ないのが好み, あるのが好み?
こないだ友人の一人からラインがあって、その内容がとても素敵だった。
道を歩いていると、前を歩いている外国人から香水の匂いが漂ってきて、
フランスに留学していた頃を思い出したそう。
「15年前くらい前なのに、その時のホームシックで寂しい気持ちと、フランスに来られて誇らしい気持ちと、色々な思いが駆け巡りました」とあった。
香りによって過去が思い起こされる現象は「プルースト効果」と呼ばれ、これはマルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」で、マドレーヌの香りが引き金となって古い記憶が蘇ったことが由来となっている。このラインを読んで香りはこんな風に景色や思い出だけでなく、当時の感情をも克明に思い出させるのだな、外国にいる時の高揚感と心細さが表現されていて、素敵だな文章だなと思った。そして私まで留学当時を思い出し、友人の思いにシンクロしてしまった。
香りのプロジェクトはじめてから、まわりの人が香りについて色々と語ってくれることが多く、どの話も私自身は考えてもみなかったことが多くて、興味深い。
こないだも別の友人と話していて、彼女が言うには「イケメンやかっこいい人は無臭、もしくはいい匂いがする」のだそう。
この「いい匂い」というのは、香水の匂いでなく、その人自身が持っている匂いのことで、かっこいい人からは嫌な匂いがしない、だから日本人にとっては「匂いがしない」ことはいいことなのだと言っていた。
確かに日本人は「清潔」を好んで、香りもきついものはあまり身につけない。加えてその話を聞いてはっとしたのが、「かっこいい、イケメン」を「好感度」という言葉に置き換えてみると、恋人や家族に限らず、近い距離で接してもあまり気にならない異性というのはいる。カウンターで並んで座るとか、一台のパソコンで一緒に作業する、とか。そういった距離感も無意識にその人の持つ「匂い」で判別しているのかもしれない。(2度離婚している土屋アンナは別れる間際になると、その人の匂いまでが嫌になるとテレビで語っていた)
さらに彼女は「でもフランスでは『香りがあることはいいこと』と思われている」と続けた。
彼女もフランスに留学経験があり、今も日本でフランス人と働いているのだが、例えば昔、フランスでは化粧気のない女の人でも香水を身につけていることに衝撃をうけたそう。身支度のなかで化粧やファッションよりも香りの優先度が高いのがフランスだと主張するが、確かに男女限らずどこのお宅へお邪魔しても洗面台には必ず複数の香水が並んでいたのを思い出す。
もう一つ面白かったのが、彼女が職場(日本)で、トイレに置く無臭タイプの消臭スプレーを買った話。フランス人の上司から「これいくらプッシュしても香りが出ないけど、不良品じゃない?」と言われ、これは消臭に特化した製品だと説明したという。
彼にとっては匂いを消すより、香りがある方が重要で、「香りがあるというのはフランス人にとってはいいことなんだと思う」と結論づけていた。なるほど。
ただ、フランスでも最近だと若い人などは日常的に香水を用いない人も多いし、香りも強すぎるものより、より自然なものが好まれているようにも思う。
私自身は最近、墨、畳(イグサ)、樟脳の香りなどを心地よく感じている。日本の生活の中に昔からある、清潔だけど特徴のある香りたちだ。
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