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魔女の宅急便

3月からコツコツと魔女の宅急便を読み進め、先月やっと全6巻読了。
6巻あったけど基本お話が一話ごとに完結していくので、お昼休みとか、朝のちょっとした時間とかにサクッと読み進められていい気分転換になった。

ここ最近仕事で色々あってずっと心がザワザワしてたんだけど、この本を読んでいる間は少し心が落ち着いて心地よく過ごせた。
キキが気持ちよさそうに箒で空を飛べば読んでいる私も心がスーッとして気持ちが良い感じがしたし、ココリの街の優しい人たちと触れ合って幸せそうにしている様子を読んで私もほっこり幸せになったりして。
魔女の宅急便を読みながら改めて読書っていいなぁと思った。

今は本を読み終わっちゃって少しさみしい気持ち。
好きな本に出会うといつも読み終わってさみしい気持ちになっちゃう。
私の読書あるあるの一つ。
別に、いつだって本を開けば物語を読めるのは分かってるのだけど。

小説を読むまでは、「魔女の宅急便」といえばジブリ作品を思い出していた。
正直なところ、ジブリ作品の中では特別好きなというわけでもなかったのだけど、そんな私がなぜ今更本を読もうと思ったのかというと、ある映画を見たからである。
作者の角野栄子さんのドキュメンタリー映画『カラフルな魔女』だ。
映画での生き生きとした角野さんの姿が素敵すぎて、小説もぜひ読まなければと思い立った。
結果、なんで小説をこれまで読んでなかったんだ?と思うくらい好きになった。
これも私の読書あるある。
有名だけど読んでなかった本を読んだ時いつもこんな気持ちになる。

そんなわけで、今回は魔女の宅急便を読んでの感想をまとめてみようと思う。
優しい言葉で優しい物語が進んでいくのだけど、人との関わり方、仕事の仕方、自分との向き合い方、自然との付き合い方、受け取るものがすごく多い小説だと思う。
物語の世界の優しい価値観に触れる中で、こんな風に生きれたらなって思うたびに、荒んだ自分を鏡で見ているような気持ちにもなった。

すごい本だぜ、魔女の宅急便。
私のできの悪い頭ではうまく言語化できてないかもしれない。
最終的に仕事の愚痴みたいなのも吐き出しているけれど、いろんな気持ちが出てくるお話だったから、上手じゃないけど、感想書きたかったから書いたから読んで。
ちょっぴりネタバレあるので、これから本を読もうと思ってる方はご注意を。

小説 魔女の宅急便の感想

物語の始まり

物語はキキの旅立ちの話から始まる。
映画よりもキキの旅たちまでの経緯多く書かれていて、家族との話が微笑ましい。
母であり魔女であるコキリさんは、魔女の先輩としてキキを指導する。
魔女の習わしを大切にするコキリさんと、新しいことをしたいキキのやりとりは、話の内容は普通じゃないけれどよくある親子の衝突って感じで何だか微笑ましく感じた。

キキは少し寂しさを感じながらも勇気と期待を持って夜空に飛び立つ。
キキが旅たち、空を飛びながら眺める地上の景色の変化が本当に素敵で何度も読み返した。
元いた街を飛び出して夜が明けて景色が変わっていく様に、独り立ちしたキキのこれからが楽しみになってくる。
キキみたいに箒で空を飛ぶようなワクワクした気持ちで何かを始められたら良いのにな。
私の場合は思い立った時はワクワクして楽しいのだけど、面倒な手続きや確認しないといけない書類などを観ていると、ここでミスできない・ちゃんと確認しないと大変なことになる・・・という気持ちになったりして。
そういうのを始める前から想像して何かするのが億劫だったり怖くなってしまう。
起きてもいないことをあれこれ想像して勝手に足踏みする。
何だか人生が勿体無いなと、本を読みながら思ったりもした。

全6巻の好きな話 ()内は巻数

(1)キキ、大きな町におり立つ
(2)キキ、さんぽを運ぶ
(3)ジジの家出
(3)おわりのとびら
(4)ほうきがない!
(4)夕暮れ路のむこう
(5)海のかぎ
(5)まんまるの気持ち
(6)ひとり旅
(6)無線の声

それぞれの本で好きな話を選んでみた。
私は、ちょっぴり切なかったり悲しかったり寂しかったりを経験して人が成長する話が好きなので、そういう物語が多い。
中でも3巻の「おわりのとびら」が一番好き。

3巻は、キキにとってちょっと気に触る年下の女の子ケケが登場する。
その子がだんだんとココリの街の人たちに受け入れられることで、キキは自分の存在意義がわからなくなっていってしまう。
読みながらなんだか弟が生まれて数年した頃の自分みたいだなと思ったりして、ちょっとだけキキに共感しながら初めはモヤモヤして読み進めた。
このケケ、始めはちょっと苦手だったけど最終的には一番好きなキャラクターになった。
ケケはいちいち突っかかるような言い方をするからちょっとイラっとするんだけど、その言葉はすごく自分の気持ちに正直だ。
正直すぎるから、ぶつけられた方はグッとお腹を殴られたような気持ちになる。
大人になるとオブラートに包むことを覚えていくから、素直な気持ちでも相手が痛がるだろうなと思う言葉を人に投げることは減る。
それは自分も痛い目にあわないための防衛処置でもある。
だからこそ、ケケの無鉄砲な正直さが眩しく感じて好きになってしまった。
ケケはものすごくストレートな言葉を投げるけれど、相手の言葉を受け取る覚悟もある子だと思う。
彼女は知りたいのだ。
正直な気持ち、本当のことが知りたい気持ちが強いから、自分も本当の言葉を喋るんだと思う。
ちょっと話が変わるけど、本当に私はこういうキャラに弱い。
ケケのお話を読みながら、私は頭の中でムーミンに出てくるリトルミィを思い出していた。
小さくて非力だけど、勇気があって冒険が好き。
正直すぎてちょっとお邪魔虫。
こういうキャラは誰からも好かれるわけじゃないけれど、自分にない強さがあってちょっと憧れてしまう。

「おわりのとびら」では、そんな不満を抱えたキキが街を離れるつもりで空高く飛び立ち、自分と街と向き合い大切な気持ちに気づく。
そのシーンが本当に美しくてちょっとだけ寂しくて怖くて素敵なのだ。
近くにいると逆に見えなくなってしまうものがあるよなぁと、ほんのり思ったりして。
そしてキキとケケは本当の気持ちを交わして別れを迎える。
二人ともちょっとの不思議を持ってはいるものの、等身大の女の子なのだ。
「おわりのとびら」でのキキとケケのやりとりは何度読んでも胸に響くものがある。
そしてトンボさんとの関係も少し変化を迎える。
キキとトンボさんの関係は「好き同士なんだろうな〜」とは思うもののふにゃふにゃとしてなかなか形にならない。
二人ともはっきり気持ちを言うのは苦手なんだけど、二人だけの気持ちの通じ方があって、それがとても優しくて読んでいて微笑ましいのだ。
そんな二人の関係が、この話では二人の成長とともに形ができ始めるような感じがした。
個人的には全体を通して3巻のお話が一番好きかも。

私たちの世界の魔法

魔女の宅急便の世界では、魔法の力はだんだんと弱まっており、なんでも願いを叶えるような強い魔法は存在しなくなっているという設定だ。
キキができる魔法らしい魔法は空を飛ぶことと、お母さんから受け継いだくしゃみの薬を作ることの二つだけなのだ。
それでも冷静に考えればすごいことなのだけど、魔女にキラキラした魔法やおどろおどろしい魔法を期待する人々から向けられる魔女への期待や偏見に苦しめられる。
私は魔女でもなく魔法もないけれど、少しキキの苦しみが理解できた。

私は職場でなんでも屋さんになりがちだ。
Webデザイナーとして仕事をしていると、当然Webサイトの制作や更新が与えられたメインの業務なのだけど、なぜかインターネットを経由することならなんでも聞いていいと思われている様子で、他部署のアカウント情報も知らないシステムの設定方法などを相談されたりする。
知らんすぎる。
話の内容から想定できる方法を考えて、大抵の場合は〇〇ですよって話はできるのだけど、相手もそもそも何がわからないかわからないで話してくることも多いし、管理画面見せてもらえるわけでもないし話がなかなか進まずにムシャクシャする。
とりあえずよく話を聞いて、マニュアル見て説明箇所を見つけて電話で説明したり、URLを送ったら解決できることがほとんどだけど、地味に時間がかかる。
Webに関わる仕事してるからその辺なんでもわかるんでしょ?って感じで言われるんだけど、流石にログインしたことないシステムの設定方法はポイポイ答えられませんよ・・・魔法使いじゃないんだから。
なんて言ったらキキは「魔女だからってなんでもはできません」って言ってくれそうな気がするけど。
「そんなこともわからないの?」とか「それはできなんだ?」とか言われるのがすっごくすっごく嫌なので、できる限りやるつもりでいるけど、簡単に「できます」というのも無責任だよなと思う。
だから「ちょっと調べてみますね〜」と言って一旦受け取って調査して対応するんだけど、冷静になると「これ・・・私の仕事か・・・?」と思ったりする。
限界社員のルールその1、冷静になってはいけない。
いかんいかん、仕事の愚痴になってしまった。
魔女の宅急便を読みながら、魔法があっても同じような気持ちになって仕事するんだなと思ったという話。
逆に考えると、私にも魔法のようなものがあるのだろうか。
職場で質問してくる人からすると、私って困ったら助けてくれる魔法使いみたいに見えてるのかしら。
それはちょっと悪くないような、やっぱ困るような。

キキは時には空を飛ぶだけでは到底解決できないと思われる大変な仕事も、なんとかしてしまう。
しかも、その仕事の報酬は「おすそわけ」である。
現代社会を生きる限界社員の私は「もっともらえ〜!!!!!」と叫びたくなるけれど、現代じゃないから、もっと優しい世界のお話だからとゴックリ飲み込む。
まろやかで優しいお味。
どうしてそんなことができるんだろう。
それはキキ自身が優しく素直で、簡単に諦めない性格であること、ささやかな日常を楽しめる人々に囲まれていることが関係しているような気がする。
キキの周りには良くも悪くも資本主義的な価値観から離れた人が多い。
物語を通して、幸せは簡単にお金では買えないけれど、誰かの言動一つで簡単に感じられたりすることがわかる。
幸福の価値観がすごく優しい世界なのだ。
現代社会で物語の世界で語られるような優しい価値観を貫き通して生きるのは難しい。
優しい幸せを大切にする人ほどすり減って傷ついていくような世界だ。
だからこそ魔女の宅急便を読んでいると「こういう幸せも大切にしたいな」と思えるのだろう。
最近かなり荒んでたな、と擦り切れた自分の姿が見えた気がする。
そういう幸せは突然吹く風のように現れるのは一瞬で、感じようとしなければただの空気の流れとして過ぎ去っていくものだ。
今日吹く風を感じられているだろうか。
そう思うと、日常の中に感じきれていない幸せがまだあるような気がしている。
その幸せに気づくこと、誰かに気づきを与えることが私たちの世界の魔法なんじゃないだろうか。  

私たちの世界に呪文を唱えて願いを叶えてくれるような魔法はない。
でも見つけようと思えば、小さな魔法が隠れている。
そう思って生きたらちょっと今日もワクワク、楽しくなる気がする。

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