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現実を生きるソ・ダルミの潔さ『スタートアップ夢の扉』

韓国ドラマ「スタートアップ 夢の扉」を完走し、すっかりハン・ジピョン推しとなったものの、報われなかった彼の恋に心を痛めている私。


そもそもジピョンはソ・ダルミが恋い焦がれた初恋の人なのに、彼女はなぜジピョンではなくドサンに惹かれたのか。

それについては、ジピョンが「なぜダルミの心を掴むことができなかったか」という視点で思うところをnoteに書いた。(それがこちらの記事↓)


一方で、ダルミの気持ちもわからなくはない。
視聴者側からすればジピョンの行動の意味や彼の気持ちが全て見えるけど、ダルミにはそれが見えてないわけで。(要はダルミに気持ちをキチンと伝えないジピョンが悪い)

ともあれ、ジピョンのことは(推しだけど)ちょっとヨコに置いておき、ここではダルミの気持ちを汲みつつ「スタートアップ 夢の扉」について語ってみたい。

「初恋」という聖域

「初恋」
特別な響きのあるこの言葉。

ダルミにとってももちろんそうだ。
辛い時に文通で自分を支えてくれた初恋の人「ナム・ドサン」(実はジピョン)への想いは彼女の心の中で大切に温められてきた。

文通で心を通わせた「ナム・ドサン」は彼女にとって理想の男に仕立てられていったはず。なぜなら会ったことがないというのは想像力をより掻き立てるもの。恋に恋する彼女にとって、空想のナム・ドサンは彼女の寂しさを癒すことのできる特別な存在だった。

ともあれ、こんな風に少女が恋に恋するのはよくあることで思い出で終わればなんてことはなかった。

が、青天の霹靂。

永遠の「理想の男」で終わるはずだった初恋の相手がダルミの前に現れたのだ。
そりゃ気分も上がるし、彼女が「これは運命!」と思うのも無理はない。

でも、それは運命などではなくジピョンとハルモニ、そして本物のナム・ドサンの協力あっての演出。しかしダルミはそれを知るよしもない。



一方で、成功者としてダルミの前に現れたジピョンは彼女にとっては遠い存在。
年上でカッコよく、おまけに紳士。資産も地位も人が羨むものはなんでも持っている。

ダルミからすれば、ジピョンは自分とは違う世界で生きている人間に見えたはず。
まあ、彼が本当の文通相手とは知らないのだから仕方がないが、いずれにしてもダルミがジピョンを恋愛対象として意識する要素は初めからなかった。


そんなことよりも、ダルミにとっての一大事件は想い続けたナム・ドサンと会えたこと。
目の前に現れた彼が偽物(本物のナム・ドサンだけど、文通相手ではないという意味で)かもしれないなどと疑うことはもちろんなく、突如訪れた幸運を素直に喜ぶダルミ。

当初、ナム・ドサンは成功者のふりをしていたので、ダルミからすれば眩しく遠い存在だったかもしれない。でも二人には「文通」という共通の思い出がある。それに何より初恋の相手だ。ダルミが惹かれないわけがない。

こうして、彼女にとっての「初恋」という聖域は、ついに現実のものとなったのだ。

理想の恋人は「共に成長できる男」

さて、人は恋人に何を求めるだろうか。
人それぞれ求めるものは違うけど、起業を決意するような前向きでパワー全開のダルミにとっては、優しい男や甘えさせてくれる男、または頼りになる男というだけでは物足りないに違いない。

そう、彼女が求めていたのは人生を生きる上で必要なパートナー。
ズバリ「自分と共に成長できる男」だった。

そう言う意味で、ドサンは適任。
(残念ながらジピョンは既に成功しているので、ここでも対象外の憂き目に…)

ドサンは純粋で不器用な男。
でもプログラマーとしての確かな腕があり、「成功したいという」情熱も持ち合わせている。
そして何より「高層階に行きたい」と、野心と向上心を持つダルミを「何があっても信じる」と言ってくれる。

こんな相手、そうそう出会えるものではない。
それに、何度も言うが、恋い焦がれた初恋の相手(本当は違うけど)でもあるのだ。ダルミが恋に落ちるのはある意味必然。

しかし、初恋の余韻で始まったこの恋は、ダルミにとってすぐに現実の恋に切り替わる。実際のところ、大人になって出会ったドサンは文通をしていた頃の彼とは別人のように感じることもある。

しかし、彼女にとってそれは重要ではなかった。
「起業して成功する」という大きな決意の前では、目の前にある現実の方が重要だったから。一人で起業できるわけでないダルミにってドサンは必要なパートナーでもあるのだ。

よく言われることだけど、女は男より数倍現実的。
過去より今。
思い出と現実を天秤にかけたら、迷わず現実を選ぶのは男よりも女の方なんじゃないかな、と思う。

現実を生きるダルミの潔さ

ある時までは順風満帆だったダルミとドサンの恋。
しかし、嘘はバレるもの。

ダルミはついにドサンが本当の文通相手でなかったということを知る。
そして本当の文通相手はなんと自分をいつも見守ってくれたジピョンだったという驚きの事実に衝撃を受ける。

初恋の延長でドサンを好きになったのにも関わらず、彼は初恋の相手ではなかった。好きになってしまった人が、「実は別人でした」と今更言われても取り返しがつかない。

ダルミはここで初めて、ジピョンがなぜいつも自分を影ながら支えてくれたかも理解する。しかし、彼らを簡単には許せない。(そりゃそうだ)

自分の気持ちを整理するのに時間を要するダルミだが、ドサンが渡米するしかない状況に陥ってしまい、「行かない」と駄々をこねるドサンに自分から別れを告げる。

ダルミにとってこの決断は本当に辛かったはず。
信じていた人たちの嘘によって心がズタボロなだけでなく、恋人も仕事も同時に失った。彼女の心はきっと空っぽになったに違いない。

しかしこの決断をしたダルミは尊い。
泣いて追いすがる女ではないところが、そして何より感情に流されるだけでなく、常に前を向き、潔く現実的な選択ができるところが彼女の魅力でもあるからだ。



そして、3年の月日が流れダルミは更にパワーアップする。
韓国に戻ってきたドサンにを引き抜くためになりふり構わず行動する。

もう恋に恋している女の姿はどこにもない。
CEOとしての責任、会社のためにすべきこと、そして現実をまっすぐに見据えている。ダルミの人生のステージは、ドサンとの別れを経験した後、大きく変化したのだ。

さて、ダルミの人生が動き出したその始まりは「ナム・ドサン」から。
文通相手ではなかったけど、彼との出会いから全てが始まった。
そしてそれまでの自分を捨て、痛みを伴いながらも立ち止まらず行動したことが彼女を成長させた。

地図を持たず航海に出るのも悪くない



これは、ドサンがダルミと初めて出会った後つぶやいた言葉だ。
ダルミもドサンと同じように感じていたはず。

一方、経験豊富な人生の先輩、ジピョンはこう言う。

地図を持たず船に乗ったら死んでしまう


しかし、サンフランシスコから戻り成長を遂げたドサンは、確信をもってジピョンに告げる。

"地図なき航海"
その航海は最高だった
失敗したが後悔はない。当時も今も、これからも



ドサンは3年前、ダルミと共に地図なき航海をしてきた。
その経験が彼とダルミの人間としての、そして起業家としての礎となった。

そしてドサンは断言する。

分かってます
地図を持たずに発てば 死ぬことも
でも 生き延びる可能性もあります

そんな人たちが道を開く


自分たちを信じ、情熱おもむくままに実行した「地図なき航海」 がドサンとダルミの絆を深めただけでなく、それが二人の血肉となる経験、そして思い出になった。
それは彼らにとっての共通体験。つまりは歴史だ。
この歴史があるからこそ、再会した二人はふたたび気持ちを重ねることができた。



姉インジェと共に会社を成長させたダルミと、サンフランシスコで実力を確かなものにしたドサン。
彼らはまだまだ成長するだろうし変化していくに違いない。
地図なき航海の果てにどんな景色を見ることができるのだろうか。

「そんな人たちが道を開く」


守りに入るよりも挑む姿勢。
「スタートアップ 」らしい名言だと思う。


*最後に、どうでもいいことだけど、個人的には短髪のドサンよりもボサボサ髪のオタクな素朴青年ドサンが好みです。

トップ画像:tvN「スタートアップ 夢の扉」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/startup

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