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小説家になりたかった。

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作品集。
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記事一覧

【小説】もう少しだけ

【小説】もう少しだけ

花の枝に顔を寄せる彼女を見るとまるで世界がピンクに色づいたようだった。

コンテスト用の絵のモデルをお願いしたら快く承諾してくれた私の友人。
彼女の写真に撮ってから取り組もうと思っていたが、その美しさはカメラに収まりきらない。

その柔らかさの伝わる唇はとても魅力的で。
美しく、柔らかで。

こう言うのを世の男はエロいとか言うのだろうか。
それはあまりにも言葉が足りていないなと思う。
それくらい、

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【小説】なんやお前。

我が家の猫は撫でられるのが好き。
撫でるのをやめるとこの顔。

「なんで止めるの。」

とでも言いたげ。
憎たらしくて可愛い。

あとどれくらいこの可愛い顔が見られるのだろう。
君ももうお年寄りだから、もしかしたらもうすぐ終わってしまうのだろうか。

液体のようなニャンコを抱き上げる。

近づく別れは不安になる。
でももう離れることもできない。

「ずっと一緒だよ」

もふもふの体に顔を埋めながら

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【小説】まどろみ。

【小説】まどろみ。

ふと目を覚ますと、目の前に彼の顔があった。

もう付き合って2年が来ようとしている年上の彼。
話が下手で単調なことしか言えないコミュ障の私と付き合おうという杞憂な人。

彼を愛しいとは思うけど、私が恋愛対象になる彼の頭の中は理解できない。

まあ、それを言ったら、私は男が好きだから女を好きな気持ち全般を私は理解できないのだけど。

異性が好きな男性より同性が好きな男性との方が、男を好きというフィー

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【小説】独身一人暮らしにて。

【小説】独身一人暮らしにて。

初の一人暮らし。
感想。

「家事って大変」

マルチタスクすぎる。
細かすぎる。
多すぎる。
人手不足すぎる(1人だからね)。
思ってるより時間かかりすぎる。
できてないと不便すぎる。

洗った食器がヌルつくと、
調理済みのものが美味しくないと、
洗濯物が乾いてないと、
ゴミを出し忘れると、
単純にキレそう。

でも、経験してみて、
机片付いてると料理しやすいとか、
脱ぐ時に洗濯ネットに入れ済だ

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【小説】梅干し

【小説】梅干し

我が家では酸っぱい梅干しが当たり前。
しょっぱすぎない、シソが効いたものが定番だ。

子供の頃は、甘い梅干しが好きな時期もあったが、20年かけて完全な酸っぱい梅干し派が爆誕した。
それが私だ。

一人暮らしの冷蔵庫には、常に梅干しが常駐している。

スーパーで売られている、なんてことない「潰れ梅」。

実家に帰ると、母が
「そろそろ無くなるだろうから、持って帰り」
と用意してくれている、それ。

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【小説】うちのピアノ

【小説】うちのピアノ

我が家にはピアノがある。
縁側をリフォームして広げた時に、知り合いから貰い受けたらしいが、割とキレイなピアノだ。

普段は、家に着くとランドセルを放り捨てて母の居ぬ間にテレビを見るのだが、今日はなんだかピアノが目についた。

硬いピアノ椅子に腰掛け、鍵盤の蓋を開く。
そして、ピンクのような赤のような紫のような布を外すと白黒の鍵盤が姿を表わす。

ピアノはなんとなく習う気にならず、弾けるのは指も定か

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