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アイする自宅警備隊 【短編小説】扉⑥

キーワードでつないでいく連載短編小説。
小説と小説をつなぐのは何かのキーワードと人物です。
6話目のキーワードは、ハムスター、仕事、そして前作からの愛です。
基本1記事読み切りで、次の主人公にバトンを渡していきます。
お楽しみください。

となりの扉⑥


「ちょっと通りにくいと思いますから、いくらちゃんのケース縦に持ってもらっていいですか?」

外への出入り口の方で、
ガタガタ音がする。


そっちの方は危険なのに。

そう思いながら、真っ暗な部屋の中で、
薄明かりに照らされる入り口の様子を見る。

様子を確認して、
安全を守る。

それは私にとって、とても大事な仕事だ。

私の大事な楓を守るためには、
日夜部屋の安全確認はおこたれない。


声の感じからして、1人は同居人の楓で間違えない。


ただ今夜は1人ではないようだ。


そういえば、日の高いうちに楓から何か言われた気がする。

ソファの上で、シッポをふりながら考える。

こんなことは私っぽくない気もするけど、
あの時は
楓の出してくれた美味しいご飯のせいで
お腹がいっぱいで
意識がゆるやかになりはじめていた。





「2、3日お友達をあずかることにしたからね?
ちょっと小さいけど、大切な大切なお友達だから、いじめたりしないでね?」

食後の私をなでながら、
いつものように優しい声で楓はそう話した。

ニャーンと軽くお返事をする。

仕事場のお友達から、一緒に暮らしてるお友達のハムスターを預かってもらえないか頼まれたと言っていた。

「だから、今日は練習ね? 仲良くする練習」


いつにも増して、私のことを子供扱いしてくる。
もう2年も一緒にいるのに、子供扱いだ。

気持ち的にも体力的にも大人なつもりだ。
ただちょっと楓より小さめなだけ。
どうやったら、あんなに大きくなれるんだろう。


私には仕事がある。
楓の部屋の安全を守る仕事と楓に惜しみない愛情を与える仕事。
大切な任務だ。


たしかに、楓の方が体は大きい、ご飯も用意してくれている。


ただ素早さは、楓には負けてない。

いつも先回りして、先導しているんだから。




「しらたま、ただいま」

可愛い楓の声。

「この子が、しらたまちゃん?」

なにやらケースを抱えながら、
楓の後ろからもう1人入ってきた。

誰?!

とっさの判断で、部屋の奥に逃げ込む。

「逃げられちゃった」

「そっとしといてあげてください」

楓が優しく声をかける。

優しい楓と、とても大きなお友達?


だが、しばらくたつと
大きなお友達はいなくなった。


「しらたま? しばらく一緒に暮らすいくらちゃんだよ? 
小さいから気になるかもしれないけど、あっちのお部屋にいるから、…なるべく気にしないでね?」
この子が、ハムスターのいくら。

とても不思議な気分。
カサカサという音以外には、小さな丸いものしか見えない。

それは、
小さな小さなハムスターと
白くてふわふわのしらたまの
はじめての出会いだった。

sub title ふわふわ猫のしらたま

🔚


前作↓ 飼い主楓のお話

↓ハムスターの飼い主のお話

続き↓ 楓の友達のお話


ペット系専門学校に通ってたことがあるくらいには、動物好きなので、たびたび出てくると思います。

どこまで続けようかな?とは思ってるけど。

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