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エリートコースから飛び降りてやる

タイトルの通りだ。
私はエリートコースを離脱する。良い高校に行って、良い大学に進んで、良い企業に入る…なんて順風満帆な生活が約束されたエリートコース、そんなものからはぴょーんと弾みをつけて飛び降りてやる。

不遜な態度で申し訳ないが、私は今まで絵に書いたようなエリートコースを歩んできた。幼い頃から塾に通い、お金をかけてもらって受験に打ち勝ち、良い高校に大学と順調に歩みを進めてきた。このままどこか適当な企業に入って安定した収入と社会的地位を得たならば晴れて順風満帆エリートコースのゴールイン!
…だった訳だけれど。私はそれから飛び降りてやることにした。理由は大きくわけて2つある。

1つは、私が女だから。
心の性も身体の性も女である私は、今の日本の就活に、働くことに、強く違和感を感じている。
例えば私には私と同じようにエリートコースを歩んだ兄がいるのだが、兄のように大手企業の総合職を目指すことが私の中でどうにもしっくり来なかった。大学の同期生や周囲の友人たちは私の兄のような大手志向かつ総合職を目指す人間が多い。それに影響されて私もその道に一度は憧れたが、それは私のやりたいことではないとどこかで直感的に理解していた。
それに、どの企業で説明を聞いても、女である自分が兄みたいな大勢の同僚たちと切磋琢磨しながら働いているビジョンが見えなかった。どこへいっても、男性の人材を求めているのが前提で、女性もそれくらい働けるなら雇ってもいいよ、と言われているような気がしてならなかった。ジェンダー平等が叫ばれる今の日本は未だ男性社会だ。女性が管理職に就くには男性に劣らず働ける人材でなければならない。男性基準に追いつけるなら女性でも昇進できるなんて、それなら別に女性である必要も無いのに。
それなら女性らしさが活かせる業界を企業を目指せばいいじゃないか、とか。私は別にそういう業界に行きたいわけじゃない。どの業界に対しても女性が男性化することなく、女性らしく活躍出来ることを望んでしまうのは私のワガママなんだろうか?

そしてもう1つの理由は、もう見栄を張るのが嫌になったから。
「エリートコースだから」
「頭がいいから」
「良い大学に通っているから」
そんな理由で、

"誰もが知っている憧れの大企業に入りたい"
"皆から尊敬のまなざしで見られるような職業に就きたい"
そう考えてしまうことには、もう疲れた。

私は、良い企業に入るためにこの大学に入ったんじゃない。勉強を続けてきたんじゃない。叫びたいくらいに、本当は強くそう思うのだ。

私は、好きな仕事をするために、それを選び取れるように、学生として出来ることをして来ただけだ。
だから"高学歴"という肩書きに選択肢を削られるなんて、とんだ皮肉で。そんなの嫌だ。
私のやりたいことは、仕事にしたいことは、男性社会の大企業じゃ出来ないことだから。やりたいことを殺してただ見栄のために良い企業に入ろうと努力することは、もうやらなくていいと思うことにした。

エリートコース、その道の上はそこを歩む人間同士でデスゲームが開催されている。就職で自身の輝かしい経歴を活かせない人間は「負け犬」の烙印を押され脱落していく。
私は、その盤上で小突き落とされないよう虚勢を張っている事がもう馬鹿らしくなった。だから勢いよく飛び降りてやるのだ。どうせ女の私は最初から分が悪い。逃げだと思うならそう言ってくれて構わない。

飛び降りた先で、「あの時逃げてよかったな」とほくそ笑むことが出来るように、私は私らしく突き進んでやるのだ。

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