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自分を限定しなければ、絶対に道はある


かんくん(息子。中1野球少年)が、同い年で同じチームメイトであるHくんから「それ、まあまあなイジメだよね」という扱いを受けているのを先月くらいに知ってから、わたしの心は暗かった。

Hくんがかんくんに嫌がらせというか、心ない言動をするのは今に始まったことではなく、そういえば去年の野球チームの夏合宿のときにも、彼(とそのイジワルに染まりやすい友人)のかんくんへの言動を見ていて、わたしはほんとうにショックを受けて、子供たちや保護者とのなごやかな最後の夜のバーベキューだったというのに、部屋に戻って大泣きしていたのだった(わたしがね)。

我が子がイジメられている現場を見て(かんくんはやり返しもせず、ただ悲しげに途方にくれていた)、心が痛まない親がいるだろうか。
わたしはほんとうに泣いて、泣いて、泣いた。もちろんその前にしっかりとHくんとその友人の前にかがんで座り、目と目を合わせ、「かんくんがあなたたちに何かしたかな?」とたずねた。
イジワルをした彼らは、気まずそうに目をそらして、モゴモゴとなにかをつぶやいていた。

しばらくはその言動もなりをひそめていて、さらには卒業しみんなバラバラのチームになったので落ち着いていたが、Hくんかんくんはまた同じ野球チームに所属することになったのだった。

心が暗く落ち込んでいるとき、わたしは対処法をずっとぐるぐると考えていた。Hくん本人に話す。Hくんの親に話す(ふつうにママ友だ)。学校の先生に話す。チームの監督に話す。

どれも一長一短に思えたし、結局のところHくんの中で「この自分の言動は、相手の尊厳を奪うものなのだ」という自覚が芽生えない限り、なにも変わらないだろう。その自覚って、親や先生や監督から「コラ!」と言われたところで、芽生えるとも思えない。
「コラ!」と言われたうっぷんの分だけ、またかんくんや別の子たちに憂さ晴らしの矛先が変わるだけだろう。

「おかあさん、心のコップって知ってる?」
「うん?なに?」
「心にはコップがあって、お水が溜まっていくんだって」
「へえ」
「それでね、お水がいっぱいになって溢れると、たおれちゃうんだって」
「そうなんだ」
「あふれて倒れたコップは、もう元に戻らないって、元に戻るにはうんと時間がかかるんだって」
「…….それは誰がいってたの?」
「心の授業のとき。カウンセラーの先生がいってた。それでね、おれの心のコップは今、7割くらい」
「……そうかぁ」
「そう。でもまだだいじょうぶ」
「わかった。またさ、あふれる前に、おかあさんに教えてくれる?」
「うん」


いつもの夜の散歩コースをひとり、暗い気持ちで歩いていた。きっと野球はやりたいだろう。けれどもこの近隣にちょうど良い軟式野球のチームはない。ものすごく厳しいとこ(手が出ちゃう系)、もしくは硬式に転向させるのか。

ふと明かりを見上げたら、インドアテニススクールの光だった。楽しそうに老若男女がコーチからのボールをぱこんぱこんと返している。ボールがラケットに当たる小気味良い音に耳を済ませていたら、なつかしい気持ちになった。
かんくんが小学1、2年の頃に、このテニススクールに通わせていたのだ。

毎週土曜日の1時間、まだ小さな体で、子ども用のラケットを重そうに、それでも上手に打ち返していた。サーブやレシーブ、ボレーの練習。たまにダブルスで試合形式になったりして、同い年くらいの子たちと楽しくテニスをしていた。
チームメイトから嫌がらせをされることもなく、というかそもそもチームメイトという概念すらなく、ただ個人技としてテニスを習うというシンプルな習い事。

あ、なんか。
あの頃、楽しかったな。

こんなんでいいじゃん、別に。

野球にこだわらなくたっていいじゃん。今の中学校にこだわらなくたっていいじゃん。かんくんにはいくらでも他の世界が、他のひととの出会いが、これからじゃんじゃんあるんじゃん。

野球をやめたら、またテニスを始めたっていいよな。今度はわたしも一緒に習っちゃおうかな。これまで土日が朝6時から夜7時まで不在でちっとも遊べなかったけど、空くようになったら一緒に山に登ったりもしたい。
小2から6年間も野球づけでろくに旅行もできなかったもん、旅行にだって行きたい。ハチ(旦那さん)はハンドボール大好きだし、かんくんも興味あるみたいだからハンド部がある中学に転校するのも手だな。

お、そしたら引っ越し?引っ越しちゃう?
うたちゃんの高校にももう少し近いところに引っ越すのも良さそうだ。


どんなことでも、いくらだってやりようはある。
”「これがない自分はここまでだ」と自分を限定しなければ、絶対に道はあります。” と敬愛するばななさんもいっていた。
他人を変えることはできないし、そこに労力を注ぐ気にはあまりなれないけれど、自分(と自分の家族)の環境を選ぶ力はわたしにはある。
みんなにある。

テニススクールの練習風景をながめながら、そんなことを思っていたらいつのまにか心が晴れていた。いや、まだ、多少は心配もするけれども、「道はない….」という重苦しさからは解放された。

心のコップはあふれなきゃいいってもんじゃない。7割だって重すぎる。こだわりを捨てて道を見出すことができれば、いつでも軽くなれるのが人生なのかもしれない。

いつも家族に思うことは、
わたしには君たちがいるからだいじょうぶ。
君たちにも、わたしがいるからだいじょうぶだよ、ってこと。



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