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読書の学びとか感想とか

「海禄さんって言葉選びうまいじゃないですか。」

朝、会社で業務開始まで時間があったので小説を読んでいたら、ふいに同僚に声をかけられた。

え、うれしい。
え、ほんとうれしい。
え、あ、ありがとうございます。

「いつも本読んでるし。」
と、続く。
そしてご年配のお客様と話すときの言葉選びに迷うという話になって、話がよく逸れる同僚と褒められて興奮してる私の会話は逸れに逸れて、地元のきゅうり農家の話になったところで業務開始時間になり会話は終わった。

後からこの会話を思い出して、「いつも本読んでるし。」の部分が気になった。
相手は何となく言っただけだって分かってるけど、私は確かによく本読んでるけどなんか能力伸びたかな?と、ふと。
あと、言葉選びって語彙のこと?
それともコミュニケーション能力のこと?
話す時やこうして文章を打っている間に『あの本のこの文章真似しよう』とか『あの言葉真似しよう』とか考えてるわけではないし。
具体的に何か培われているとして何なのかは正直よくわからないでいる。
読書での学びってなんだろう。

私の読書習慣

noteの読書好きな方々の文章を読んでいると、何かしら目標を持ってる人が多いと感じる。
読書に対して意識が高い人が多い印象だ。
比較すると、私はかなりゆるく本を読んでいると思う。
だからあまり何か学び取れている実感がないのかな。
あと、あんまり実用書とか自己啓発本とか読んでないから、勉強しよう!って気持ちでそもそも本を選んでない。
そりゃ学びの実感があまりないのは当然っちゃ当然である。
数年前はなんか読書習慣をつけて何かしら成長したいとか、目標もあったような気がするけど、もう忘れちゃった。
今はただ単純に、本を読んでいて『好きだ!』と思うものに出会えるとちょっと嬉しいし楽しい気持ちになるし、それで十分かなと思うことが増えた。
ストーリーだったり、台詞回しだったり、情景描写だったり、いろいろなんだけど、本を読んでいて『コレが好き!』というポイントを見つける作業が楽しい。
改めてなぜ読書しているのかと聞かれたら、私は日常にちょっとした好きと楽しいを増やしたくて読書しているのだと答える。

最近面白かった本 志賀直哉『小僧の神様・城の崎にて』

最近だと、2月に読んだ志賀直哉の短編集が好きだった。
2月の誕生日に、友達が同じ誕生日の作家の本のLINEギフトをくれた。
送られて来たのが志賀直哉の短編集『小僧の神様・城の崎にて(新潮文庫)』だ。
とにかく描写がリアルで情景が想像しやすく、文章がシンプルで読みやすかった。
どの短編もすっごく笑えるとか愉快で楽しいとかじゃないんだけど、煮え切らない気持ちとか、つい嫌な態度とっちゃって後からちょっと後悔してもやもやとしたりとか、綺麗じゃない感情にほんのり自分が重る。
確実に自分の中にはあるけれど、決して表には出さない・出さない努力をしている感情や考えが小説などで表される時、少し自分を理解されたような気がして嬉しくなってしまう。
『なんかわかる・・・』と思う瞬間に、少しクスッと来た。
また自然風景や動物の描写もリアルだ。
『堀端の住まい』という話で、捉えられた野良猫が箱の中で錯乱する描写などは生々しくて胸がウッと詰まる感じがした。
それを見ている人物の複雑な心境にも自分が重なって、決して自分が体験したわけではないのに、目の前で見ていたように何だかちょっと後味の悪い感じがした。
私が特に好きだったのは『焚火』である。
妻と友人と一緒に山の自然の中でのんびり過ごしたり、友人が焚火の前で少し不思議な体験談を語るという話なのだけど、山の中のゆったりした時間の流れを感じて読んでいて心地が良かった。
雨上がりの山と夕日、夜の湖を進む小舟、親しい仲間と焚火を囲む時間。
その穏やかな雰囲気にずっと『なんか良いな〜』と思いながら読んだ。
家にこもりがちな私だけど、ちょっとキャンプに行きたくなった。

どんな小説でもそうなのだけど、文章を読んでいるだけなのに情景が頭に浮かんできて、自分が見たように記憶に残っていくことに感動してしまう。
文章一つでこんな風に感じられるなんて、面白い。
人間って想像力の生き物なんだなと改めて思ったりして。
物語に触れて想像するだけで、ただここに座っているだけなのにこんなに楽しいのだ。
志賀直哉の作品を読みながら、何気ない日常でも丁寧に丁寧に観察してみれば、私の生活ももしかしたらまだ感じ取れていない楽しみが隠れているのかもしれないと思った。
さらにそれを文章にできたら、もしかしたら私じゃない誰かにとっては面白く感じてもらえるのかも。

読書の学びとは

読書での学びとは、気づきを得ることなんじゃないだろうか。
結果として何かスキルが上がる事もあるけども、スキルを上げるための直接的な手段というよりも、読書というのはその一つ前段階にある気がする。
何かスキルを上げたいのであれば読書するだけでなく、その後の行動が大切なのだと思う。

とかなんとかまとめてみたけど、本の感想書いてたら、何学べるかとかスキルがどうのなんてどうでもよくなってきちゃったというのが正直なところ。
私の場合娯楽小説を読むことが多いし、結局読んで楽しくて満足しちゃう。
勉強しよう!って気持ちでは読んでないけど、今回の志賀直哉の短編を読んだ後のように、読み終わって新しく感じる事はあったりするので、適当に読んでても楽しんでれば学びはあるなぁと。
なんかあんまりごちゃごちゃ考えるの嫌になってきた。
こういう事考えて本を読むのって野暮な感じがするし。
やっぱ、私はただ楽しく読も。

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