【写真絵本】ぼくの見た戦争
著者は報道写真家として、フォトグラファー・オブ・ザ・イヤーなどの多くの賞も受賞しているフォトグラファーの高橋邦典さん。2003年にアメリカがイラクを攻撃した際、著者がアメリカ軍と行動を共にして撮影した写真が掲載されています。
文にはふりがなもふってあるので小学生であれば読めますが、かなり残酷な写真も多いので、高学年以上のお子さん~大人向けの絵本かなと思います。
ショックを受けるお子さんもいるかと思うので、読み聞かせにも向かないの感じの絵本なのですが、大人である私自身がこの本を読んで、戦争について改めて考えさせられたので、大人に見てほしいなと思い紹介することにしました。。今までも、戦争について書かれた絵本、平和について考える絵本は読んできましたが、第二次世界大戦以降の最近の戦争について書かれた絵本は見たことがありませんでした。戦場の写真をちゃんと見ることも。
倒れているイラク兵、降伏するイラクの市民、アメリカ兵に家を追われ非難するイラクの女性と子どもたち、そしてアメリカ兵の犠牲者…。テレビや新聞などでも見たことのない生々しい写真の数々は、大人の私もかなりの衝撃を受けました。もちろん、それでもきっと絵本用に選んだ写真なのでしょうけど。
この本は20年前のイラク戦争の写真集ですが、そのさらに前、私が子どもの頃には湾岸戦争もありました。そして、今年はイスラエルが戦争をしています。また中東で戦争が起きているのかと、別の世界の出来事として捉えていることもできますが(実際今までそうだったのですが)、日本人である著者が危険な目に遭いながら撮影した写真を見ると、それでいいのかな?と思わずにはいられません。
あとがきを読むと、著者はもともと、攻撃する側であるアメリカ兵に反感を持っていたので、イラク側からの写真を撮りたかったのですが、ビザがおりず、アメリカ軍に従軍することになったそうです。アメリカ兵と寝食を共にしていた著者は、次第に彼らと仲良くなり、彼らの気持ちもわかるようになってきます。イラクから見たら「悪者」であっても、実際は彼らが普通の若者と変わりない。彼らは任務だから来ているけれど、「早く帰りたいよ…」というのが本音でした。
戦争の現実を写真によってそのまま伝えている本なので、何を思うかは読み手に委ねられています。ただ、イラクの市民だだけでなく、アメリカ兵も被害者でないかと感じられます。
著者は戦争終了後もアメリカ軍の部隊を離れ、独立してバグダッドのまちを取材をしており、写真を撮っています。家を壊された人、砲弾でけがをした身体を一生以下かえることになった人。市内は無法地帯になり、略奪行為が起こっている様子も写真には写っています。
これを読むと、戦争が終わっても幸せは訪れていないように思います。
この本は日本絵本賞も受賞していて、図書館などでは絵本コーナーにおいてあったりしますが、絵本?と言われると、ちょっと微妙なところです。
ただ、この本は、子どもにも読んでもらうことを意識して、簡単な文で書かれ、わかりやすいあとがきで解説されているので、大人向けの本というわけではありません。
とはいえ、ショックを受けてしまうお子さんもいると思うので、まず大人に読んでほしいです。ちょっと衝撃が強すぎると思ったら、無理して悲惨な写真を見る必要はないので、見せないという選択もあると思います。大人がフォローしながら親子で一緒に読むのもいいと思います。
我が家は子どもが中学生と高校生なので、それぞれに読んでもらいました。戦争の悲惨さに心を痛め、どうしてこんな風になってしまったのか考えたりしました。
第二次世界大戦について描かれた絵本は、日本人の目線で戦争が描かれているものが多いので、つい被害者目線で見てしまうことが多くなります。
ただ、どの国の誰の立場に立つかによっても、戦争の見え方は変わってきます。現在起きているパレスチナの問題も、宗教や過去の歴史などを調べていくと、それぞれの立場、考え方、意見があり、結果、戦争になってしまっているんですよね。
戦争のリアルな姿、そして多面的な見方を知ることができる本だと思います。
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