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如月みさご
2020年11月6日 20:55
引き出しの奥に隠れてた 一葉のラブレター思い出に浸るような歳じゃないし と破り捨てた今となっては何が書かれていたか 覚えていない甘酸っぱい記憶だけが ふいに鼻に揺れたカラカラと回る幻燈機たくさんの声が重なって聞き取れない「––––」あなたの声を見つけた気がしたすぐに誰か達の思い出に混ざっていく伸ばそうとした手を止め 響(ゆら)ぐ心を覗く波打つ水面に映る 幼い私と目が合った
2020年11月6日 01:01
風のまたたきに手を伸ばして触れた柔らかさに涙したうつろいはものがなしく、緑もまた朽ちていく白く染まり、心は臥して小さく小さく眠りを望む美しいまどろみ優しいぬくもりうつつの寒さなど知りたくもない悲しみがおしよせる積み重ねた年齢が、無為の痛みになって降り注ぐなにかあったわけではなくどこへいけたわけではなく立ち止まっているだけなのに世界はうつろい、空気も風となって体を避けていく