お年寄りに幼児語を使わないで!〜認知症の方に尊厳を〜
外国人を含めた
介護・医療関係者に、
どうか一人でも多く
伝わることを切に願います。
この話の一部は、以前
私が勤めていた在宅介護系企業で
私が担当していたblogに
載せたことがあります。
機会があれば何度でも
発信したい内容で、
その度に
自分の発信力の小ささを
悔やむ記事でもあります。
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子どもの頃、
祖父母と同居していました。
祖父は一代で会社を大きくした人物でした。
静岡の田舎から東京は築地に上京して
最初は徒弟のようなことを
していたようです。
仲間が映画などに遊びに行くのを横目に、
月に一回、銀座木村屋のアンパンを
買うのだけを楽しみに
必死で働き、お金を貯め、
努力を買われて小さい店を任され
会社を興したそうです。
祖父はいつも
勉強している人でした。
仕事が終わっても
ずっと書斎に籠って
何かを学び続けていました。
家に時々若い衆を連れてきては
酒を酌み交わしながら
熱く語っていました。
若者たちは熱心に
祖父のことばを聞いて
「社長!尊敬しています!」
「ずっとついていきます!」
など、赤い顔で大声で
言っていました。
こんな祖父の姿を
私は子どもながらに
興味深く見ていました。
小さかった私は
祖父の物、祖父の座る場所には
畏敬の念を抱いて
触れられなかったのを覚えています。
そんな祖父が認知症になりました。
魚市場の男だった祖父は背が高く
屈強だったため、
徘徊など
「問題行動」を起こすと
大変だったのでしょう。
介護保険法施行前だった当時、
入院先ではベッドに縛られ、
薬漬けで眠らされていました。
まだ小学生だった私が
お見舞いに行った時、
そばについていた看護師さんが
こう言いました。
「(下の名前で)〇〇さん
お目々あけてよ。
ちょっと、ちゃんとして。
お孫さん来たのよ」
これを聞いて子どもだった私は
大変に憤りました。
ただの‼︎
どうってことない看護師が‼︎
偉大な祖父に向かって‼︎
「お目々開けてよ」とは何事だ‼︎**
祖父の立派さなんて、苦労なんて、
何も知らないくせに**‼︎‼︎
認知症は、
そうなってからのその人だけを見ると
頼りなく見えるのかもしれませんが、
尊厳のある大人、なのですよ。
絶対に、幼児語なぞを使っては
いけないのです。
大人になって特養の
責任者になった私は、
徹底的に職員の言葉遣いに
気をつけさせました。
毎日チェックシートまで書かせて。
挨拶をすること。
ご入居者には必ず敬語を使うこと。
幼児語は決して使わないこと。
数年ほど前、
介護の日本語の書籍紹介兼研修へ
行きました。
そこで筆者がこう言ったのです。
「お年寄りには
くちゅくちゅぺーと言います。
外国人には分かりづらいので
ちゃんと教えましょう」
耳を疑いました。
介護の日本語を教える筆者が、
尊厳あるお年寄りに
幼児語を使え、と言っている。
速攻クレームを出しました。
なんてことだ。
日本は急激に高齢化したので
特養などの量だけをとにかく増やした分、
質の悪い施設が横行しているのは
知っていましたが
本を書く者さえも
こんなにレベルが低いとは...!
今日は父の面会へ行きます。
父も認知症で、特養に入居しています、
祖父が認知症になったばかりの頃、
当時、知名度のなかったこの病気の
いわゆる「問題行動」を
起こし続けた祖父と
父が取っ組み合いのけんかをしたことを
よく覚えています。
魚市場の、ガタイがいい男二人が
思い切りけんかをするのを見るのは、
自分の祖父と父とは言え
大変な恐怖でした。
「お前なんか父親だと思っていない‼︎」
「迷惑」をかける祖父に
「家族を守るため」に
父は怒鳴ってこう言いました。
認知症は、
自分がその病気になったことに
気づかないのではありません。
最初はまだらボケで
苦しんで苦しんで
忘れていくのです。
長きに渡って病と付き合っても、
調子が良く、現在を思い出すことも
あります。
そのたびに、
自分のした突飛な行動に
落ち込むのです。
父は変わっていく祖父を間近で見ていて、
自分はこうなりたくない、と
誰よりも思っていたでしょう。
実際に祖父と同じ病気になって
祖父同様に変わっていく自分の姿を
誰よりも悩んだでしょう。
医療、介護従事者の皆様、
福祉職をかじった私には
今ならはっきりと分かります。
あなた方がどれほどの誠意で
素晴らしい行いを
毎日、されているのかを。
でも、だからこそ、
お年寄りには
尊厳を守る言葉遣いを
しなければならない。
幾ら愛情を持って接していても、
熱心に仕事をされていても、
間違えた言葉遣いは
自分で自分の首を締め付けます。
ご利用者とその家族は
お世話になっている負い目があるので、
あなた方が
どんなに酷い言葉遣いをされても
クレームは言えません。
表面上はお礼のことばを述べて、
外で言うのですよ。
あの看護師は、介護士は
酷い!って。
周りの皆も使っているから、で
済まされる話ではない。
決して幼児語など
使ってはならないのです。
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