少し時間、近くのゲームセンターでUFOキャッチャーをして時間をつぶした。

旅先でもちいかわ関連のグッズを追うことを怠らない私とパートナーは、ついゲーセンやガチャガチャのお店に入っては、ちいかわがいるかどうかを確かめるのが癖になってしまっている。

そして、15時ちょうどにチェックイン。JR奈良駅すぐの場所にある「天然温泉 吉野桜の湯 御宿 野乃 奈良」が、今回の宿だ。

ドーミーインのグループホテルで、旅館とビジネスホテルの中間をいくような和風のホテルだった。

窓の隙間からもれた光が美しく、和テイストの雰囲気の部屋に降り注ぐ。このホテルには、温泉がついているため、部屋に入るやいなやお風呂へと向かう。

大浴場だけでなく、サウナや半露天風呂、壺風呂などが用意されていてホテルとは思えないようなクオリティだった。温泉内には、なぜかヒーリング音楽が流れる。チェックイン直後の温泉は誰ひとり先客がおらず、この心地よさをひとり占め。こんな贅沢があっていいのだろうか、と噛みしめて。

まだ青空が広がる昼間の温泉というのものは、自分が怠惰で無のことをしているような気分になる。そんな怠惰な自分を楽しむための旅でもあるのだ。たっぷり1時間半入っても、まだ17時頃。

外は暗くなり、夜へと向かう時間に、すでにお風呂に入って顔をつやつやにしながらダラダラできる優越感といったら。夜ご飯にするには少し早い時間。ベッドで本を読んだり、ゲームをしたりして、時間をつぶす。つぶす、というか、ちゃんと怠惰な時間を「過ごす」、そんな気分だ。今回は意志をもって怠惰な時間を過ごしているのだ、と。

夜ご飯はついていなかったので、再び街へと繰り出す。お風呂上がりのぽかぽかな身体には、ビールを流し込みたい。その一心で、またいい感じのお店を探す。

カウンターとテーブル数席のちいさな居酒屋へ。刺身、焼き鳥、ねぎ焼。旅先の夜ご飯は、いつもより財布のひもがゆるむから、好きだ。「これを頼んだら、トータルいくらになるだろうか」などと考えない余裕さ。食べたいから食べる、せっかくだから頼む、そんなささやかで横暴な時間は、旅先ならではの感覚だ。ビールと日本酒を流し込み、2人で9000円ほど。払ったお金に対して「それ以上の価値があったね」と笑い合いながら店を後にできるのはなんとも幸福だ。

ホテルに戻ったら、もう寝るだけ。そんな魅惑の環境だからこそ、まだ帰りたくないと思う。もう一度UFOキャッチャーに挑戦したり、意味もなくコンビニのお土産コーナーを眺めたりして。行きの倍の時間をかけて、部屋へと戻る。

夜にはホテルによる夜泣きそばのサービスがあって、これまた最高に怠惰な時間を過ごした。(深夜に麺を食べるなんて、普段の生活ではなかなか味わえない)

翌朝は旅先では珍しい8時起き。いつもの旅であれば7時には起きて散歩に出かけているところ、「怠惰な旅だ」と言い聞かせて贅沢に眠る。顔も洗わずに朝の温泉へ。また、誰もいなかった。朝の冷たい凛とした空気を感じながら熱々のお湯に浸かることのできる幸せ。チェックアウトは11時、まだまだ時間は残されている、と思うとそれだけで満ち足りた気持ちになる。

湯上りに1本のヤクルトを飲んで(これもホテルのサービスだった)、散歩と称して近くのパン屋さんでパンを選ぶ。部屋に戻りゆっくりと味わっていても、まだ10時。本を読みながら、昼からどこへ行こうかと妄想しながら、11時を待つ。11時少し前にチェックアウトをして、奈良の街へでかけた。

こうやって、15時から翌11時までフルでホテルに滞在しているのは、私にとってはなかなか珍しい。ホテルでの時間がベースとなって、旅の時間を組み立てていく感じ。限りなく怠惰で贅沢な時間。たまにはこんな時間の過ごし方もいいのだ、と自分に言い聞かせながら、時間の流れを噛みしめる。

スポットを巡ることはほとんどなかったけれど、それでもこんなにも充実した気分になれるのは、最初から「怠惰な旅をしよう」と思っていたからかもしれない。

日帰りでも行ける場所に、あえて一泊する。そうすると、いつもとは違う質で、違う時間の流れで、旅を楽しむことができる。15時チェックイン/翌11時チェックアウトの怠惰な旅。

次はどの場所へと怠惰になりに行こうか。




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