見出し画像

器とともに暮らす

私は食べることが好きだ。
食いしん坊とまではいかないけれど、暇な時はご飯のことを考えがちだ。
空腹になるとどうしようもなくなって、とにかく「食べたい!」の一心になる。
子供の頃はお腹が空いたら、母に飢えてるアピールをしていた。

食卓には食べ物と器が必ず並ぶ。
実家の食卓も、今の暮らしの食卓にも、食べ物に合わせた素敵な器たちが品よく置かれている。
もちろん、その日呑むお酒に合わせた酒器たちも。
結婚して2人暮らしを始めたとき、器にこだわる私を夫はもの珍しく見ていた。
確かに周りの友人にもいなかったし、そもそも器が好きだと言ったこともない。
夫に器の魅力や食事との関係性を伝えると、私以上に食いしん坊な夫は納得して
一緒に集めるようになった。
陶器市にも赴いて、自分達のセンサーに当てはまったものたちを家に迎え入れた。

元々、父方の祖父母が器好きで、陶器市が有名な栃木と茨城の境目に住んでいることも相まって、その時期に遊びに行くと必ず陶器市に行っていた。
大きな公園で屋台のご飯を食べたり、まるでお祭り感覚で行っていたけれど、実は小学生ながらに美のセンスが磨かれていたのかもしれない。
陶器独特の、温もりのあるぽてっとした釉薬。温かみのある色合い。
大地や植物など、自然を感じられる色味が多い。
食べ物は豊かな自然があってこそいただくことができるから、それにリンクした器たちに盛り付けるのは理にかなっている気がする。

かといって、ガラスや磁器じゃ味気ないのかと言われると、そんなことは決してない。
果物や洋菓子はガラスの器に載せたくなるし、磁器でいただく夏の食べ物は冷んやりさが増してより美味しく感じられる。
盛り付けたいものによって、器の種類を変える楽しみがそこにはある。

もちろん、飲み物の器にも少しばかりこだわりを持っている。
結婚1年記念の時は、「能作」のビアカップを購入した。
2人ともお酒好きなので、お揃いのがずっと欲しかった。
ネットやお店をいろいろ見て回った結果、2人とも直感でビビッときたのがこの錫製ビアカップだった。
錫肌がビールの泡をクリーミーにしてくれて、しかも熱伝導率がいいので冷えた状態が続く。
今まで普通のガラスコップで飲んでいたけど、この錫カップを手に入れてからは格段にビールの美味しさが変わった。
特に夏の暑い日は、キンキンに冷えたビールを味わえて格別だ。

毎年1回は訪れる沖縄でも、お揃いの琉球グラスを購入した。
よく体験教室でも有名なこのグラス、色の混ざり合いが美しいのはもちろんのこと、厚みのある縁がお酒をまろやかにさせてくれる。
特に泡盛や焼酎との相性が良い。ちょっと香りのきつい芋焼酎も柔らかい印象に変化させてくれる。
やったことはないけれど、意外とお湯割りを入れても良いかもしれない。

お猪口は何個か集めているけれど、益子焼か京焼のものを使うことが多い。
日本酒に関してはお米の甘みを味わいたい派なので、ガラスのきりっとした冷たい感じで飲むより、陶器のまろやかな口当たりで飲みたいのだ。
だから自然と陶器のお猪口を集めてしまう。その中でも縁が厚めで握り心地が良く、口に当たる部分が滑らかなもの。
こだわりがある分、なかなか好きなものにたどり着けないが、見つけたときは即決で手に入れる。

器の収集は一期一会だと思う。
そして現地に足を運んで、自分の五感をフル活用してこそ、逸品に出会えるのだと実感する。
なるべく陶器市や器屋さんには行こうと思うし、1つの種類にとらわれることなく、様々な流派を見て美の感覚を養っていきたい。
たくさんの「良いもの」に触れた人こそ、自分の好みを見出し自信を持って好きだと言うことができるから。

miru

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?