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12. 木材の生産・加工・流通 ~国内編~

はじめに


みなさんこんにちは!ミライノラボ学生研究員の秋山陽です。テーマが「木材の生産・加工・流通」ということで、今回は国内で幅広い活用が期待されているCLTと呼ばれる建築材に焦点をあて、その生産・加工・流通についてまとめていきたいと思います。

CLTとは


そもそもCLTとは何か、というところから始めたいと思います。CLTはCross Laminated Timberを略したもので、日本語では「直交集成板」と訳されます。以下の図のように、木材を層ごとに、繊維方向が直交するように重ねて接着してつくる板(集成板)のことを指しています。

本文①

日本CLT協会「これを読めばわかるCLT」より抜粋

CLTの特徴としては、
1.軽さ
2.強度
3.多機能性
があります。
CLTの重量は一般的な建築材である鉄筋コンクリートと比較して5分の1以下しかありません。建築材料の軽さのメリットは、材料輸送費など全体経費の削減につながることです。また、強度に関しては、一般社団法人日本CLT協会のホームページによると、試験建物に阪神淡路大震災の観測波よりも大きい力を加えても倒壊しないことが確認されているそうです。
軽くて強度が高い、という特徴を持っていることで、CLTは新たな木質の構造用材料(鉄筋コンクリートなどの建物を支える材料のこと)としての活用が世界的に拡大しています。特に、中高層・大規模建築への利用が進められています。
さらに、CLTは単体で耐火性、断熱性、防音性を持っています。従来の木造建築では一つの機能を有する材料を工場や建設現場で組み合わせて多機能性を実現していましたが、CLTは1枚でそれを実現することができます。

本文②

日本CLT協会「これを読めばわかるCLT」より抜粋

CLTの生産


CLTの生産に使われる木材は、スギ、ヒノキ、カラマツです。以下の日本の森林蓄積量のグラフを見てみると、CLTの材料となる木材は豊富に存在していることがわかります。CLTは従来の国産木材の主な活用先であった住宅のみならず、中高層・大規模建築を含む非住宅分野へ活用することができます。そのため、国内の住宅着工数が減少傾向にあるなか、新たな国産材の活路としてCLTによる非住宅建築を推進し、国産材の需要を維持・拡大することが期待されています。

本文③

日本CLT協会「これを読めばわかるCLT」より抜粋

CLTの加工・流通


ここまで魅力的な点を挙げてきましたが、課題点も存在しています。CLTをはじめとする建築材料はJAS(日本農林規格)に適合した製品であることが義務付けられており、CLTはJASの認定工場で生産加工されます。しかし、日本CLT協会によると、国内のCLTのJAS認定工場は2021年4月現在で8つしかありません。CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議から発表された、CLTの普及に向けた新たなロードマップでは供給体制の安定化を課題としており、加工工場のさらなる整備を目指しています。
また、CLTの別の課題としてはコスト面での他の建築材に対する優位性の低さがあります。これも同様にロードマップで克服すべき課題として挙げられており、鉄筋コンクリートに比べるとまだまだ高価であるというのが現状です。以下のグラフはCLTを活用した建築物の竣工数のグラフです。徐々に竣工数は増加していますが、まだまだ規模は小さいことがわかります。非住宅分野でのCLTのさらなる需要がコストダウンのために必要だと考えられます。

本文④

CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議「CLTの活用状況」より抜粋

おわりに


今回はCLTについて取り上げてきました。木でできているのに耐火性や耐震性があるということは、個人的には非常に驚きでした。CLTは国内の森林を有効に活用できる方法の一つであり、CLTの建築物がより普及してほしいと思いました!

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参考文献
CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議(2020)「CLTの活用状況」、


CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議(2021)「CLTの普及に向けた新たなロードマップ」、https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/kaigi/dai11/sankou1.pdf


一般社団法人日本CLT協会(2016)「これを読めばわかるCLT」、http://clta.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2017/06/CLT_BOOK_28P_FIX_20170619.pdf


一般社団法人日本CLT協会(2021)「はじめるCLT建築」、http://clta.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2019/01/CLT_pamphlet_print.pdf


国土交通省住宅局(2016)「CLTにかかる国土交通省の取組について」、https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/kaigi/dai1/siryou2.pdf


林野庁(2016)「CLTをめぐる情勢 ~ 地方創生と林業の成長産業化に向けて ~」、https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/kaigi/dai1/siryou1.pdf
以上最終閲覧2021-07-21

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