香りを巡る旅|aoi minakami

香りの持つポエジーを求めて、日仏を中心に香りにまつわる場所や人を訪ねる、旅とテキストに…

香りを巡る旅|aoi minakami

香りの持つポエジーを求めて、日仏を中心に香りにまつわる場所や人を訪ねる、旅とテキストによるプロジェクト。 現在は香りの都・南仏グラースでの取材レポートを発信中です。 website : https://levoyageolfactif.studio.site/

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「香りを巡る旅」について (2024)

香りの持つポエジー(詩情をもとめて) 香りを巡る旅は、香りの持つポエジーを求めて、日仏を中心に香りにまつわる場所や人を訪ねる、旅とテキストによるプロジェクトです。 2023年5月にスタートし、序章として調香師へのインタビューや香りに関するエッセイを本noteへ掲載を開始しました。 フラコン(香水瓶)の背後にある文化 プロジェクトの第1期は「フラコン(香水瓶)の背後にある文化」をテーマに、製品としての香水だけでなくそれらが生み出される背景、香料の原料になる花の栽培地、香

    • 香りの都 グラース シティーツアー

      現在「香りを巡る旅」で取材、調査中の南仏グラース。 本noteでは17世紀から香りの都として知られる街の、香水産業の歴史や今を紹介していますが、街のそのものはいったいどんな場所なのか? 今回は写真多めの旧市街シティーツアーを開催します。 ♪ではさっそくスタート ピンクの傘の由来 グラースの通りはピンクの傘で彩られています。 お天気のいい南仏でなぜ?と思いますが、これはグラースを代表する花の一つで、高級香料の原料になるセンチフォリア ローズのピンクに由来しています。

      • 食べて楽しむ南仏花の香り:オレンジフラワー&ローズ

        オレンジフラワー 先日の記事で紹介したネロリオウムを訪れた際、併設のショップでオレンジフラワーのフローラルウォーターを購入した。 フランスへ行った時の楽しみの一つに植物由来のスキンケア商品を探すことがあるが、フローラルーウォーターの原料はビターオレンジの花と水のみの超ナチュラルプロダクト。 ところでネロリオウムのE-shopサイトを見ていると、このフローラルウォーターは化粧だけでなく料理にも使えると書いてあった。 そういばフーガセットなどがあるものな〜思い浮かべた。

        • Suzy Le Helleyによる香水:Acne Studious par FREDRIC MALLE

          昨年の9月にパリで話を聞く機会のあったスージーが手掛けた香水「Acne Studious par FREDRIC MALLE」を初めて試した。 スージー・ル・エレー(Suzy Le Helley)は香料会社大手の仏シムライズ社に在籍する調香師で、昨年インスタグラムを通じて彼女にコンタクトし、バーでお酒を飲みながらのカジュアルな面会が実現した。その時の記事はこちら。 フレデリック・マルとのコラボレーションによるアクネ・ストゥディオス初となる香水が今春発表された際、日本でもW

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        「香りを巡る旅」について (2024)

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        • エッセイ
          13本
        • 現地レポート 2023/24 フランス
          12本
        • インタビュー
          6本

        記事

          Nérolium : 精油〈ネロリ〉の原料 ビターオレンジの生産者組合

          オレンジフラワーの生産者組合 Nérolium ネロリオウムグラース近郊、海辺の街ヴァロリスにある蒸留所跡 標高300メートルほどの丘に沿って位置するグラースから電車でカンヌ方面へ降りていくと、ふいに車窓に飛び込んでくる地中海の鮮やかな青に目を奪われる。カンヌからイタリアとの国境にある街マントンまで、線路は海岸沿いを走り、ニース、モナコなどの有名都市や、いかにも南仏らしい小さな町が点在している。 世界三大映画祭でも知られ、大通りに高級ブティックが並び、ヨットハーバー周辺に

          Nérolium : 精油〈ネロリ〉の原料 ビターオレンジの生産者組合

          花の香りの抽出方法 : 水蒸気蒸留

          水蒸気蒸留とは 植物から香料を得る方法の一つに「水蒸気蒸留」がある。 蒸留とは液体の混合物(液体と液体、または液体と固体など)を沸点の違いを利用して、精製や分離を行う方法で、混合物を加熱して集めた蒸気を冷却し、再び液体に戻して行う。 「水蒸気蒸留」は蒸留の一つで、沸点が高く水に不溶性の物質を水と加熱することで、100度以の水蒸気とともに成分を取り出す手法。 (用語参照:https://www.osaka-yuka.co.jp/technical/info/01/) 蒸留

          花の香りの抽出方法 : 水蒸気蒸留

          花の香りの抽出方法 : 溶剤抽出 (アブソリュート )

          植物から香料を得る方法の一つに「溶剤抽出」がある。 前回紹介した「アンフルラージュ」に変わり、「溶剤抽出」による「アブソリュート 」の製造は、グラースでは19世紀末から急速に広まった。 *本シリーズでは天然香料の製造法を、香料植物の栽培と香料、香り製品の製造で発展した南仏グラースの歴史とともに紹介する。 溶剤抽出とは 石油化学の発達と共に登場した「溶剤抽出」は、ヘキサンなどの揮発性有機溶剤に植物を浸したあと、溶剤を揮発させ、香り成分を含んだ「コンクリート」と呼ばれるワック

          花の香りの抽出方法 : 溶剤抽出 (アブソリュート )

          花の香りの抽出方法 : アンフルラージュ

          植物から香り成分を抽出し、香料を得る方法のひとつに「アンフルラージュ」がある。 これは油脂に香り分子を吸着させる製法で、古代エジプトなど古くから用いられていたが、香水産業が盛んな南仏グラースで18世紀半ば以降、盛んに行われた。 アンフルラージュには温めたオリーブオイルなどリキッド状の油を用いる「ホットアンフルラージュ(温浸法やマセラーションとも呼ばれる)」と、バーム状の獣脂を用いる「コールドアンフルラージュ(冷浸法)」がある。今日単に「アンフルラージュ」という場合は、冷浸

          花の香りの抽出方法 : アンフルラージュ

          墨の香り

          墨の香りを心地よく感じるようになったのはいつからだろうか。 思い起こせば墨をすった記憶は小学校の授業で止まっている。私は全く書道向きではなかった。道具は重いし、墨が服にはねると絶対にとれないし、筆の運びやお手本通りに書くのも苦手だったし… この頃から墨の香りがどんなものかは把握していたはずだが、別段いい匂いとも嫌な匂いとも思っていなかった。一方、線香、バラやラベンダーのポプリの香りはなどはきつすぎて苦手だった。 大学生の頃、コム・デ・ギャルソンのお店で「2」という香水を

          捉えられない ; 「香り」という言語

          「季節の香り」というエッセイの中で、それまで意識していなかった身の回りの香りを感じ取れるようになってうれしい、と書いたが、香ってもうまく把握できないというか、捉えられない香り…というのもある。 その一つがムスクで、「石けんの香り」でも触れたが、何度香ってもいまひとつピンとこない。とある調香師のアトリエでムスクの合成香料をかがせてもらった時は、希釈されているためか上手く感じ取れなかった。また京都にある江戸時代から続くお香のお店で、干からびたジャコウ鹿の香嚢(ここから得る分泌物

          捉えられない ; 「香り」という言語

          ないのが好み, あるのが好み?

          こないだ友人の一人からラインがあって、その内容がとても素敵だった。 道を歩いていると、前を歩いている外国人から香水の匂いが漂ってきて、 フランスに留学していた頃を思い出したそう。 「15年前くらい前なのに、その時のホームシックで寂しい気持ちと、フランスに来られて誇らしい気持ちと、色々な思いが駆け巡りました」とあった。 香りによって過去が思い起こされる現象は「プルースト効果」と呼ばれ、これはマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」で、マドレーヌの香りが引き金となって

          ないのが好み, あるのが好み?

          シリーズ紹介: 調香師へのインタビュー

          「香りを巡る旅」調香師へのインタビュー紹介 「香りを巡る旅」とは? 「香りを巡る旅」は香りの持つポエジーを求めて、日仏を中心に香りにまつわる場所や人を訪ねる、旅とテキストによるプロジェクトです。 現在は取材をもとにしたインタビュー、現地レポート、香りへの考察を綴ったエッセイなどを本noteに掲載しています。 調香師へのインタビュー 本プロジェクトでは調香師のへのインタビューも配信しています。 調香師は香料をブレンドして香りを作る仕事で、天然・合成合わせて1000種類以

          シリーズ紹介: 調香師へのインタビュー

          シリーズ紹介: 【現地レポート】香りの都・グラース①~⑤

          「香りを巡る旅」フランス取材による現地レポート紹介 「香りを巡る旅」とは? 「香りを巡る旅」は香りの持つポエジーを求めて、日仏を中心に香りにまつわる場所や人を訪ねる、旅とテキストによるプロジェクトです。 2023年にスタートし、同年年9月と24年5月に香りの都として知られる、南仏のグラースを中心に取材しました。 香水でなく「香り」としたのは、フレグランスなど香り製品の材料になる香料や、さらにその原料である植物などの自然にもフォーカスしているからです。 そのため調査旅行では

          シリーズ紹介: 【現地レポート】香りの都・グラース①~⑤

          季節の香り

          ここ1、2年、風の中に、あるいは空気の中に漂っている植物の香りを敏感に感じるようになった。 数年前に「香り」を意識するようになってから、身近にある自然や花により注意を向けるようにはなっていたが、やはり去年「香りを巡る旅」を始めてからの変化というのはとても大きい。 例えば、少し前はいたるところでクチナシ(ガーデニア)の花が匂いを放っていた。甘い中に、青りんごのような青さを含んだ香りは、雨上がり特にはっきりと感じることができる。 離れていてもわかる強い香りなのに、去年はじめて道

          調香師へのインタビュー記事 2選

          こんにちは。「香りを巡る旅」を運営しているaoiです。 今年の5月にプロジェクトは1周年を迎えました。 香料、香料の原料となる植物、それらを栽培する産地など、プロジェクトに含まれる「香り」の幅は広いですが、その中の一つに「調香」があり調香師の方々にもインタビューしてきました。 これまで4名の調香師のへインタビュー記事を配信しましたが、最近、初期のインタビューを見直して、少し手直ししました。 記事の構成がより明確になり、流れも以前よりスムーズに読んでいただけると思います。ぜ

          調香師へのインタビュー記事 2選

          グラースのジャスミン農園再訪

          2023年の現地レポート⑤で紹介した、アンとモーリンの農園を2024年5月に再訪した。 農園再訪 火曜朝9:00、グラース郊外プラスカシエーにある、香料植物を栽培する農園ドメーヌ・ドゥ・マノンの一般開放ツアーを訪れたあと、雨の中、田舎の一本道の車道をとぼとぼと20分ほど歩いて辿りついた。 勝手に門をくぐって、見覚えのある畑の脇を下っていくと、石造りの二階建の建物が現れる。確か築100年近いと聞いた気がするが、一階の庭に面した台所は彼ら自身によるリフォームが済んでおり、広

          グラースのジャスミン農園再訪