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【minifilm】制作映画紹介『strange』【対談あり】

こんにちは、minifilmです。
自主映画制作グループとして、自分たちの作品を一切紹介してないな、と最近気付きました(笑)。
そこで! 今回はminifilmとしての映画処女作ともいえる『strange』についてご紹介いたします。

あらすじ

第三次世界大戦後、失われた人員や経済力確保の必要性に迫られた日本。高度経済成長期を再び迎えるべく、国としての威信をかけ、高性能なヒト型アンドロイドの開発、研究に踏み切った。
ヒト型アンドロイドが進化していくに於いて、最大の課題となったのは「人間の愛」への理解。

この研究に翻弄されていく二人の運命は⋯⋯。

そして、「人間の愛」とはいったい何なのか?

出演・制作


倉敷光太役:村上航希(Kouki Murakami)
倉敷紗良役:川崎明梨(Akari Kawasaki)

黒服A役:榛原亮(Ryo Haibara)
EIDA役:一井彩乃(Ayano Ichii)

黒服B役:櫻井綾太(Ryota Sakurai)

ニュースキャスター役(声のみの出演)
勝畑伸之介(Shinnosuke Katsuhata)


企画・制作
minifilm

脚本
櫻井綾太

美術
佐島実紗(Misa Sashima)

監督・脚本・編集・撮影・音楽
高橋峻之介(Shunnosuke Takahashi)

本編

minifilm 2017年制作作品

『goodstock filmsession vol.2』
goodstock tokyoにて上映

対談「監督 高橋 × 脚本 櫻井」

今作で監督その他諸々を務めた高橋峻之介と、脚本・黒服B役での出演をした櫻井綾太の対談をお送りいたします。
制作にまつわる話などについて語っています。

※上→高橋 下→櫻井

2人での創作

※広報用ポスター

高橋:この映画ってお互いのアイデアを持ち寄って脚本書いたんだっけ?

櫻井:いや。僕は最初アイデアゼロでしたね。2017年だっけな。高校時代の映画部の人たち(高橋と櫻井は元々部活の先輩後輩)でご飯に行く機会があって。久々に監督に会って、その時にこういうアイデアあるんだよねって監督から話をもらったのが始まりです。

高橋:そっか。その時にそんな話をしてたのか

櫻井:そうです。確かその時は「夢についてのSFチックな話を描きたい」って言われて。監督からプロットをもらって、僕なりに話しを考えて書いたのが『stranger(初期のタイトル案)』でした。「見知らぬ人」っていうのがダブル・ミーニングになってるような内容だったので。監督から、夢の中で恋人といるみたいな描写もプロットでもらっていたんですけど、夢の中で恋人と会う動機って、もう恋人がいないから夢で見るんじゃないかって考えたんですよね。そこで、恋人と離れる要素を考えました。あとは、そもそも夢って人間だけしか見ないんじゃないかとか考えていって、今まで夢を見ていた人がアンドロイドになることで見なくなるという描写に繋がりました。これを伏線にしてロボットに入れ替わるという全体のストーリーを考え⋯⋯と組み立てているうちに、もっと壮大なテーマに出来るなと思い、最終的に本編のストーリーに落ち着いたという感じですね。で、ここまでの話は考えたので、設定は考えてくださいって、監督に丸投げしてお返ししたんですよね。

高橋:そういえばそうだったね。だから設定回りのメモばっかり僕の手元にあるんだ。

櫻井:そうです。どういう仕組みなのかとか、何故研究が行われているかとかは考えてもらいましたね。ストーリーの上で監督が大きく変えたのって、エイダのシーンくらいじゃないですか?

高橋:うん。エイダは結構重要な役割になると思ったからね。他にも紗良は、僕が好きなようにキャラ作りしてた。僕はエイダとか紗良を重要視してたけど、櫻井は黒服とか、光太とかを肉付けしていってたね。

櫻井:そうですね。特に黒服はお気に入りです。僕は『刺さるセリフ』がすごい好きで、ラストシーンで黒服が言う「これが人間の愛なんですかね」「さあな。俺たちアンドロイドにはまだ分からないよ」ってところに思い入れがあります。黒服Aがラスト付近で言う「約束が守られないことは人間社会にはよくあることだと伺っております」とかも、お気に入りですね。機械的かつ皮肉めいた言葉というのは昔から意識して作っているところがあります。会話に説得力と起伏が出るので。

高橋:そのセリフなんかは、すごく東電マン(高校時代の映画作品)だなって思った。ああいうセリフは櫻井らしさが出てると思う。でも僕も結構入れたいセリフ入れたりしてるし、キャラクターごとに、お互いのメッセージが織り込まれてる気がする。

櫻井:ブルームーン(現在制作中の脚本)もそうですけど、原案や入れたいシーンがいくつか監督にあって、そのアイデアを僕が組み立てて一本のストーリーにして、また監督に渡し返して肉付けしてもらって、最後2人で調整して作るってスタイルですよね。

高橋:うん。僕はアイデアがあっても一本に組み立てるのが苦手だから、基本的なストーリー部分は櫻井に任せて、上がってきたものを、僕が元のイメージに近くなるように調整して⋯⋯っていう感じだね。僕も櫻井も、ストーリーを作ることが一番だと思ってるでしょ。脚本が最優先事項だから、2人でそうやって脚本いじってるのが一番面白いよね。

櫻井:一番頭が働きますね。制作意欲が上がるのも脚本考えてるときです。

高橋:お互いに反発しあわないのはラッキーだよね。

櫻井:2人とも共通してる部分が多いので、目指してるゴールが近い分、楽なんですよね。Win-Winですよ。

高橋:お互いの苦手な部分を補う形にはなってるよね。苦手な部分は任せちゃって、得意なことをやらせてもらえる。櫻井ならストーリー構成、僕は映像。

櫻井:苦手な部分は安心して丸投げしてますからね(笑)。僕にとっては、書けたとしても、映像にしたときのビジョンが浮かびにくいっていうのがあるので。

高橋:あー、そうなんだ。僕は逆に映像としてすぐに頭に浮かぶなあ。

櫻井:そういう部分含めて、ビジュアライズに関しては監督に頼ってます。

『strange』のストーリー作り

千葉の海にて、撮影時の様子。

高橋:僕がもともと渡したプロットではもっと夢の要素が強かったんだけど、櫻井からもらった最初の脚本では夢に関する部分は結構削られてたね。代わりに水を使った表現が増えてたのが印象的だった。

櫻井:ああ、水使いましたね。

高橋:紗良がシャワー浴びてるってカットもあったよね。

櫻井:シャワー浴びてるけどロボットだから水にかからないようにしてるってやつですよね。

高橋:そうそう。結局僕が辞めようって言って使わなかったんだけど、何で無くしたんだっけ?

櫻井:全体の雰囲気見て、サービスカットっぽくなるのが嫌だって結論でしたよ。軸がブレちゃうかもしれないのが怖いって。でも、足元だけ映して、身体にかかってなくて遠くに水が流れてるって想定だったので、お色気なわけでもサービスでもないんですけど、確かにあのシーン入れたらちょっとブレちゃうのかなとは思いますね。

高橋:そうだそうだ。作風に合わないかもしれないって思って、想定外の印象を観ている人に与えるのを避けるために無くしたんだ。

櫻井:はい。2人でそういう話をしてましたね。でも、ロボットって万国共通、水に弱いイメージがあると思うので、それは入れたかったっていうのがありましたね。

高橋:それで代わりに、紗良と光太が海沿いを歩くシーンで、光太は海に入って紗良は水に触れないっていう描写を入れたんだよね。

櫻井:そうそう。ラストシーンでは、2人が歩いているのは砂浜止まりなんですよ。海には行かない。2人ともアンドロイドだから。

高橋:でも、途中で光太が紗良との夢を見るシーンでは、2人で一緒に海に入るんだよね。夢は人間のものだっていう作品の世界観があったからこそ、夢と人間の繋がりを強調するために。しかも、紗良が光太を誘って入っていくっていうところに意味がある。そんな感じで水に関する表現は多かった。

櫻井:ですね。動物は——例えば猫を筆頭として水を怖がりますから、本能的に水って何か感じるものがあると思うんですよね。プログラムされた遺伝子的に、水に対して何らかの反応が組み込まれてる。

高橋:人間やアンドロイドの生物としてのあり方を含んだ作品だからこそ、水が表現上重要な要素になってたね。

櫻井:エイダを水に流すってシーンもありましたからね。

高橋:そうそう。結構撮影大変だったんだけど、本編ではカットした。演じてくれた人には申し訳ないんだけどね。でも、あれを入れるとエイダの印象が強すぎて、彼女の映画になっちゃう。僕らが好きなキャラではあったけど、押しすぎると紗良が持ってかれちゃうのが嫌だった。僕としては、紗良のための映画だと思ってるから。

櫻井:俺は紗良嫌いなんすよ(笑)。ずっと言ってますけど。パソコンで脚本書きながら、この紗良って女、嫌なやつだなぁって思いながら書いてましたからね。

高橋:僕は思い入れがあるキャラなのに⋯⋯。

櫻井:でも、エイダが紗良を食っちゃうみたいなことになるのは確かに怖かったですね。紗良嫌いとはいえ。

高橋:エイダに関して言えば、自分たちの狙い通り、エイダを可哀そうって思って観てくれる人は多かったように思う。

櫻井:想定通りでしたね。何なら、あれこそがアンドロイドなりの愛だったかもしれませんからね。感情的な表現が何もないからこそ、彼女の存在も引き立っていましたね。

高橋:そうそう。人の「本当の感情」って、結局周りからは全く見えないじゃん。本人が例え「切なくて、胸が苦しくて、不安感が強い」みたいな複雑な感情を抱えて涙を流していても、ほとんど外には伝わらなくて、「悲しいんだな」みたいなシンプルな言葉で分別されるだけだと思う。でも、直感的に他人の感情を感じ取って、その人と結び付けてるということでもあると思う。泣いてる人を見れば、その人に「悲しい気持ち」という属性を与えるといった感じで。同じように、エイダを見てると「彼女はこういう感情なのかな」って、ふと感じることがある。無感情で作ったキャラクターだけれど、観てる人が決めた彼女の感情がそのままエイダに投影されるから、結果的にすごく感情的にも感じられる。

櫻井:エイダは本当に純粋で、雇い主である光太に従順なんですけど、本当は何の感情も無いんですよ。勝手に僕らが「エイダはこう感じているのかもしれない」って思っちゃうんですよね。従おうとも、真面目にいようとも、悲しいとも嬉しいとも思っていないのに、そう見える。

高橋:映画祭のときにも話したけど、火の鳥のロビタが元になってるんだよね。

櫻井:手塚治虫のね。火の鳥ほど優れた漫画はないので、やっぱりインスピレーションのもとにはなってますよね。

高橋:Pixarの『WALL·E』もそうだけど、ロビタって純粋さがあるが故に、すごく悲しい孤独なアンドロイドに見えるんだよね。エイダもそう見せたかったから、エイダのキャラ作りは上手くいったと思う。

櫻井:アンドロイドの中でも黒服の話をすると⋯⋯まあ、まず黒服A, Bといて、Bってのが天才役者の僕がやってるんですけど(笑)。

高橋:天才役者のね(笑)。

櫻井:黒服Aが榛原さんね。他の役者さんは監督や僕の知り合いだったり、元々つながりがあった人たちだったんですけど、榛原さんだけはシネマプランナーズで募集して来てくれた人なんですよね。

高橋:うん。『strange』が初めての映画参加。

櫻井:あ、そうなんですか。それであのクオリティかぁ。天才役者の僕もビックリですね。

高橋:(笑)。黒服は2人とも良い味出してるよね。

櫻井:ある意味主演っちゃ主演ですからね。こういったら何ですけど、主人公の光太って割とどんなキャラでもいいんですよ、結局は。黒服Aがいることで映画が成り立ってるんですよ。そういう助演のキャラが立ってたのが良かったですね。

高橋:誰が主人公でも良いって言える映画にはなってたね。アンドロイド側のキャラクター性とか個性を特に詰めてたからね。

櫻井:感情はないのに個性があるキャラ作りができましたね。

高橋:黒服っていう、怖いロボットのステレオタイプみたいなのもいるし、エイダみたいな可愛らしいキャラもいるし、紗良みたいな人間の記憶を丸々コピーしたようなのもいるし。ああいう個性が揃ってたからこそ、成り立つ部分は大きかったと思う。

櫻井:その点、光太はどんなキャラしてても大体成り立ちますね。

高橋:光太、最初の頃は荒んでるキャラだったしね。タバコ吸ってるみたいな脚本だったよ。僕が絶対にタバコは出すなって言って辞めさせたけど(笑)。

櫻井:まあ、なくても別にいいですし(笑)。

エンディングについて

※カット後の村上と川崎。マイクを持つ櫻井。

高橋:終わり方的には「紗良が実はアンドロイドだった」って感じになってるけど、別にそれを押したかったわけじゃないよね。

櫻井:そうですね。要するに、どんでん返し的なことは期待していなくて、そう知ったときに人間である光太がどうするかっていうところが重要だったんですよね。

高橋:うん。2人のカップルがどうやって一緒に生き続けるかの選択が主軸だから。

櫻井:それでもって、それを見たアンドロイドたちがどう思うかってところが脚本で伝えたい大筋ですよね。

高橋:そうそう。その他の部分は、割とどういうルートでも筋が通るようにしてあって。例えば、光太が実はずっとアンドロイドだったって話もアイデアとして出てたから、そう見たとしても筋が通るようにしておいた。もちろん、表面的なストーリー通り、最後にアンドロイドになるって見方も正しい。要は、解釈の幅を広げておいた上で、僕らから提示する正解は無いっていうのもまたメッセージなんだよね。だから、決まった方向からしか見れない物語じゃなくて、捉え方によってはどうとでも考えられて、考察の余地がある。その点ではすごく無個性的な映画で、映画自体がアンドロイドっぽい無機質さを持ってると思う。

櫻井:そうなんですよね。『strange』って映画自体がすごい機械的。起伏もないというか⋯⋯。

高橋:ストーリーとしても、ハッキリと起伏のある構成を取ってるかっていうと、そうではないからね。

櫻井:プログラムを打ち込んだみたいなストーリーで、色のない世界って言うんですかね。それでも中尾彬さん後援の映画祭では評価を受けているわけですから、一個の成果ですよね。

高橋:もちろんやりたいことはいっぱいあったんだけど、自主映画で撮れるレベルに削っていく中で、良い意味で強いメッセージ性がある部分をなくそうってことになって。というのも、削る作業をしながら脚本を練る中で、僕らから「これが正解だ」と言うのは違うんじゃないかって話になった。ある答えを見つけるための一つの指標のような、哲学的な性質を持たせた映画だと思う。そのうえで、キャラクター回りはもう少し作りこもうって言って、黒服とか光太とかを櫻井に、紗良とかエイダは僕が書くみたいな分業をして、進めた覚えがある。それにしても、エンディングって元々ちょっと違う感じじゃなかったっけ? 紆余曲折があったと思うんだけど⋯⋯。

櫻井:うろ覚えですけど⋯⋯最後の黒服の「これって人間の~」のあのセリフって、後から足した気がするんですよね。

高橋:僕もそう思う。しかも結構後じゃない?

櫻井:あれですよ。僕は先に社会人やってて、当時撮影にあまり参加してなかったんですけど、監督が撮影した素材を早々に編集してラッシュ的なのを見せてくれたんですよ。その時に、アンドロイドのセリフがすごく業務的で、指示による言葉しかしゃべっていないなって思って。最後にアンドロイドが自分の感情や、思った言葉をつぶやくのって面白くない? って考えて、付け足した感じだったと思います。しかも、あのセリフで確定していたわけじゃなくて、取りあえず撮っておこうって感じだったんですよね。

高橋:うん。別パターンとして撮ろうくらいの話だった。

櫻井:結局、本採用になったわけですけど、あのシーンは本当に大事ですよね。今思うと。

高橋:今、データを探したんだけど、撮影の4ヵ月前くらいの脚本があったよ。これだと、黒服Aのナレーションで終わってて、なんか雰囲気が全然違う。今見ると、説明っぽくてくどい感じ。

櫻井:あー。そうか。本編のエンディングでは、黒服のセリフはナレーションではなく、カットとして入れてますからね。結果論ですけど、本編の方がすっきりしてますね。

高橋:そうだね。ナレーションだとまた印象が違う。

櫻井:あと、元々黒服Bって全くセリフなかったんですよね。でも、なんか僕、演じるうえでしゃべりたくなっちゃったんですよね(笑)。それで撮るときにセリフを入れたんですよ。

高橋:確かに、黒服Bって特にこれといったセリフはなかったね。いずれにしても、エンディングは最後の最後に良くなったっていうのは記憶にあるんだ。

櫻井:撮りながら脚本変えるっていうのも大事ですね。それにしても、こうやって話してると忘れてた話も沢山出てきますね(笑)。

高橋:光太が、紗良に一緒にお風呂入ろうって誘うシーンもある。

櫻井:紗良がアンドロイドになった後ですよね。

高橋:そうそう。その誘いを、紗良が、「今日はちょっとなぁ⋯⋯身体によく分からない傷があるんだよね」って言って拒否する流れなんだけど、これも本編では採用されてない。こう見ると、結構最後まで脚本書き換えてたんだなぁ。

櫻井:最後まで頑張った分、『strange』は話としては面白いですよ。自分たちで書いたから(笑)。

次回作について

※撮影中使用された脚本とメモ書き。アンドロイドの手の甲に印されたマークシール。

櫻井:『strange』とちょっと関係があるんですけど、紗良役をやってくれた川崎明梨さんと、対談の中では全く触れませんでしたけど、劇中、ラジオから流れるニュースの音声をやってくれた声優の勝畑伸之介さんに出てもらう短編映画を近々撮影するんですよね。

高橋:2021年3月20日に。

櫻井:これも撮り終わったら公開して、ちょっとしたトークをこんな感じでnoteに載せようと思いますので⋯⋯。

高橋:よろしくお願いします。

櫻井:よろしくお願いします。では、対談は以上で!


2021年2月16日対談

今作のカット割り解説


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