【彼女の決意】予期せぬ訪問者
予期せぬ訪問者
真理はここ最近、夜更かしの影響だけでは説明できないほどの疲れを感じていた。特に夜中に何度も目を覚ましてトイレに行くことが増えてきた。
そして、異常なまでの渇きにも悩まされていた。ネットフリックスのエピソードを一気見することが多くなった夜、彼女は頻繁にペットボトルの水を手に取るようになっていた。
ある日、真理が長女の梨花とショッピングに出かけた際、足元がふらついて階段を踏み外し、転びそうになった。「大丈夫?最近疲れてるのかな?」梨花が真剣な眼差しで心配そうに母親を見つめる。
真理は「大丈夫よ。ちょっと疲れているだけかしら」と答えたが、実は内心、身体の変調を深く憂慮していた。
家に帰ると、夫の誠が横に座り「最近、色々な症状が出ているけど、一度病院に行った方がいいんじゃない?」と提案する。真理は長らく病院を避けてきた。過去に病院での不快な経験がトラウマとなっていたのだ。
しかし、家族の顔を見ると、彼らは真剣な表情で彼女を見ていた。
彼女は家族を安心させるため、そして自らの健康を取り戻すため、病院に行くことを決意する。
診断の結果、医師から「糖尿病」の診断を告げられる。真理は驚愕し、診断結果の紙を眺める。文字が書かれていることは理解しているが、まるで外国語のように感じた。真理の心は一瞬で冷たくなる。
真理は病院からの帰り、気持ちが沈んでいた。家の中に入ると、床に数滴の血を見つける。驚いて足元を見ると、左足のくるぶしに小さな傷があり、それが出血の原因のようだった。しかし、真理はその傷をつけた記憶が全くなかった。今までなら、こんな小さな傷で出血することなんてなかった。それに、こんなに出血が続くこともなかった。
「これも糖尿病の影響なのかしら…」と真理はつぶやいた。
夕食の時間、夫の誠と2人の子供たちが集まっている中、真理はその出血のことを話す。長男の遼は「出血しやすく、また治りにくいのも糖尿病の症状の一つだって学校で習ったよ。」と教えてくれる。
真理は静かにうなずき、「もう若くないから、こんなこともあるのかもしれない」と笑ってみせたが、心の中では不安が募っていた。
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