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『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』アンドリュー・O・スミス 著

今回紹介する本は、全米の学生が学んできた世界標準のお金の教養が学べて、お金の「増やし方」と「守り方」が身に付きます。

私たち日本人は、学校でお金の教育を受けません。その結果、私たちは社会人になってからも、普通に給料もらって税金が惹かれて手取り額を確認して「まあ、こんなものか」とスルーしてしまいます。人によっては給料から直接積み立てたりもしていますが、その利子もほとんど今はゼロに近い状態ですし、物価高の今の時代を生き抜くために出費はかさみ、結局は毎月ほとんどお金は残りません。

一方、アメリカでは高校生からお金の勉強をしっかりやります。学校を卒業したら、どのようにキャリアアップしていくか、起業や独立をするにはどのようにすればよいか、収入と支出の管理方法など、高校生から学習します。

アメリカでは日本のように大学卒業して一斉に就職して、同じ会社に居続けるようであれば、労働格差が広がり、労働者そして敗者になってしまいます。そんな厳しい資本主義社会で生き残るためには、金融知識が必要です。

『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』は、アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書で、収入を増やすための働き方と金融ゲームの犠牲にならないようなことについても説明されています。

アメリカでは就職して転職するまでは、平均4年半と言われています。就職してから10年ほどは、転職する数は増えます。転職する毎にキャリアを積んで専門スキルを高度にしていくのがアメリカ式です。日本もだいぶ転職する人が増えてきましたが、それでも大多数の労働者は、現状バイアスが働いて同じ会社に居続けようとします。

あなたの労働価値とは何でしょうか。それはキャリアを積む過程で得た知識・経験・人脈・スキルを用いて、あなたの生産性が高まり、雇用主にとってより価値のある存在になることこそが労働価値(人的資本)です。それを正当に会社が評価しているか、もしもっと正しくあなたの労働価値を評価してくれる会社が他にもあればそっちに転職するというのは、当たり前の話です。なので、こうした転職であれば、職業と業界の両方を変えてしまうような転職をすることは起こるはずはありません。ただ、日本の場合は、積み上げたキャリア、つまり長年かけて作り上げてきた労働価値をゼロにするような転職が頻繁に起こっています。

労働価値が高いスキルのある人は、転職してもしっかりと通用する人的資本になり、さらにキャリアアップとなる次の転職が可能となります。そのためには、自分自身の労働価値を高め、あなたの労働価値を正当に評価してくれる会社に移っていくことが大切です。

前職のスキルが役立たない、つまり職業と業界の両方を変えてしまう転職はNGです。会社に不満があるとつい転職したくなりますが、その不満が単なる 人間関係が問題で今の会社以外ならどこでもいいといった転職は、職業と業界の両方が変わってしまう可能性がありますので注意が必要です。

では、どのぐらい転職を繰り返せば理想値に近づくのでしょうか。この本では、付き合って何人目で結婚するのが理想的かということを例にとって説明しています。高校生の教科書ですから、高校生が最も興味のある例を挙げて説明しているのはとてもわかりやすいです。

転職の場合、転職回数を 4回と想定するのであれば、 4の平方根である 2社目までは様子見して、 次の2社のうち良かったほうがあなたにとっての理想的な転職先と判断します。何度も転職を繰り返し、自分の進むべき道がわからなくなってしまう人は、何なのかわからなくなってしまうそういう恐ぜひ試してほしい方法の一つです。

この本でもう一つ教えてくれている大切な知識は、一生懸命に頑張って働いて貯めたお金を狙われないようにする金融に関する知識です。詐欺とは言わないまでも、巷にあるサービスや商品は、いつでもあなたの貯めた大切なお金を奪おうと狙っています。

私たちがお金を支払うときは、買おうとした商品やサービスの金額がその価格分以上の価値があると判断したからです。しかし中には私たちの欲望を利用して、こちら側が気がつかないうちに騙されてしまうことがあります。特に金融商品はその道具に使われます。例えば、「絶対に儲かる」という謳い文句の元に会員を集めてその会員がさらに会員を募るようなネズミ講です。こうしたものは、市場が決定する利回りよりもリターンが異常に高いのが特徴です。

流石に年 30 %リターンがあると宣伝する商品などには騙されないかもしれませんが、市場よりわずかに高いリターンを毎年継続している場合は、きっと騙される可能性があります。バーナード・マドフのピラミッドスキームはその一例です。マドフは市場がどんなに下がってもどんなに上がっても好調な運用成績を維持しました。その評判を聞きつけて顧客も増えていきました。新しい顧客からの入金があるので、顧客が現金に換えたい時はすぐに対応できたので信頼性もありました。しかし、 2 0 0 8年のリーマンショツク後、新しい顧客から資金が途絶えた結果、1 7 0億ドル (約 1兆 8 7 0 0億円 )の損失を抱えました。

この本ではこうした事例も紹介して、運用成績が安定している商品についても高利商品同様に疑うべきと教えています。つまり絶対に儲かるという話はすべて嘘だという教訓です。そもそも絶対に儲かるなどという商品が私たちのところに来るわけがありません。そんな良い話であれば、誰にも教えずに自分一人で抱え込むはずです。最近で言えば、仮想通貨やFXなどがいい例です。自分がよくわからないものには手を出さないようにする、これだけでも守れば自分の大切なお金を守ることができます。当たり前のことですが、つい私たちは欲望に流されてしまい、時には大切な自分のお金を奪われてしまいます。そんなことを再確認できる本でもありますので、興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


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