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学校で絶対に教えて欲しいこと

小学校の時、一番好きな授業は何でしたか?私は理科が好きでした。特に、植物や動物について学ぶ理科が好きでした。理科の中では天体(月や星)が得意ではありませんでしたが、大人になって「月や星ってきれいだなあ」と感じるようになってから勉強し始めました。ところが、子どもは「宇宙」図鑑を読んでもっともっと詳しくなっており、子どもからクイズを出されても答えられません。「図鑑」は最高の教材です。

学校の授業で足りないものは?

学校の教科をいくつ言えますか?
文部科学省の小学校学習指導要領によると、
教科として①国語 ②社会 ③算数 ④理科 ⑤生活 ⑥音楽 ⑦図画工作 ⑧家庭 ⑨体育 教科とは別に⑩道徳 ⑪外国語活動 ⑫総合的な学習の時間 ⑬特別活動
があります。
私には、この中にどうしても入れていただきたい授業があります。
「人の体と健康」についてです。

自分の体のことを知らなさすぎる

私の本職は救急医です。日々、多くの救急患者さんの診察にあたっています。
ある日、有名企業の社長を務められた方を診察しました。腰の痛みを理由に受診されました。診断は尿管結石でした。腎臓から出る尿管という細い管に腎臓でできた石がつまり、強い痛みを起こす病気です。痛みは強いですが恐い病気ではなく、石が狭いところを通過してしまえば治ります。幸い、その患者さんも痛み止めを使って1時間ほど休んでいるうちに良くなりました。

帰宅される前に、撮影したCT画像を一緒に見ていただきながら、病気の説明をします。CT画像は、体を「輪切り」にした画像ですので、体の中の臓器の場所がよく分かります。「ここにある左の腎臓から出ている細い管に石がつまっていますね」と説明すると、「おお、腎臓っていうのは、こんな場所にあるのか!」と驚いていらっしゃいました。

これは決して珍しいことではありません。学歴の高い方やすばらしい経歴を持たれている方の中にも、とても簡単な体の構造や仕組み、病気の仕組みをご存じでない方は多いです。真偽の程は分かりませんが、世界的に有名な経営者が、病気と診断された後に医学的に根拠のある治療を受けず、明確な根拠のない治療を選択し、病気を進行させたという話も聞きます。もちろんその方の「信念」でそれを選んだのであれば否定的にとらえるべきことではありませんが、もし最初から根拠のある治療を選択すれば治癒していた可能性があるとすると残念な気持ちにはなります。

すべては命があるから

医療を専門にしていない方が人の体や病気について詳しくないのは当たり前です。私も家電屋さんや携帯電話ショップに行くと自分の知識のなさに愕然とします。
ただ「基本的な体や病気の知識」は間違いなくすべての人が持っていた方がよいものです。なんと言っても「自分の体のこと」ですから。他のことよりかなり優先順位が高い気がします。
これだけテクノロジーが発達し、人工知能のような「人が人のようなものを作る」時代に、「自分の腎臓がどこにあるか」を知らないのは、かなりアンバランスだと思います。
幸せに生きるためには、まず最初に「命」が必要です。私は、子ども達が幸せに生きる力を身に付けることを支援する活動をしていますが、まず最初に、自分の体を大切にできて正しく病気と向き合える「力」が必要です。
この力は障がいを正しく理解することにもつながります。

どんな授業をするか

「理科で人の体について学ぶじゃないか」というご意見があるかと思います。確かに小学校や中学校の理科で基本的な解剖や生理学を学びます。よく見返すと、消化酵素やホルモンの働きなどかなり細かいところまで扱われています。ただほとんどの人が大人になる頃には覚えていなかったり、生活に役立てることができていないと思います。

それは「理科という教科」で習うからだと考えています。理科として習うとどうしても「テストでいい点数をとる」ことが目的となり、「点数をとるために」人の体を覚えようとしてしまいます。そうではなくて、「健康でいるために」「病気と正しく向き合うために」人の体を学ぶことができて、生涯にわたって生活に生かせる授業が必要だと考えています。

全ての国民が「人の体と健康」について正しい知識を持ち、正しい実践ができるようになると、介護の問題や医療費高騰の問題など多くの社会課題においてもいい影響があるはずです。
また、子ども達の中には医師等医療職を目指している子が少なくなく、医学についてお話するとみんな興味津々で聞いてくれます。きっと親御さんも応援してくれます。

ぜひ学校教育の現場でも実現していただけたらと願っています。





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