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私も外国人介護士でした。


2001年、
私は外国人介護士として
イギリスのナーシング&
レジデンシャルホームで
住み込みで働いていました。


※私は自称28歳です。
 計算しないでね😆


その年の9月11日、
重度認知症棟の勤務中
つけっぱなしのテレビから
延々と世界貿易センタービルに
飛行機が突っ込む様子などが
流れていて、

ご入居者はどなたも
テレビのことなど
気にしていなかったのですが、

その日一緒に働いていた
インド人看護師が
言ったことばをよく覚えています。


「これは歴史的な事件になるね」



私は外国人介護士として
日本人として
様々な偏見に遭いました。


「イギリスのお金を
 アジアに(給料として)
  持っていかないでちょうだい」

これはひとりの
ご入居者にいつも言われたことばです。


日本はその頃
むしろイギリスより裕福な国
だったのですが、
遠く離れたかの地では
全く興味を持たれない場所で、

日本も
当時まだ貧しかった中国も
もっと言えばタイもフィリピンもベトナムも
区別がつかないようでした。


「日本人は猿の脳みそを
 食べるのよね。信じられない」


これは同僚の英国人介護士に
言われたことばです。



猿脳(えんのう)を食べるのは
中国の文化ですが、
彼女たちにとって
中国と日本の区別は
全くつかないようでした。


その頃から有名だった
TOYOTAやSONYの話をしても、
今よりもっと経済のよかった日本は
彼女たちからすれば
まるで興味のない
小さいアジアの国でした。


「こんなに小さいのに
 dadやmomの元を離れて
 外国まで稼ぎに来て、偉いわ」


これは本当によく言われました。

日本人は歳よりかなり幼く見えるので
10代中盤の子どもに見えていたようです。


大多数の人から見て
私の立ち位置は
「極東の貧しい国から来た出稼ぎ」でした。


最初こそ

「日本は裕福な国ですよ。
 私は出稼ぎじゃなくて
 勉強に来ているんです」

なんて弁解していましたが、
あまり理解されることもないので
そのうち馬鹿らしくなって
やめました。


「出稼ぎ」として
来ている外国人に
何も悪く言われるような
側面がないことに
気づいたこともあります。


このホームでは
介護士、看護師、掃除担当は
全体の7割が外国人でした。


そのうち
ドイツなどの
裕福な国から来ている
スタッフもいましたが、
ほとんどが国を跨いだ
出稼ぎ労働者でした。


以前にも何度も書きましたが

彼らは
同じ仕事をしているのに、
英語も堪能なのに、
イギリス人よりずっと低い給料で
ずっと長時間働かされていました。


母国ではエリートの
集団でした。

大学卒はもちろん、
更に合格率の低い入国のためのテストを
パスしないと来られないんだそうです。


大卒、というのは
大学全入学時代、なんて
今や日本では言われますが

発展途上国での大卒は
日本の大卒と比べようのない
エリートです。



国では不自由なく
裕福に育ったが故に
気品のある彼らが、
イギリスでは虐げられて
苦しみながら仕事しつつ、

それでも明るく、楽しそうに
笑い飛ばしながら
生きているところを見てきました。


彼らは決して
1ヶ所に留まることなく、
イギリスで経験を身につけ
一人ひとりにとって
より魅力的な別の国へ
移動して行きました。


私に一番よくしてくれた
フィリピン人看護師の女性は
今、オーストラリアにいます。


外国人介護士、看護師は
嫌であればさっさと
最初に働き始めた国を捨てて
別の国へ行ってしまいます。


発展途上国の大半の人々が
英語に堪能なので
彼らにとって英語圏の国を移動するのは
ビザさえ出れば
それほど難しいことではありません。



日本は、これから
もっともっとたくさんの
外国人介護士が
入ってくると



思いたいのですが、



外国人介護士は今や
他国でも貴重な人材で

日本はその争奪戦に
既に負けている、と聞きます。


K-popやドラマで若者に
大人気の韓国や、

経済成長著しい中国、

英語が通じる
先述のイギリスをはじめ
自由の国アメリカ、
移民に優しいオーストラリアやカナダなど。


これらの国よりも
日本を選んでくれる
外国人介護士・看護師希望者は
どれだけいるんでしょうね。


日本語を学ぶのは
本当に大変です。


日本は意外と外国人に閉鎖的で
政策としてまず
外国人に優しい国に
なりきれていません。


それでも日本を
選んでくれる人たちは
本当に有難いと思います。




先日、そんな外国人介護士の
創作を書きました。



物語に出てくる
「ソウくん」の国の留学生は、
授業運営だけを考えれば
一番たくさんいて欲しい国籍
かもしれません。


彼らは
もちろん学生によりますが、
真面目で勉強熱心のために
すぐに日本語能力が向上します。



敬虔な仏教徒が大半のためか
教師に楯突くことはせず
穏やかで「問題行動」もなく
こちらの国民が多いクラスは
本当にやりやすい。


一方で、
学生一人ひとりの
心のサポートまでしようと
思う教師であれば、
最も悩ましいかもしれません。


彼らはいつも笑顔で
一生懸命に頑張るが故に
ストレスを溜め込みやすいのですが、

それを外に見せることが
あまりなく

気づいた時はもう手遅れ、
ということが
本当によくあります。


はっきりと言わない国民性
かと思えば、
日本人と比べると
そうでもないため
また違うような気がしますが。


この国の
たくさんの優秀な留学生が
途中で心折れ
帰国していく姿を見てきました。


昨年度、
教えていた併設の日本語学校の2年生で
今年度から専門学校に内部進学した
「ソウくん」の国出身の教え子が
5月に早々に退学しました。


私は併設の日本語学校出身者の教え子が
専門学校に入学すると
彼らのクラスまで
様子を見に行きます。


日本語学校と専門学校では
日本語の難易度も様子も
全く異なるため、
ストレスを感じる学生が多いからです。


見知った教師が
顔を見せることで
少しでも安心して欲しい、と思って。


たくさんの学生が
悩みを打ち明けてくれました。


ただひとり、
この、退学した子のクラスだけは
掴めなくて
行けませんでした。


彼だけはクラスを午後に移動していて、
何故か自分の名前も変えていたのです。


数週間して
教えている午後のクラスに
彼がやってきました。


私は少し声をかけましたが、
まだ慣れないクラスに48人程度いて
他の学生の把握も難しく
じゅうぶんに話を聞くことが
出来ませんでした。


それきり彼は
退学してしまいました。


もっと声をかけて
安心することばを何か
伝えればよかった。


このことが
今年度に入ってからの
一番の心残りです。

「ソウくん」の容姿は
彼に寄せました。


高い身長、細すぎる手足、
整ったアイドルみたいな顔、白い肌、
優しい微笑み。


だけど彼は
あまり真面目じゃなかったので
中はN1レベルの
また別の学生がモデルです😛




日本は既に
外国人と共存していかなければ
やっていけない世の中になっています。



日本人とは習慣も見た目も
何もかも違うかもしれませんが、
移民先として日本を選んだ外国人が
上手く溶け込めて
楽しく日本で生活していけるように
願うばかりです。

ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。