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自分の身は自分で守ろう。

2011年3月11日。

日本語教師になるための養成講座の帰り、
スーパーに寄って家へ戻るところで
大地震に遭いました。


小川の水がはね、電柱やビルはゆがみ、
歩けないほどの揺れだったので
ガードレールに暫くつかまっていました。


当時はマンションに住んでいたのですが、
帰ると様々なものが倒れて壊れていました。


エレベーターやガスは当然止まり、
テレビはこの状態が異常であることを
知らせ続けていました。


翌年から私は就職
外国人は大多数がこの状況を怖がって
帰国した後でした。


そう。
日本語教師が余り余って
要らない時代に入ったのです。


恩師たちには厳しく、こう言われました。


・「養成講座修了」のほか
 「日本語教育能力検定試験」
 (合格率1割の試験)に
 必ず合格
するのはもちろん、
 他の引き出しを身に着けておくこと。


・就職活動で10校落ちても、
 ひるまず書類を送り続ける
こと。


私は何とか検定試験に合格し、
就職活動を始めました。


10校はどうだったか忘れましたが、
ゆうに5~6校は落ちたと思います。
その度に心は痛みましたが、
恩師の助言が助けてくれました。


大学卒業後に取っておいた
社会福祉士の資格と
趣味で取ったTOEIC910点のスコアが
こんなところで役立って
何とか今も働く専門学校に雇って頂き、


着付をやっていたことから、掛け持ちで
伝統文化を専門で教える日本語スクールにも
採用して頂きました。


しかしながら、
本当の日本語教師切りがはじまったのは
就職2年目でした。
波はすぐには来ないのですね。


専門学校では「痛み分け」と言って
希望のコマ数が皆等しく
少しずつ切られることになりました。


生活がかかっている先生方は
当然これでは生活できず
バタバタとお辞めになりました。


先輩の先生方には、何人もから、
しつこく言われました。


「日本語教師をやっているとね、
こんな波は必ずあるの。何度もあるの。
急に学校が閉鎖されたりね。


だから、自分の身は自分で守りなさい。
1つの学校で安穏と
教えていてはいけません。
必ず掛け持ちをして、1校がダメになっても
ダメージを少なくしておくこと。


研修なども行って学び続けなさい。
取れる資格は取り続けて差別化して、
切られないようにしておきなさい」


私はこんな覚束ない時代に
日本語教師になったので、
先輩方の助言を鵜呑みにして
子どもが生まれるまでは
学校掛け持ちを常としていました。


1週間に5校で教えることもありました。

学校により教え方が違うので、
それは私の糧となりました。


研修にもたくさん行きました。
その都度新しい発見があり、
役に立ちました。


暫くすると急に、
日本語教師が足りない時代に入りました。


この頃には検定試験に合格していない人も
たくさん採用
されました。


この時代の先生方は、
掛け持ちもされていない方が多く、
研修も乗り気ではない。
私が熱くアドバイスしても
何というか、心に響かない。
時代が違う、ように感じました。


3年ほど前から、安倍政権による
留学生滅多切りが始まりました。


急遽、留学生のビザ更新が
厳しくなったのです。


詳しくは別の機会にしますが、
優秀な学生から
どんどん切られていきました。


2年度前は
最優秀クラスの1年生を
受け持っていましたが、
学生数は半分ほどになりました。


女の子たちは泣いて泣いて帰国しました。


出席簿を確認するたびに、
学生の名前に新しい二重線が引かれ
「退学」と書かれていました。


私は当時、
専門学校併設の日本語学校をメイン
教えていましたが、


留学生に人気がなくなる日本の
この状況を「危ない」と感じ、
また周りからも「日本語学校は危ない」と
言われていた
ので、


数年かけて徐々に日本語学校から
併設の専門学校でビジネスを教える科目に
担当授業をシフト
させ、
(それはかなりの勉強量でした)
昨年度から、日本語学校は無期限休職
させて頂いています。


そんな折、このコロナ禍が始まりました。


当日本語学校は、通常であれば
1学年に7クラスはありました。
現在、1年生は1クラスのみ。
学生数は全員で3名です。


どういうことか、お分かりでしょうか。


つまり、その分の教師は、
自宅待機
しているのです。


私よりもずっと教えるのが上手な先生も、
担任を何クラスも受け持ち
忙しくされていた先生も、
皆さん仕事がないのです。


私は本当に、運が良かったです。


こういう波は、
何年もかけてやってくるので
今は専門学校で希望コマ数を全て
頂けていても
この後に酷いことに
なるのかもしれませんが。


私は今自宅待機の先生方に
以前より
「専門学校でもご希望を出したら
 いかがでしょうか」と
おこがましくも申し上げていましたが
大抵の先生は、こう仰いました。


「私は日本語しか、教えられないの」


もちろん自宅待機を厭わない先生方も
いらっしゃるでしょう。


でも、一つにかけていては、淘汰されます。


あなた方に会えなくてさみしいのは
あなた方を心配しているのは
学生だけじゃない。


どうして私よりもずっと
豊富にあふれ出るようなスキルを
みすみす無駄になさるのですか。


教えるという行為は同じ。
教える対象も同じ。
どうして日本語のみに拘ったのですか。


AIが仕事を蝕む職に、
語学教師が入っているのは
何年も前から有名です。


結果がコロナであろうと何であろうと、
この状況は、特に日本語教師であれば
遅かれ早かれやってくると
予想出来ていたはずです。


コロナ禍があろうが無かろうが、
今の時代、一つのスキルだけでは危ない。


日本語教師のみに限った話じゃない。
学ばないといけない。
引き出しを増やさないといけない。
変化の波に乗らないといけない。


「自分の身は、自分で守りなさい。」
新人時代に私にそう仰った先生は
現在70代。

まだ現役で、教師ご健在です。
様々な未経験の科目も
果敢に教えられています。
もちろんオンライン授業も
日々されています。
上手に波に乗り続けられています。


変化の波に乗りましょうよ。
一緒に引き出しを、増やしましょうよ。


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