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平和なのに「捲土重来」「武運長久」が必要なワケ

「おだやかなお正月」を大切にする日本で、新年に「捲土重来」だの「武運長久」とかを期する人はそう多くないと思います。

元来、日本人は安穏とした生活の中に平和を見出す民族です。

しかし、今はグローバルに世界がつながりリアルタイムで連動するシステムになっていて、毎日が変化と選択の連続です。場合によっては条件反射的な対応が求められる環境の中で、変化に一呼吸もニ呼吸も置く日本は、「成長」と引き換えに独自の価値観とローカルシステムを守り続けようとしています。

Appleのスティーブ・ジョブズは若者たちに向かって"Stay hungry, be foolish" と言いました。もう15、6年前の話です。日本の若者はこの言葉をどう受け止めたでしょうか。

日本は年寄りも若者も、小さい不満はたくさん持っていますが、おおむね現状に満足しています。そして、自らがエンジンとなって世の中を変えていこうといった気概は明確には見て取れません。

たぶん1980年代に日本が戦後復興のピークに達して以来、ずっとこの『不思議な安心感』が日本を支配しています。元々、環境を所与のものとして受け入れたり、体制に歯向かうことを避ける国民性も関係しています。

しかし足元を見ると、見事に組織化された日本のビジネス構造も、労働力人口という水分が急速に足りなくなっています。そして上空を見ると、日本より後ろを走っていた新興国が大きな雲となって、光をさえぎっています。

植物と同様に社会も、水と光がなければ成長は枯渇します。

戦後のベビーブーマーと呼ばれる世代が頑張って、今の日本を築いたことは間違いありません。彼らは子ども世代に多くの資産を残してくれています。生まれながらに資産を受け継げるポジションにいる子ども世代は、『不思議な安心感』の中でなかなかハングリーにもおバカにもなれません。

そんな世代にとって「Stay hungry, be foolish」は、どこかの誰かの話なのでしょうか。

いえいえ。それは「現状に満足してはいけない」という、現代社会への警鐘です。すぐに安心してしまう日本人にこそ必要な言葉です。

同調圧力が強い日本で異論を主張したり唐突な変化は嫌われますが、新しいムーブメントは、必ずしも大きな反動や爆発から生まれるわけではありません。

 サブカルチャーのように社会の隅っこに生まれて、ツル〜ッと社会構造に巻き付いていく。日本の大衆文化が得意とするスタイルがあります。

「失敗してないけど捲土重来」「戦いがすべてじゃないけど武運長久」。

今年は子どもたちと、そんなアプローチを「明るく、軽く、しなやかに」試してみたいと思っています。

2022年 元旦 

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