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星降る夜に〜unknown/普通ではないことこそ普通の貴島Pの世界

今更ですが、2023年冬期のドラマは自分的に豊作でした。
その中で、最推しをひとつと言われれば、悩みますが「星降る夜に」をあげます。
理由は、初めの期待感を大分上回る出来だったということ。
なんせ、視聴動機は推しの千葉雄大が出てるから、でしかなかったから。

「星降る夜に」は一星をどう描いたか

さて、「星降る夜に」を、モーニングワーク(喪の仕事・グリーフケアとも言われます)という切り口で見るもよし。
24時間闘い働く女子と年下やんちゃ癒し系男子とのヒーリング恋愛ものとしてみるもよし(実際、一星には癒された)。
なのですが、特に秀逸だな、と思ったのは、北村匠海さん演じる生まれつき聴覚を持たない「一星」描かれ方でした。

このドラマを見ていて、視聴者である私には、一星の耳が聞こえないということが、それほど大きな障壁になっているとは感じられませんでした。
もちろん、それを狙って作っているのでしょう。

「ええ!?耳が聞こえないんだ!!」なんていう大袈裟なリアクションをする人は出てこない。
一星は、手話だけでなくipadや音声変換アプリを駆使してコミュニケーションをとるし、
一星の周りの人も、同じく筆談、スマホ、アプリを使ってコミュニケーションをとる。
もっと一星と話したくって、手話を学びに行く。
当たり前のように、みな自然にそれをやっている。
聞こえないことにはあんまり困ってないよね、この人たち。

「普通ではない」ことって「普通だよね」

もちろん、ひとと違うことへの痛みを一星が感じていないわけではない。
けれど、ひとと違う(普通ではない)という痛みは、登場人物全てが抱えている痛みでもあり、一星だけの特別な悩みにはしていない。

みんな、「普通ではない」自分に痛みを感じているよね。
でも、それってとっても「普通のことだよね」
と、誰のどんな人生も肯定するメッセージが、観ている自分のことも間接的に肯定してくれる。
キュッと胸が締め付けられつつ、じんわりほぐれて癒されていく感覚に包まれる作品でした。

貴島彩理プロデューサーの天然

本作のプロデューサーは、代表作「おっさんずラブ」で知られている貴島彩理P。
彼女の作るドラマ世界には、共通して「多様性」「相違性」を「みんな違ってみんないい」どころか、その違いすら当たり前にノーマルに自然に捉えている空気が流れています。
「多様性」なんて言葉を使うことすらなんだか大仰でごめんなさいって感じ。

「おっさんずラブ」「にじいろカルテ」「星降る夜に」共通して、どんな人のどんな人生も肯定する世界観。
それを「優しさ」というとベタすぎてそぐわないほどに、自然なものとして表現している。

違いこそ、当たり前…なんなら、無意識。
多分、貴島Pって天然でダーバーシティー&インクルージョンなんだと思う。
呼吸するように違いを受容してるでしょ、この方!
新人類!ニュータイプ!(古っ)
(いや、だからこそ、実際のところはそうでないものと彼女自身戦っていて、あえて描いているとは思うのだけれど)

unknownで見せてくれるのは異種愛?

そんな貴島Pが次に見せてくれるのは、あれから5年、
「おっさんずラブ」の座組で作る「unknown」
高畑充希ちゃんは「吸血鬼」とか。
ときめきトゥナイト!?と、世代的には思ってしまうのだが、サスペンスでミステリーであるらしい。
しかし、監督が瑠東監督、脚本徳尾浩司氏、主演田中圭でただのサスペンスであるはずがない…と見ている。

すでに、unknownでも透けて見える「普通じゃない」ことへの葛藤。
お次はどんなふうに料理されているのか、
全く普通じゃない自分としては、期待感高まるばかりです。


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