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フランスな日々。 #留学編6

留学してから約2ヶ月。
5月の初頭、私はフランス人の結婚式に参加する事になった。

実は、留学前にイベントで偶然知り合った、モノ造り繋がりの友人である。
しかし、私が住んでいた街から遠い場所に住んでいたため、会うのは本当に久しぶりだった。

今思えば、この結婚式は本当に凄かったと思う。
参加させてくれた友人夫妻には、とても感謝なのである。

日本ではおそらく考えられないが、一言で言えば「コスプレ結婚式」が正しいだろう。だが、コスプレと言っても、アニメではない。

ドレスコードは【中世の時代衣装を着用】で、式場は【本物のお城】である。
これは、友人である花嫁たっての希望だった。

『お城って簡単に借りれるんだ?!』

一瞬そう思ったが、ここはフランス。日本とは違うのである。
しかし、私はイメージが判らず、担任の先生に相談をした。

「友人が週末にお城で結婚式をするそうですが、フランスではよくある事ですか?」

すると先生は「フランスでもそんなの、あまりないわよ〜!お城なんてロマンティックで素敵ね〜!!凄いわ〜、楽しんできてね♡」と楽しそうに答えてくれた。

やはりフランスでも特殊な式らしい…。さすがレベチのヲタクだ。感心する。

別の先生にも話をしてみたら、『そうか。結婚式か。それなら、月曜日は授業は休んでいいぞw』と返された。

当初は、『休んでいい、ってどういう事だろう?式場の場所が、遠いから休んでいいのかな。』と思っていた。

しかし、私はこの言葉の本当の意味を、後から身を持って知ることになる。


ちなみに街中でも、中世っぽい服はあっさり調達できた。
私はレイヤーではないが、そのテの人種は山程見てきた。(コ●ックマー●ットで。)

私もヨーロッパの歴史服が好きで、よく調べながら描いてた。そのため、頭にはなんとなくのイメージがあったのだ。さすが私。歴女なだけはある。
そういえば、自作ドールも歴史衣装で作ったんだった。

日本でヒラヒラ〜なブラウスだけは調達してきたので、残りの服もそんなテイストで探したら楽勝だった。

ちなみに、昔のフランスの結婚式では、新郎新婦が欲しい物リストを用意し、それを皆でギフトしていたそうである。
しかし、最近の結婚式は、お金を用意することが多いそうだ。
私もメッセージカードと供に、現金を筒んだ。

待ちに待った学校が終わった金曜日。彼女が結婚式をあげる南フランスに向けて出発した。目指す町はとても小さく、彼女の実母が住む実家だった。

なるほど。お母さんに晴れ姿を見せるために、式をその町で挙げるのか。親孝行な娘だなぁ…。

しかし、式場がお城というのがイマイチ謎である。

フランスでの今までの出来事をぼんやり考えつつ、私は片道5時間半の列車旅を終えた。駅を出ると、建物はオレンジ色の屋根。

『ああ、ここは南フランスなんだな。』

駅には、彼女の親友が私を迎えに来てくれていて、車でお城に向かった。

到着したお城は、私が住むロワール川流域のお城と違い、こじんまりしていたが、素敵な雰囲気の由緒正しいお城だった。

城内の中庭

お城には、爵位がある城主がおり、自ら城内を案内をしてくれた。
そして、私はこの場所で彼女が式を挙げる経緯を、初めて知ることとなった。

以前、花嫁のお父さんが、このお城に勤めていたのだ。
しかも、鍛冶職人として。

『お城の鍛冶職人?!それって、おとぎ話に出てくる仕事だよね?!』
と思ったあなた。無論、私もそう思った。

いくらなんでも、メルヘンすぎる設定であろう。
私のお父さんは、お城の鍛冶職人♪

涼しげな中庭

しかし、彼女がそのような環境で育ったからこそ、このようなフランスでも珍しい素敵な結婚式に出来ているのだ。
彼女のお父さんに感謝である。

ちなみに、お城の中には、一般のゲストが泊まれる場所も備わっていた。きっと、ヴァカンスシーズンには、色んな人が泊まりに来るのだろう。
今の時代、爵位だけでは、やっていけない。

城内を見学した後、私も皆と一緒に下準備をし、明日に備えて眠りについた。

宿泊専用コテージ

挙式当日、新郎新婦の親戚一同が続々とお城に集まってきた。
こんなオモシロ結婚式に参加するなんて、ほぼ無いと皆思っているようだった。
その証拠に、老若男女、ここぞとばかりに張り切って登場する。

ある人は騎士の格好、ある人は貴族の格好…。吟遊詩人も居る。
皆さん、お互いのコスを楽しそうに褒めている。

さすが、彼女の一族…。血は争えない。

こんな結婚式、日本ではありえまい。
新郎新婦だけならまだしも、参加者全員が時代衣装必須とは聞いたことがない。
(羨ましい限りである。日本史なら平安推しの私は、十二単なんか着てみたいわ。場所は平等院鳳凰堂とか最高だな。今のところ、私にはその相手もいないので、単なる妄想だが。)

城の周囲には何も無いので、自分が本当に中世に迷い込んだような錯覚に陥る。
そんな中、ドレス姿の花嫁も登場した。

おおーーーーーっっ!!!♡

彼女の衣装に、皆が感心する。
当然だが、通常のウェディングドレスではない。白いローブを纏う、中世のお姫様のような出で立ちである。とても素敵な衣装だった。

白をイメージしたブーケ。

ドレスはもちろん彼女の手作りで、式の前日までチクチク縫っていた。
さすがレイヤー様でもあらせられる。衣装の凝り方が、ハンパではない。

私は「おめでとう!」と、フランス語で声をかけると、彼女はとても幸せそうに、「ありがとう♡」と答えてくれた。

その時、彼女と写した1枚は、私にとっても大事な思い出だ。

旦那様も、そのお父様も、本当にとても良い人で、私も幸せを分けてもらった気がした。

しかし、朝からお昼過ぎまで、特に何かをすることもなく、私達はずっと場内をうろついていた。
そして時折、親戚たちに、とても学校の先生には言えないフランス語を教えてもらっていたりした。

一体、結婚式はいつになったら始まるんだろう…。

お城の裏庭。

夕方になり、ようやく城内の教会にワラワラと人が集まってきた。
日本の披露宴は、おおよそ3時間位だが、もしかしてフランスの結婚式は違うのかかな???

教会で誓いの言葉を述べるため、司祭だけでなく、城主も参加である。
その後は、賛美歌らしい歌などが続き、吟遊詩人たちの歌も披露された。

プロの吟遊詩人たち。

教会での儀式を済ませると、また皆が談笑しに外へと各々戻っていった。

『え?これで終わりなの???』

教会の外に、オードブルらしきものが用意されていたので、私はこの式が立食メインなのかと、勘違いしていた。

『あれ?確かに昨日、私も一緒にテーブルを用意した気がするんだけどなぁ…。』

私は、この結婚式が昼間にあると思い込んでいたのだ。
本番はこれからだったのである。

皆で願いを込めて気球を飛ばす。

夜9時を過ぎた頃、宴が始まった。
私は心の中で、つぶやいた。

『もう夜9時なんだけど、これからフルコース料理を食べるの?!』

ところで、童話に出てくるお城に必要なのは、鍛冶職人だけではない。
お城の登場人物に、料理番は必須であろう。

会場に現れたのは、今どきのイケてるシェフではなく、童話に出てきそうな料理番たちである。

すごすぎる…。目の前に、中世の料理番がいる。

披露宴会場

学生時代、私はヨーロッパの歴史ドラマが好きで、よく見ていた。

あのドラマの王様達も、お城で夜な夜な豪勢なメニューをモリモリ食べていたではないか。
多分、欧米人は胃腸が強いDNAなんだろう。
まあ、ずっと領土争いしてたのだから、食べなくては戦いに勝てまい。

でも、中世の料理って、実際に味はどうなんだろう。やっぱり、現代の方が美味しいような気もするけど…と考えていた。

ところがである。出てきた料理は、どのお皿もとても味が良く、私は驚いた。

新婦お手製の参加者の名前が焼印されてた小箱。中身は宝石イメージのお菓子♡
パイ包み。何包んでたか忘れたけど、美味しい。
とても美味しい鴨のロースト

やはり、城主は庶民と食事が違うのである。お城の料理番は腕が良い。

私は日本では超夜型だが、お酒も入って長旅の疲れが出てきたのか、もう眠くなってきた。
そういえば私、フランスでは超朝型だったー。忘れてたー。

時計は深夜0時を回っている。
そろそろお開きかと思いきや、ここで満を持してウエディングケーキの登場である。
素朴だけど、アイデアが素敵である。

お城の形のウェディングケーキ♡
2口タルトなどなど。
プリンや付け合せの美味しいソースなど。

見た目は地味だが、味が本当に美味しかったので、未だに記憶に残っている。
やはり、お城の料理番は腕が良い。(大事なことなので、2度言う。)

チーズも出たような気もするが、お腹いっぱいなのと、もはや私の頭は回っていなかった。

話が少しそれるが、チーズの話で1つフランス人に言われたことがある。

フランスには、約1500種類ぐらいはあるそうだ。もちろん、フランス人もすべてのチーズを把握してるわけではない。
初めて食べるチーズが、皮まで食べて良いのか判らない場合、とても硬いと感じたら残すそうだ。

なるほど。良いこと教えてもらった。
おそらく、日本のスーパーなどのおなじみのチーズは、皮まで全て美味しく食べられるものが多いだろう。

私もチーズが大好きなので、フランスでは色々ななチーズを試していた。
しかし、たまに「皮が硬いな…」と、思うものに出会うので、この教えは私にとって、ありがたいものだった。

さて、話を戻そう。

その後も、友人たちや親戚の出し物で、披露宴は更に盛り上がる。
「宴もたけなわ」なんて言葉は、おそらくフランスには無い。

そうして、深夜2時。唐突にそれは始まった。

鍛冶職人、料理番と来て、お城で欠かせないのは『舞踏会』である。
舞踏会は言い過ぎかもだが、皆で踊りが始まったのだ。

『皆さん!今、夜中の2時ですよ?!』

欧米では当然にある、ダンスパーティー文化。
私の高校でもダンスの授業はあったが、これとは違うダンスだった。
しかも、踊るのは中世のダンスらしい。

『中世の踊りなんて、現代フランス人が踊れるんかい!!』

大混乱する私に、吟遊詩人が来てステップを教えてくれる。

「難しくないよ、ほらほら、君も一緒に踊って!!!」

あー、踊れるんだね…。さすが、プロ吟遊詩人。格好だけじゃないらしい。
そういえば、この結婚式フツーじゃなかったわ。

お酒を浴びるほど飲んだ上に、皆でくるくるとダンスを踊る。(しかも夜中2時)
さすがに、子供の姿は見えなくなったが、老齢の方々も、まだまだ会場にいらっしゃる。

『もしかして、フランス人だから酔わないのか?!いや、皆さん、もう完全に酔っぱらってるよね?!』

皆で、クルクル廻ること1時間。
眠さも酔いもどこかへふっ飛び、私は謎のテンションに陥っていった。

『まさかとは思うが、皆でこのまま朝まで踊り続けるのだろうか?!この宴に、終わりはあるのかーーーーっっ?!?』


多分、私が戦線を離脱したのは、朝の4時ごろである。
朦朧としながら部屋に戻ってくると、そのままベッドに倒れ込んだ。

私はその時、先生のあの言葉が理解出来たのである。


『月曜日は休んでいいですよw』

追伸:NOTE更新、忘れてました…(T0T)スンマセンスンマセン…






















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