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肥後百景#23【健軍その3】

学区が結構な田舎である。

熊本県内でみるともっと田舎はあっただろうけど、熊本市内の中でもギリギリ市内の公立小学校だったので畑やら田んぼやら川やら竹藪やら、田舎っぽさは十分満載な地元で小学生をしていた。

そんな地元だったので、登下校が結構スリリングで、下校途中に蛇が出現するとか、大雨の時は川が氾濫するとか、自然の脅威はたっぷり体感できる6年間だった。

家から学校までの距離もそこそこあり、低学年の頃は30分以上かかっていた気がする。

僕はこの登下校、特に下校の時間が大好きで、よく冒険に行く気分で通ったことのない道を開拓しながら帰っていた。
本来決められた通学路をきっちり守って登下校をしなければ学校の先生からは叱られていたと思うのだけれど、その点は両親も寛大だったというべきか、特段気にしていなかっただけなのか分からないけれど一度もお咎めはなかった。

今日はあの道を左に曲がってみよう、今日はあの家の間にあった細い道を通り抜けてみよう、今日は白い線の上だけを歩きながら行けるところまで行ってみよう、などなど、とにかくたくさんのマイルールを毎日決めながら帰った。

知らないおばあちゃんの家の庭に勝手に侵入してしまい驚かれたけどお友達になったり、大きな犬に突然吠えられ腰を抜かしたり、側溝に落ちて怪我したのをしばらく隠し通したり、河川敷でイチャイチャするカップルに遭遇しバレないように避けて行ったら川に滑り落ちて彼氏に救出してもらったり。

1時間以上かけて帰る、放課後田舎の帰り道はそれなりのドキドキとワクワクがあった。

今は都会に住んでいる。
そんな経験ができる環境ではなく、それはそれで便利な証拠なのだろう。
けれど子どもが過ごすとなるとなんだかちょっぴり物足りない気がしている。

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