Introduction : 香りと私
香りと自分の関係について、簡潔に言い表すのは難しい。
おそらく多くの人がそうであったように、子供の頃、香水、ハーブ、お香など、芳香と呼ばれるものが苦手だった。
ぜんそく気味だった弟のために父親が買ってきたユーカリの精油、それに付随する形で増えていったラベンダーなどのアロマオイル、田舎の家に立ち込めた線香の束が発する沈香や白檀の強烈な匂い、家の外でかぐ誰かの香水の香りなど、どれも昔の自分にはきつすぎて、顔をしかめた。
そういうものをいいなと思い始めるのは二十代のはじめから半