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起業が称賛される時代のCVCの価値と役割 〜大企業内に意志ある人材を育て、スタートアップとの共創を増やす〜

MIRARGOは次世代インフラとなるべく活動するスタートアップのパートナーとして、スタートアップの勝ち筋を共に描き推進する経営プロ集団です。
本記事では、大企業側にたち、スタートアップの事業成長に必要となるスタートアップエコシステムのオプティマイズに挑戦するMIRARGOメンバーを取材しました。

ーー現在のお仕事内容について教えてください。

MIRARGOの事業の一つである「共創投資」に基づき、事業会社(大企業)とスタートアップとの適切な共創関係を築くための課題整理や、大企業で働く方々にスタートアップ的思考をインストールし、大企業目線に立ちながら、大企業内にイノベーション風土の醸成や新規事業創出機会を増やしていくことが私のテーマとなっています。

ーー大企業とスタートアップの共創には元々ご興味をお持ちだったのですか?

興味を持ち始めたのは前職のCVC担当になってからですね。社会人としてインターネットを中心とした新規事業開発を経験し、成功も失敗も数多く経験してきた中でアライアンスによる事業開発に強みがあったため、10年ほど前に国内では数少ないスタートアップ企業の買収が豊富なKDDIにアライアンス担当とし入社したことがきっかけでスタートアップに高い関心を持つことになりました。
入社時はアライアンス担当として、KDDIのアセットとパートナーアセットを組み合わせた新規事業開発を進めていましたが、半年後にスタートアップ企業に投資や支援する部門と合流することになりました。そこから、インキュベーションプログラムの「∞ラボ」の運営やCVC担当としてスタートアップに関わり、スタートアップとの新規事業開発を行うことになったのですが、当時はCVC活動がまだまだ黎明期で世の中の成功事例も無く、思考錯誤しながら活動していたのを今でも覚えています。

ーー大企業とスタートアップの共創に興味を持ったきっかけは何ですか?

大きく2つあります。1つ目はインキュベーションプログラムを通じてスタートアップに伴走し、スタートアップをアクセラレートする活動です。当時のインキュベーションプログラムの活動は、大企業アセットを活用することでスタートアップの事業をいかに成長させることができるか、半年間かけてメンタリングする活動でしたが、メンタリングの活動を通じてスタートアップの事業にかける想いや情熱、信念の強さを肌で感じ、情熱や信念あるスタートアップに貢献したい想いが強くなりました。

2つ目は、新規事業開発の観点です。世の中がグローバル前提かつ、不確実性が高く、新規事業開発における難易度が各段に高くなったことでこれまでの大企業視点の事業開発に限界を感じていました。新規事業開発にかかるコストも数十億、数百億円以上の投資が当たり前、かつ黒字化まで5年や10年かかることもある中で、大企業にとって判断しにくい環境に変化している実感がありました。一方でスタートアップエコシステムが進みだし、スタートアップ投資、アクセラレートによる大企業アセット提供など、スタートアップの事業成長に貢献したことで、強い情熱や信念あるスタートアップを大企業が支援する形で大企業の新規事業開発に繋げる「スタートアップ共創」に興味を持ち、多くのCVCがスタートアップファーストで共創することで、USとは違った日本らしいスタートアップエコシステムを創ることができるのではないかと感じるようになりました。多くの大企業で同様の取組みを行い、CVCの価値を広げていきたい考えからスタートアップへの共創投資を進めるMIRARGOに参画しています。

ーー今の日本における大企業とスタートアップの関係性についてはどのように感じていますか?

事業会社によるスタートアップへの投資、CVC設立、事業共創プログラムの開催など、大企業からスタートアップへのアクションは非常に増え、とても良い環境が整ったと思います。しかしながら、大企業とスタートアップで働く人たちの仕事に対する思考のベクトルは相反する面が多く、両者が歩み寄るためには様々なことが不足していると感じます。

スタートアップの起業家は、自分自身が成し遂げたいことと事業内容や仕事内容が直結しており、事業に対する思いが強い人たちばかりです。一方で、大企業は構造上、人事による采配で各ポジションについたりジョブローテーションも多く、与えられたミッションをこなしていく方が多いと思います。事業の成功には強い「信念」や「意思」が必要ですが、両者を比較した際、仕事に対する”熱”に温度差を感じることが度々あります。まず大前提として、共創をうたうならば大企業側とスタートアップ両者の熱量が同じでなければ上手くいかないと思います。

時間軸で見るモノの考え方も異なります。スタートアップは、新たなマーケットを世の中に作り出しながら事業を成長させていく場合が多いので、成功するかどうかがある種見えない中で業務を遂行しています。対して、事業モデルが完成されている大企業は売上予測が行いやすい環境下にあるため、より明確な実績を経営陣に提示していかなければならず、長期目線かつ不明瞭な中で事業の成長を信じながら遂行することが困難であるとも感じています。

そういった環境の違いから、価値観が相反する人々の間を橋渡しができる人がとても重要なのだと思い、大企業、スタートアップの立場、双方を理解するCVC機能が必要だと考えています。

ーー大企業とスタートアップという相反する価値観を持つ両者が共創していくには、どのような環境が必要だと思いますか?

CVCは非常に有効な手段だと思っています。大企業とスタートアップとの接点を担い、スタートアップの価値観や事業共創を作る上での最先端のテクノロジーや事業トレンドをいち早くキャッチアップでき、PMFを目指すスタートアップ動向を知ることで事業機会を得ることができるのですから。

ただし、CVCを運営する上で、大企業側の価値観を押し付けずに、スタートアップ企業を理解し、彼らが生き生きと事業に専念できるだけの環境を提供してあげること、またその事業の当事者意識を強くもち行動する人材が必要であること、そして、その立場となって活動する人たちを大企業の経営陣が受け止め、評価される環境を作っていくことが重要だと思います。これらを実現するためには、大企業側に経営イシューとして大規模な意識変革が求められていると認識していただく必要があります。

スタートアップ側は、アセットを提供してもらうのだから、好環境に甘えずしっかりと実績を積み上げ企業価値を高めることに全力投球し、大企業側が求める要望に応えられるだけの器に育てていくことも重要だと思います。

ーー事業が創れているCVCと事業が創れていないCVCに違いはありますか?

起業家と仕事をしたいと思う人、スタートアップを大企業の事業機会と捉えられる人、自分の頭で考えれる人、そして「信念」や「意思」をもって行動ができる人がどれだけいるかに違いがあると思います。大企業の方とお話しをすると、新規事業がなかなか創れない、新規事業が創れる人財がいない、新規事業が創れる人財が育たないといった課題を多く耳にしますが、スタートアップの数だけ新規事業のタネがあり、投資をすれば事業進捗を把握することが出来ます。何をして上手くいき、何をしたら上手くいかないのか、マーケットのポテンシャルはあるか、顧客を獲得するのにいくら投資しないといけないのか等、業界構造を深く知ることができ、新規事業開発に必要な経験をCVC投資することで身に着けることができ、ここに価値を見出し自らの頭で考えて行動できていること、そしてCVC活動を上手く人財育成に活用できていること、ここに差があるかと思います。

ーー今後挑戦してみたいことはありますか?

私は、大企業側の立場でスタートアップエコシステムを強化していくミッションを背負っていることもあり、意思の強い人材のいるCVC作りを行っていき、事業が創れるCVCを量産できるようにしたいと考えています。
CVC担当の方にヒアリングしていると、スタートアップに投資したら何かが生まれると考えている人が多くいることを知ったのですが、それだけでは何も生まれません。投資した後に、スタートアップとどう関わっていくかによって何かが生まれる、その為に自ら考え、行動を起こす人財を育て、エンパワメントしていくことに注力したいと思います。


Director 川村 光右
スタートアップ企業にてM&Aを活用した新規事業開発に従事。
その後、KDDIに参画し10年、インキュベーションプログラム、CVC投資、本体投資を活用した新規事業開発として複数のプロジェクトを主導。スタートアップ、大企業それぞれの経験を活かし、新しいスタートアップエコシステムを構築し、日本社会全体を豊かにしたい想いからMIRARGOに参画。

▼ 執筆note


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