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4 テクニシャン



火傷をした旅の初日、私たちはCasa del Caribeでお祭りを楽しみました。

到着すると、そこは大勢の人であふれかえっていました。



キューバで初めて楽しむお祭り


Casa del Caribeの入口付近にはスープやコーヒー、トウモロコシなどの屋台が並んでいて、その奥では男性数人が車を運転するかのように豚の丸焼きを作っていました。

奥にはステージスペースが確保され、その裏にある建物の壁は派手に絵が描かれています。

次から次へとソン(キューバの伝統音楽)のグループが登場。

ステージは段差があるわけではないので、背伸びしても人だらけで見えません。
コンクリートの段差に時折上って演奏を観たり聞いたり、写真を撮ったりしていました。

しばらくすると、近くにいたお姉さんが話しかけてきました。
彼女はそこで演奏しているグループのメンバーの奥さんだそう。彼女はすごく陽気で話が弾む。

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すると突然、近くにいたおじさんが、トウモロコシを食べないかと聞いてきました。

「え? このおじさん大丈夫かな?(あとから金せびってこないか心配)」と思っていると、

私の表情を見て気づいたお姉さんが「問題ないわよ。この人は大丈夫」と言ってくれたで、遠慮なくもらうことに。

出会ってすぐ仲良くなれるこの感じはなんとも心地が良い。


この会場には、サンティアゴ発祥のEstatuas Vivisntes(生きた像)のアートグループ Ojoも来ていました。

全身にペンキを塗った体を使ったアートを披露する集団で、全国のカルチャーイベントに参加しています。

よ〜く見て。どこにいるでしょう!

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面白かったのは水分補給に担当の人が水ではなくラム酒を飲ませていたこと!笑

逆にのどが渇きそう…。

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求めるものを知っている


その日のスケジュールを見て、気になるものがありました。

それは海で行われるキューバで信仰されているサンテリア(アフリカの宗教とカトリックが混ざった宗教)の儀式です。

そのビーチへはどうやって行くのかと、イベントスタッフに聞いてみますが、なぜか誰もまともな返事をくれませんでした。

誰も知らないなんてことあるのか? どうしてもこのイベントに行きたい!

そう思って、会場内をうろうろしていろんな人に尋ねていると、ある男の人が声をかけてきました。

首からネームプレートを下げた彼は、どうやらスタッフの様。

困っている私たちにお祭りのいろんな情報をくれました。
そして、お祭りに関係している他の施設へ連れて行ってくれました。
そこが、私が火傷を診てもらった場所。彼曰く「バハマの大使館」です(後から調べたら違った)。

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このお祭りは毎年一か国を招待国としていて、この年はバハマでした。

その施設ではバハマの人たちがガラス細工を作っていたり、絵を描いていたり、ダンサーがパレードの衣装を準備していました。

パレードの衣装

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ガラス細工

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絵画

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一通り見た後、彼がどこへ行きたいのかと具体的に聞いてきたので、事情を説明。

「今日の夕方、海でYemayá(サンテリアの海の神様)の儀式があるんだけど、そこへ行くバスがどこから出るかわからなくて、誰も知らないの。」

「バスは出ないと聞いたよ。そこは特別な場所で、大勢の人が行けないようになっているんだ。タクシーでならいけるんだけど。」

「そうなの? みんな違うこと言うから。とにかくバスは出ないかもしれないって話だ
けは聞いた。」

「タクシーなら手配できるよ。そこへ行くだけじゃなくて、明日も観光に使ってもらえる専用のを用意するよ。それで40CUCっていうのはどうかな? 好きなところへ行けるし。」

「40か~。じゃあ半分払うから。明日また半分払うのでどう?」

「いや~それは困る。僕たちの方も保証が必要だからね。」

こういったタクシービジネスは、よくあること。それ自体にはあまり驚きませんでした。
しかし、今全額払うのか〜、と迷う私たち。

でも、カサ(民泊)を借りる時も、保証が必要だから先に払って欲しい、と言われるのはよくある話。

「わかった。」

親切にいろいろ説明してくれたし、詳しいし、大丈夫だろう。



そう思ったのが間違いでした。

彼にお金を渡すと、

「今タクシーを呼ぶから待ってて」と言って彼はどこかへ。


10分が経ち、20分が経ち

彼は一向に帰ってこない。


友達がふと

「ねえ、これ、やられたんじゃない⁉」

「え!? 嘘でしょ!?」


私たちはあわてて最初に居たCasa del Caribeへ戻り、その男の人を探しました。
服の色や体格などを覚えていたので見ればすぐにわかると思ったのです。

しかし、探し回っても見つからない。

そこで偶然、友人が以前サンティアゴにいた時に知り合ったキューバ人に遭遇。彼はイベントスタッフとして働いていました。
事情を説明すると、その友人と仲間も一緒になってその男を探してくれました。

その男の人が、どんな服を着ていて、身長はこれぐらいで、少し太っていて・・・と様子を説明しましたが、「そんなスタッフは知らないな~」とみんな口をそろえて答えます。


結局見つからず…


「やられたーーーーーーーー!!!!」

と嘆き叫ぶ私たち。


気を付けていたはずでした。

でも、首から札をかけ、情報に詳しかったので完全に信用してしまいました。

今考えれば出来すぎです。

私たちが困っているのを見て、助けるふりをして現れた、プロ。私たちが必要としていることをよくご存知で、、、。


ショックを受け意気消沈していると、一緒に探してくれた人が、

「ここから出るバスに特別に乗せてあげるよ」と言って、楽しみにしていた私たちに手を差し伸べてくれたのです! 

彼がバスの運転手などに事情を説明し、私たちはキューバ人と一緒に古いバスに乗って海へと向かいました。

おそらく本来外国人が乗れるバスではないのだと、そのバスを見た瞬間に気づきました。

目的のビーチへ着いてからも、
「これ食べる?」
「こっちにおいで、これはOOだよ。」
「上へ登ろう。その方が良く見える。」
と、彼は親切にずっと私たちの面倒を見てくれました。

そして、帰りも私たちが迷わないように付き添ってくれました。


しかし、

降りるとき彼は私たちに

「バスの運転手は特別に君たちを乗せてくれたから、5CUCを渡してあげてくれないか?」

と言ってきたのです。


うーん。どこからどこまでが彼の親切か、ちょっと疑わしいところはありますが、
キューバ人と外国人が区別され、いろんなところで外国人観光客からお金をもらうのが当たり前のキューバでは、キューバ人のバスに外国人が乗ったのだから、お金をせびられても仕方がないかもしれません。

友人は拒みました。観光業をしているわけではないのに、そうやって外国人からお金を取るのはどうなのか、と。確かにそれもそうです。

断っても、彼は怒ることなく私たちを見送ってくれました。


しかし、一人20CUC(約2500円)の損失!

留学生には痛い。

でも、結局最後はYemayáの儀式を見ることが出来て、とっても貴重な経験でした。

タダで参加できたのだから、結果オーライと言うことで、その日が終わるころにはあまり苦では無くなっていました。


つづく

(次回はその儀式についてたっぷりお話しします!)




乗ったバス

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