カミのコラム#2 −presented by「紙の温度」−
こんにちは!
中庄の未来をつくる部 刑部渉です。
カミのコラム−presented by「紙の温度」−第2回目。今回も前回と同様、「楮紙」について伝えていこうと思います。
ではでは、お楽しみ下さい。
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「楮紙」
手漉き和紙の中でも、
もっともスタンダードで、
使いやすい紙なのかもしれない。
だからこそ奥深く、
紙そのものの良さはもちろん、
様々な用途に合わせて、
染められ、形を変え、
いろいろな美しさを私たちに
魅せてくれる存在。
今回は、楮と一口に言っても様々な種類があるということからお伝えしていこうと思います。
「1回目で言えよ」って話ですが、都合上前後してしまいました。
すみません…。
代表的な楮の種類としては4つに分けられます。
コウゾ属は東アジアの小さな属であり、野生種の「ヒメコウゾ」、「ツルコウゾ」、「カジノキ」と、これら野生種の雑種性栽培種である「コウゾ」が存在しています。
●ヒメコウゾ
我が国の在来種であり、低山地の谷間沿いに多く生育し、高さ3mほどになる落葉灌木。人々は古くから樹皮を糸状にして織物や網、綱の原料として有用してきたそう。もっとも良い原料だとされている那須楮は、ヒメコウゾを特定栽培したものだとされている。
●カジノキ
東南アジアが原産とされ、中国南部、インドネシア、マレーシアなどに分布し、織物の原料として栽培され野生化したものもあるそう。高さ4m〜10mになる落葉喬木で葉は厚く表面に硬い短毛が散生し、表面には軟毛が密生して灰白色なのが特徴。タイの代表的な紙、サーペーパーなどもカジノキが使われている。
●ツルコウゾ
暖地の林緑に生育する天然落葉藤本。茎が杉や檜など高木に絡まり成長している。葉の形態はヒメコウゾに似ているが、多くは山野の谷間に育つので普通に見かけることは少ないそう。単繊維も短く、強い糸として利用できないため、ロープや莚(むしろ)に使われ、紙への利用は少ない。
●コウゾ
カジノキとヒメコウゾの雑種であり、その多くは栽培種だそう。半野生と思われるコウゾの多くは茎が細く、複本数で生育してヒメコウゾに似ており、糸や紙に加工しやすい。また、成長が早く栽培しやすいカジノキ系の特徴を含んだ品種も多く存在しているが、生育量が少ないという欠点がある。
このような代表的な品種が元となり、それぞれの地域の時代背景と文化や生活様式の中で育まれてきた楮品種が存在している。紙というものが、各地域における人々の暮らしの中でどれだけ密接に関わりあってきたのかということが読みとれます。
それでは、このようなことを踏まえて各地域の楮紙をみていきましょう。
佐賀の手すき和紙(佐賀県)
純楮100%
立地的にも恵まれていることもあり、以前は和紙を作っている家が、100軒ほどあったようだが現在は1軒だけとなってしまっている。一般的な楮紙の原料とされる楮ではなく、地域に自生しているカジノキを使用しています。そのため、少しツヤのあるようなチャリチャリとした質感があるが、油分が多く書道などにはあまり向かないそう。薄くてもとても丈夫な紙のため提灯や凧、番傘などに用いられています。
西ノ内紙(茨城県)
楮紙 未晒し 西ノ内紙
茨城県常陸大宮市に約350年の歴史がある西ノ内和紙。この地域で漉かれた紙のある一定の寸法のことを西ノ内判と呼ぶ。自家栽培した那須楮を原料に使い、茨城県の指定文化財にも指定されている。また、宮城県白石に伝わる「紙布」という伝統技法(和紙を5㎜程度の幅に途切れないように切って、紙縒って糸状にしたものを、布として仕立ていく)を西ノ内の和紙を用いて紙布として復活させたことでも有名。楮100%の原料を使い、薄く強く漉き上げた和紙でないと糸にすることはできないそう。紙布を用いた着物なんかも作っている。
上:紙糸、下:紙布
糸は、紙を途切れないように切るので、所々折り返しの箇所が玉にのようになっていることが見てとれます。
お菓子の木型を使ってエンボス加工のような加工をしている和紙の作品。
あらゆるお菓子の型を使った作品を作っている方で、この方の「和菓紙」という作品はいつも西ノ内紙を使用しているそう。
西ノ内紙や紙布とはまったく関係ないですが、関連で話をさせていただきますと、西陣織にも紙が密接に関わっているということを教えていただきました。
和紙に漆を塗って金箔を貼ります。乾いたところで、その金を貼った紙を細く切り、薄い糸にして一本一本織るときに引き入れて金の織物にしているそう。
ご興味ある方は是非下記リンクより見てみて下さい。随所に日本の伝統や文化がつまっておりとても素敵です。
https://okamotoorimono.com/movie/goldyarnlong-ver/
月山和紙(山形県)
楮紙 手打叩解天日干ノリウツギ使用
月山和紙は、山形県のとある地域で漉かれていた和紙を源流としています。高度経済成長のあおりで紙漉き農家が激減した際に、月山和紙として名前を変えて伝統が守られてきたそう。現在は国産楮にこだわり、地理的な特徴を生かした紙漉きを行っている。ベニバナやヤマブドウを入れた和紙も制作している。雪深いため、冬になると工房の2階が出入り口に変わるそうです。
高野紙(和歌山県)
高野紙は高野山のふもと、和歌山県高野町と九度山町にまたがる集落で作られていました。一度は衰退しかけたが、1人の女性が伝統を受け継ぎその技法を守り続けている。特徴としては、最初は水を流して漉き、最後は溜めて漉く「ため流し漉き」という技法を用い、漉いた紙の水をきる時にはおもしを使わず、干す際にもハケなど使わずに手で行うため、ふっくらとした仕上がりになる。また、サイズも特徴的で、横45㎝、縦30㎝程度のおおよそA3サイズくらいの比較的小さな判となっている。味のある紙なので打ち紙なんかにも使われている。
※打ち紙とは、和紙に水分を与え柔らかくなったところを木槌で丹念に、根気よく手打ちして紙面を滑らかにした紙のこと。(雁皮紙によく似た紙質になる。)しなやかで、表面光沢が上品な楮紙に仕上がっています。 奈良時代の和紙は「溜め漉き」と呼ばれる製法で、凹凸の目立つ仕上がりでした。そのため、かな書きなど筆運びを良くする為に、木槌で打って表面を平らにしてから使用したとされています。現代でもその手法を取り入れ、しなやかで、かな書きに適するように丁寧に何時間も手打ちした打紙は、大変貴重です。
吉野紙 (奈良県)
別名「やわやわ」
空の色が透けるほど薄い、別名「やわやわ」と呼ばれている和紙。極めて薄い楮紙でありながら引っ張りに強く、ふっくらとした紙の特徴が濾過に適しているため、古くから油こし、漆こし紙として愛用されてきました。昔は懐紙はもちろん、宮廷や大名が高級なティシュペーパーとしても使っていたそう。こんな薄い紙が手漉きで作れるなんていうことが驚きです。
美濃 楮紙(岐阜県)
楮100% 4.5匁 味噌用
日本三大和紙の一つである「美濃和紙」。本美濃紙の手漉き技術は2014年にユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
楮の品種としては、最も良いとされる那須楮を原料とし、ネリは未消毒のものを使用して、原料をソーダ灰で煮て、トータル約8時間以上洗うことで、セルロース以外の余計なものが混じっていない素晴らしい紙となる。なので食品に使用しても問題ないような自然の素材にこだわった和紙です。味噌を作る際に、蓋がわりに使われることが多いため、専用ではないが味噌用と銘打っている紙。
今回で、楮紙のいわゆる白い紙については終了となります。最初にお話したように楮紙は各地域の暮らしと文化の中で、様々な活用方法として育まれてきました。紙そのものを知ることはもちろん、背景を知ることで、その紙がうまれた所以がわかるのかもしれません。現在手仕事の紙を生業にしている職人さんが減っているのが実態です。紙屋として紙の価値を伝えることで、少しでも多くの方が「紙って面白いよね!」と興味を持ってくれたら嬉しいです。そこから紙の新しい可能性を見出すことで、今までなかったような良い循環が生まれてくるかもしれません。
引き続きお伝えしてきますので、次回もぜひお楽しみ下さい!!
ご紹介した紙は、全て紙の温度さんでご購入可能なので是非現物を見て、触って、その質感を確かめていただけたら嬉しいです。
※オンラインサイトURLはこちら↓
https://www.kaminoondo.co.jp
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