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リ・ジョンヒョクとユン・セリ 「束の間のさめない夢」

最近、韓国語の勉強として「愛の不時着」のセリフをLLN(Language Learning with Netflix)を使って学習している。

でもお気に入りの場面になるとついつい見入ってしまい、気がつくと物語に引き込まれて泣いていたり。
初観から数ヶ月経った今でも、私の「愛の不時着」への愛はまだまだ健在なのだ。

さて、今日の教材は「第12話」。
このエピソードでは、リ・ジョンヒョクがそれまで見せたことのない一面を垣間見ることができる。

北朝鮮でのリ・ジョンヒョクは、優秀な軍人であり、部下に信頼される中隊長。
無口で無愛想だけど頼りになる男だ。

でもソウルでの彼は少し違う。
中隊長としてでも総政治局長の息子としてでもなく、ユン・セリに恋するひとりの男として彼女の前に存在している。

この第12話の中でリ・ジョンヒョクの新たな一面を象徴する二つの場面がこちら。

守ってくれる男から守りたくなる男へ

ユン・セリの家でひとりお留守番のリ・ジョンヒョクは、対戦型ゲームにハマる。しかし「アルハンブラ宮殿の思い出(ヒョンビン主演のドラマ)」のテーマ曲をお供に戦うも、あっさりと負けてしまう。

許さん… "血のにじむ努力" め…


悔しさのあまり整ったその顔を歪めてつぶやくが、実は対戦相手の「血のにじむ努力」は第5中隊の部下ウンドン。リ・ジョンヒョクがその屈辱を知るのはもう少し先のこと。

それはそうと、ゲームに負けて悔しがっている(かわいい)リ・ジョンヒョクと、北朝鮮でのクールな彼とのギャップにすっかり参ってしまう。


また、ソウルではユン・セリとリ・ジョンヒョクの立場が逆転し、リ・ジョンヒョクがユン・セリに管理されている。

その関係はまるで母と息子のようだ。

ゲームアイテムを買いすぎてばつが悪い表情。
ゲームのログアウトを迫られた時の「ママに怒られちゃった」的な顔。
外出を禁止された時の膨れっ面。
そして、インターネットに子供用の制限をかけられたり時の懇願の行動。


これら全ては、かわいいを通り越して「尊い」の域だ。
とにかく、今まで見たことのないリ・ジョンヒョクがそこにいる。

北朝鮮ではユン・セリを諭していたリ・ジョンヒョクが、ソウルでは逆にユン・セリに諭されているという可笑しみ。
そしてそれに素直に従う彼の姿にキュンとしない視聴者はいないはず。


束の間のさめない夢

静かな夜。

ユン・セリの家で二人だけで飲むお酒。

「酔った」とつぶやくユン・セリに、軍人の鎧を脱いだリ・ジョンヒョクは、いつになく素直に自分の気持ちを打ち明ける。

北に帰りたくない  帰るのがイヤだ
君と ここにいたい

ここで 君と結婚して 君に似た子供もほしい


悲しいけれど、これは実現することのない望み。
彼は背負っているものを捨てることはできないし、「南で暮らしたい」なんて、北では口にすることさえ許されない。


でも、ここはソウル。安全な場所にいて、ユン・セリはお酒に酔っている。そしてこの空間には二人だけ。今しか言えない。だからこそ、口に出して伝えてみたい。


見てみたい
君に白髪が生えて シワもできて 老いてゆく姿を

きれいだろうな


初めて「愛の不時着」を鑑賞した時、この言葉を聞いて思わず涙が出てしまったことを思い出す。
もちろん、ユン・セリも涙ぐんでいる。

それはそうだろう。
だってこの言葉はどんな愛の告白より心に響く。


たいていの女は、年々自分の若さが失われていくことに少なからず恐れを抱いている。でも、愛する男が「その姿を見てみたい」と言ってくれる。

そして「きれいだろうな」という言葉。
ユン・セリが老いていく時間に対する「敬意」を感じる。
時を重ねる意味と価値をリ・ジョンヒョクは理解しているのだ。
それにこれは「君とずっとそばにいたい」という切実なる告白でもある。


泣くのを我慢しながらユン・セリは言う。

見たければ  ずっと私のそばにいてくれないと


力なく微笑みながら、「そうだな」と返すリ・ジョンヒョク。

リ・ジョンヒョクもユン・セリも、それが叶わぬ夢だとわかっている。
でも、まるでそれが実現する未来であるかのように語り合う。

そんな二人がせつなすぎて、泣けてくる。というか、また泣いた。



このあと、彼らは第5中隊の隊員たちと合流することになる。

だから二人きりのこの時間はリ・ジョンヒョクとユン・セリにとってすごく貴重。そして、今まで口に出せなかった未来の夢を初めて語り合った。

叶わぬ夢であるそれは、二人にとって、束の間のさめない夢だった。

スウェット姿でお酒を飲みながらくつろぐリ・ジョンヒョクの姿が今も目に焼きついてる。それまで見せなかった「素」の彼が、胸に秘めた自分の気持ちを初めて率直に語った。
その後に起きる悲しい出来事(ユン・セリが銃で撃たれ、リ・ジョンヒョクは北へ帰る)を知っているだけに、この場面の温かさとせつなさがより一層心に残るのだ。

トップ画像:tvN「愛の不時着」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/cloy


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