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#フジファブリック

『歌者』の話

フジファブリックの山内総一郎さんがソロ名義でリリースしたアルバム『歌者』を聴いた。

雑誌『音楽と人』のインタビューでも話していたけれど、ひとつひとつの曲にかなりはっきりしたストーリーがあって、短編集を読んだような感覚になる。実際、曲を作るのにあたってかなり詳細にプロットを立てたという。

誰もいないオフィス、昼下がりの街角、雨上がりの大通り。卒業式の後の教室、自転車で駆け上る坂道。早朝の地下鉄、

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2021.12.24

2021.12.24

 今年も暮れだな、と淡々と思うのと同時に、冬至を過ぎてこれからは1日ごとに昼が長くなっていくことに少しほっとしたりもしている。1年が巡ったなと実感する。

 季節の移り変わりを思う時、聴きたくなるのはフジファブリックの音楽だ。「桜の季節」に始まり「陽炎」「赤黄色の金木犀」「銀河」と続く通称「四季盤」は、フジファブリックの音楽の叙情性を象徴するような作品だが、彼らには1曲の中で四季が巡る歌もある。

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誕生月の雑記と音楽雑感:年輪と周回軌道

誕生月の雑記と音楽雑感:年輪と周回軌道

 まだ日中は陽射しが強いが、秋分の日ともなると風はからりと乾いて気持ちが良い。陽が落ちるのが随分と早くなったな、と思っているうちに秋分の日も過ぎた。

 夏が終わって空気の匂いも変わるような気のするこの時期は、1年の中でもとりわけ好きだ。9月生まれだから余計にかもしれない。と言いつつ、たいてい自分の誕生日の頃はまだ残暑が厳しくて、それから1、2週間ほどたつとようやく秋らしさが感じられるようになるの

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2020.12.24

 好きな音楽、というのには収まらないような曲がいくつかあって、その中のひとつに、フジファブリックの「バウムクーヘン」がある。

 12月24日にこの曲を聴くようになって、何年目になるんだったか。
 フジファブリックというバンドのことを知ったのは、彼がいなくなった後だいぶたってからだ。

 この曲が収録されているアルバム「CHRONICLE」は、すごく私小説的な、あるいは自伝とかドキュメンタリーとか

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